日本計量新報の記事より 社説9905-9908


02年  月/2月/3月/4月/ /5月/6月/7月/8月/ /9月/10月/11月/12月/
01年 
/1月/2月/3月/4月/ /5月 /6月/7月/8月/ /9月/10月/11月 /12月/
00年 /1月 /2月/3月/4月/ /5月/6月/7月/8月/ /9月 /10月/11月/12月/
99年 
/1月/2月/3月/4月/ /5月 /6月/7月/8月/ /9月/10月/11月 /12月/
98年 /1月/2月/3月/4月/ 5月 /6月7月8月 /9月 /10月/11月/12月/
97年 /1月/2月/3月/4月/ /5月/6月/7月/8月/ /9月 /10月/11月/12月/
96年                                     /10月 /11月/12月/



■社説・計量行政情報とインターネット(99年8月29日号)

 計量・計測に関する社会システムは社会基盤の一つであり、関連する制度情報は公開性を持たなくてはならない。産業分野と国民生活の両分野で計量と計測を適切に機能させるためには、計量・計測を実行し、あるいはその結果に連動して生産と経済活動を営む人々が、制度関連情報を容易に入手できるシステムを構築することが重要であり、計量公務員を含めた関係者の責務と言ってよい。

 このための道具だてとなるのがインターネットである。この九月末を期限に使用が禁止される非SI単位とSI(国際単位系)使用の実際面の解説等を含めた知識・情報の関係方面への周知には、様々な場面と方法、媒体を利用しなければならないが、その方法の一つにインターネットがある。

 インターネット上に国際単位系(SI)に関係した知識・情報がデータベースとしてしっかり構築されていれば、計量法が期限を切って採用を義務付けている(ということは非SI単位の使用を禁止している)その趣旨と具体的内容を周知する重要な手段となる。紙に書いた解説と口頭での説明はしなくてはならないものであるが、多くの企業と企業のなかの管理者ならびに技術者がインターネットで関連情報にアクセスする時代であってみれば、利用性の高いSI情報を計量関係の公的機関と関係者で作り上げ、インターネット上に開示することは大事であろう。

 例をSIの採用の周知に引いたが、計量法が本来の目的を達成するためには関連するすべての情報を有償、無償を問わずにデータベースとして構築し、インターネット上に開示する必要を説きたい。

 意思の伝達、情報の伝達に占めるインターネットの役割は高まるばかりである。インターネットが爆発的な普及をみせ、決定的に重要な情報網となることが明確になっているのであるから、それぞれの組織が目的に応じたインターネット利用の道を直ぐに模索しなくてはならない。インターネットにもられたデジタル情報は単なるペーパーへの印刷文字による情報よりも利用性が高いことを知らなくてはならない。

INDEXへ戻る


■社説・計ることによって健康がよく分かる(99年8月22日号)

 世の中のすべての事項は何等かの形で計られている。家も自動車も計られてつくられているし、食物も育てるときに様々な要素が計られている。同じように人間の健康も計ることによって確かめられ、病気の診断と治療は計ることから始められる。

 日本人の平均寿命は「人生五十年」といわれていたものが、この四十年の間に三十年も伸びて八十年になっている。医学的には人間の平均寿命は百二十歳位までいくといわれているが、現代の三大死因であるガン、脳卒中、心筋梗塞の特効薬が発見されてもせいぜい十歳前後しか伸びないということであるから、百二十歳は願望するにも遠すぎる。そうしたことはさておき高齢化と少子化の時代を迎えて、社会はこれに対応する新しいシステムづくりを迫られている。脳卒中、心筋梗塞は生活習慣に起因するところが大きく、糖尿病もその一つであり、病気の診断は計測値をもとに実施される。例えば次のような健康に対する注意喚起の表現がある。「高脂血症と高血圧が合併すると、動脈硬化が早く進展し、脳卒中や狭心症・心筋梗塞を起こす危険性が四倍になります。高脂血症(総コレステロール値二七〇mg/dLの場合)は二倍、高血圧(最高血圧一六〇mmHgの場合)は二倍、合併症では四倍」。

 生活習慣病を克服するためには生活環境の改善を試みなければならず、運動と食事と睡眠が重要であり、日常的に体重を計る、血圧を計る、食事を計る、運動を計るといったことで、目標値に近づける管理をしてその結果を計って確かめなくてはならない。

 戦国経済ともいうべき社会の中で普通の人は強いストレスにさらされた生活を余儀なくされており、また余程の心掛けでもないと適度な運動と正しい食事の摂取は実行し難いのが実情である。憲法で保障された生存権の一形態は健康づくりのための運動権という解釈が成立するものと思われる。運動を計るとはどういうことかといえば健康づくりのための計測であるから、その内容は自明であろう。

 糖尿病の治療のために「歩け歩け」を実践して、体重を管理し、血糖値をコントロールしている意志の強い模範的な計量人のいることに触れて、大方の健康増進を促すとともに、計ることの普遍性を併せて強調したい。

INDEXへ戻る


■社説・計測の医療分野への働きかけのすすめ(99年8月8日号)

 医療の分野にコンピュータが巧みに用いられるようになった。診療の分野には血圧計、体温計といった計測器が早くから用いられ、健康の診断には幾つもの計測値が材料として提供される。うがった見方をすると診療とは計測行為であると思える。
 病気の診断は正常と異常の区別でもあり、異常を識別するためには診断項目は多いほど良く、診断項目が増えるほどに対応する計測機器等関係機器の数が増すことになる。

 人間は病気などせずにその生命の力を全うさせることが理想であるものの、病気をしない人間は希であり、実際には病気の前兆を発見して、発病前に抑えてしまうことが大事である。自覚症状があれば別だが、病気の前兆の発見、病気の早期発見は健康診断のときに行われることが多い。健康診断のための装置すべてが計測器であると思ってしまうのは計測屋のうぬぼれといえるが、それほどに医療分野における計測器の働く場面は多い。

 介護保険制度が近く発足する運びとなっており、その財源対策に政府および自治体ともに苦心惨憺する姿を見るとき、その本来の姿は寝たきりになる人々をつくらないことであると考える。しかし、現実には寝たきりで介護を必要とする老人等が多くおり、すぐにでもそれを欲しているのだから、介護保険制度でしっかりした対応を望む。

 人間の生命の力を全うさせるための健康科学と健康増進のための活動とそれに見合う生活様式の確立が大事であり、また病気の予防と早期発見のための健康診断制度の確立と国民皆診断の実現、さらに病気の的確な診断と治療の技術の確立こそ、国民福祉増進の道である。

 計量計測関係分野では、早くから病気診断に重要な機器を医学界に提供しているものの、その後の展開ということでは十分であったかどうか。素晴らしい診断機器、医療機器が数多く開発されて、現代医療を支えていることは事実であるが、計測分野からの医療分野への働きかけはもっと大きくてもよいだろう。

INDEXへ戻る


■社説・地方分権時代と自治体の計量憲章の策定(99年8月1日号)

 分権化一括法案が国会を通過して成立、つづく基準認証に係る法案が近く国会を通過する予定であり、こちらは規制緩和の視点で内容が作られている。

 地方公共団体が地域の計量行政の主役であることを定めたのが分権化計量法案である。基準認証等に関係しては指定定期検査機関ならびに指定検定機関等の指定要件が緩和され、株式会社等民間の企業でもよいことになる。

 地方計量行政機関の実務の主なものは@質量計の二年周期の定期検査の実施、A量目取締、B特定計量器の検定、の三項目である。自治体によってはこれに加えて消費者利益につながる各種の事業者指導業務を旺盛に実施しており、計量行政が検定・検査の実務だけではないことを示している。

 地方公共団体の計量関係職員の数は五〇〇名から六〇〇名程度であり、これを都道府県の数の四十七で割れば一県当たりの職員の数は一〇名をわずかに上回る程度である。

 産業経済と学術文化活動の基礎をなす計量の基準を定め標準の供給をすること、ならびに適正な計量の実施の確保を通じて商取引の安全を確保、ひいては消費者利益を確保するための「計量行政」は、人間社会に普遍の制度である。その中身がどのようであるかは社会・経済・文化の発達の度合いによって規定される。

 地方分権計量法の新時代を旧来の計量行政に勝る新しい制度として再構築することは、地方計量行政に関わる者の至上命題である。時折悪しくも国も地方自治体も財政難の時代であり、特に大都市ほど財政困難の度合いが大きい。財政についていえば今は悪いが良かった時もあったし、財政とは必要な費用を捻出する事であり、必要な費用を削ることではない。

 新時代の地方計量行政は財政の厳しさとの格闘からスタートすることになるが、自治体ごとに将来にわたって自治体計量行政の骨格になるような崇高な計量憲章を策定して、実際的で安定した行政を実施して欲しいものである。

INDEXへ戻る


■社説・地方分権時代の計量法は誰のためにあるか(99年7月18日号)

 地方分権一括法案が衆参両院を通過し、可決成立した。一括法案の中には計量法が含まれており、いよいよ地方分権計量法時代が到来する。

 改正された地方分権計量法の内容はおおむね次のような内容である。その中身は@国と地方との関係の変更で、国と地方は対等・協力の関係になる、A機関委任事務の廃止により、従来の機関委任事務が自治事務および法定受託事務に移行する、B検定・検査等の計量関係手数料は国が一括して定める形式を廃止して、各地方公共団体が独自に設定する、C検定検査等に従事する計量関係公務員の計量教習所の教習受講を義務付けていた教習の必置規制を廃止、地方公共団体が独自に教習することができる。

 引き続いて基準認証制度の整備および合理化に関する法律案も国会を通過する見込みであり、ここでは@定期検査機関の指定要件が民法三十四条の公益法人に限られていたものが、条件が大きく緩和され株式会社等の民間機関でも諸要件を充足すれば指定を受けることができるようになる、A計量標準供給制度の基準が緩和され、そのなかで特定二次標準器の保有義務が除かれ、校正事業範囲が拡大される、ことを基本内容としている。

 日本の計量法は直接的には明治維新にかわり、太い骨格をもった堅牢な制度内容を維持してきた。
 計量器に関しての規制的な規定内容を歴史的に概観すると、計量器全品検定主義から少しずつ離れてきている。現在、計量法の特定計量器として指定され直接的に規制されている計量器の種類は数が限られている。

 このような時代のなかでの、機関委任事務が自治事務および法定受託事務に移管されるといった内容を骨子とした地方分権化・規制緩和計量法の下で、地方公共団体はいかなる計量行政を実施することになるのであろうか。地方の時代に地方公共団体は、計量行政を住民福祉の向上発展につなげる制度としてどのように位置づけて施行するかという方策をしっかりもたなくてはならない。

 地方分権時代の計量行政のビジョン造りは遅まきではあるが本格的に取り組むべき課題であり、そのための情熱と知恵の発揮の仕方に注目したい。

INDEXへ戻る


■社説・「はかる」文化の発展と計測関係者の役割(99年7月11日号)

 「はかれない」。横綱曙の巨体が体脂肪測定カプセルのサイズをオーバーしてしまった。横綱武蔵丸の体は何とかカプセルに収まった。大相撲力士の怪我の多さが巨体化した肉体にあることを知っている日本相撲協会は、その対策の一つとして力士の体脂肪率を測定した。

 「体脂肪率」の概念が日本国民の間に定着したのは、体重計を基にした体脂肪率測定器が普及して以後のことであるから、この計測器を開発し販売した企業は日本人の新しい健康概念の一つを普及させたことになる。ちなみにこの五月に中国を旅行していてガイドに別の種類の体脂肪率測定器をプレゼントしたのであるが、体脂肪率とその測定の意味を説明してみたものの、どの程度に理解されたか定かではなかった。

 人間の健康をはかるということは一元的ではない。現代人は人間本来が備えた肉体機能をまともに使う機会を失っている。そして肥満という成人病の予兆を抱え、あるいは虚弱体質に陥る事例が増えている。

 体脂肪率計を開発・販売した企業の代表者は自らランニングを日課とし、企業も田沢湖マラソンを後援するなど、健康増進のための支援活動に余念がない。この企業は体脂肪率計開発以前にはヘルスメーターや料理用はかりを製作・販売しており、計量・計測器を人間の生活や健康に積極的に役立てようという意識で一貫していた。この意識こそが体脂肪率計の開発につながったものであろう。

 「はかる」ということの定義は別にして、蜜蜂などは仲間と様々な情報を交換して、「はかる」行為と同じことを実現している。つまり、蜜をもたらす花の所在地を仲間と交信するなどの事例である。蜜蜂の行動は本能に基づくものであるとはいえ、その計測的行為には驚嘆させられる。蜜蜂の計測的行為の研究を日本計量史学会会長の岩田重雄博士がしており、この夏にその研究成果を発表する。

 人間の営みは類人猿を含むすべての動物の営みとは、物を生産するということを通じて異質のものとなり、動物的本能から分離した人間だけが持つ「文化」を築きあげた。

 長さをはかる、温度をはかる、質量をはかるなど全てのはかる行為は人間が独自に築いてきた文化であり、生活するための必要から生まれたものとはいえ、人間なればこそ実現できたことである。

 「はかる」文化は人間の活動の根底をなすものであり、どのような人間の営みにも絶対的に係わっている。直接的な係わりとなると計量・計測機器を実際に用いて計測することである。直接的な計測の行為が社会の注目を集めることは関係者の面目躍如たるものであろう。

 文化である「はかる」ことを、さらに際立たせることは計量・計測企業も含む全関係者の生きる道であり、社会的な使命のように思う。

INDEXへ戻る


■社説・計量器コンサルタント制度を考える(99年7月4日号)

 計量器コンサルタントは(社)日本計量協会が付与する資格で、全国計量器販売事業者連合会の協力により都道府県計量協会が実施する@計量法、A単位と標準(量、単位、標準)、B計量器概論(計量器について)、C計量管理概論(計量を効率化するために)の四科目の研修を受講し、研修終了後、研修科目ごとにテストのためのレポート提出が課せられ、その平均得点が六十点以上でなければならない。研修は通信教育制度としているが、(社)東京都計量協会等では夜間の座学研修として実施している。現在までに資格を付与された者は全国で千七百名ほど。資格要件は計量器の製造または販売事業者およびその従業員のうち従業歴が五年以上であること。

 計量器コンサルタントは計量器の販売実務者に必要な知識を有することを所定の研修と研修成果を確認するテストを通じて確認された者に(社)日本計量協会が付与する資格である。有資格者の計量法令における権能は一切ないものの、計量器の販売実務に関わる必要な知識を有していることを(社)日本計量協会が証明しているということが特典といえる。日本商工会議所が認定する珠算の技能検定に類似しているものの、珠算技能検定合格の資格ほどには世間の認知度が及んでおらず、資格認定のための研修が広く実施されてはいない。

 計量器の販売実務に要する知識は広く深いことが求められ、販売実務者はユーザーの計量目的実現のためのコンサルタントとして対面することになるので、販売実務者の能力そのものが計量の内容を決めてしまうことになる。有能な販売実務者と力が足りない者とが計量器のコンサルティング販売をする場合の結果は、ユーザーの計量に関するシステム等の内容に優劣の差が生じてしまう。

 東京都、大阪府その他一部の計量器コンサルタントは都道府県ごとに独自の協会を組織して、都道府県計量協会と連携して知識・技術能力の向上に資する研修事業を実施している。

 計量法令上の資格者であり、国家資格である計量士制度と計量器コンサルタントの区別は計量世界の関係者には明確だと思われるが、違いの理解が不十分な計量士は計量器コンサルタント資格を敵視する事例を散見する。

INDEXへ戻る


■社説・楽しみな関東甲信越の計量協会会議(99年6月20日号)

 関東甲信越地域の計量協会のブロック会議が七月七日午後、東京都港区の臨海部副都心にある「ホテルグランパシフィックメリディアン」で開かれる。関東甲信越地域の関係協会は、東京都、千葉県、神奈川県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県、新潟県、長野県、山梨県の十都県。参加予定人員は二百名を超えそうであるというから、規模の面では成功が予想されるから、内容を含めた成果に期待したい。

 二百名規模の計量協会関係者が集うことから生まれるものは何か。現在は計量制度の大変革期であり、その主な内容は、計量制度が地方分権制度の推進のもと、検定・検査等重要な行政部分が国から地方公共団体に移管されることである。また事業等の諸規制を思い切って緩和しようという政策のもと検定・検査に関する規制内容が一層緩められると同時に、検定・検査等の関係分野に民間の事業者である株式会社等が参加する道が開かれる。

 新しい計量制度と計量器事業に関する環境のもとで、地域の計量を担う関係者は意識を完全に切り替える踏切台とすることが、この「関東甲信越計量協会連絡協議会」今時開催の意義といえそうだ。

 協議会の出し物は三つ。
 一つは、地方分権法案が国会通過した直後の国の行政担当者である通産省機械情報局計量行政室小此鬼正規室長の「地方分権計量法」に関する講演。一つは、国際化した経済環境のもとでの今後の計量事情ということで通産省工業技術院計量研究所今井秀孝所長「計量標準の国際相互承認とトレーサビリティ」に関する講演。もう一つは計量の世界で活躍する人々によるパネルディスカッションで、計量が本来もつ機能と計量器事業者が有機的に結び付いた社会システムとしての計量制度の役割ならびに計量協会の使命などが論ぜられる。出演者は小林清作、清宮貞雄、高松宏之、中村進、森川正彦、横須賀健治、横田貞一の各氏。

 夜には「交流交換会」が開かれることになっており、その出し物は発表されないが、思い出となる企画を期待したい。

 このような関係の催し開催方法に工夫が見られることはよいこととしても、参加者を満足させることは難しいことも事実である。

INDEXへ戻る


■社説・行政機能を分掌する地方計量協会(99年6月13日号)

 東京都をはじめ多くの計量協会は役所の意向を織りまぜた形で設立され運営されてきた。計量法を骨格あるいは土台として形成されている日本の計量制度と計量行政は、その円滑な施行のため計量協会を協力者としてきた。第二次世界大戦後の現代計量行政は、地方計量協会設立を直接・間接に指導し、組織のトップあるいは重要な地位に計量行政機関等の職員が就任する形態であった。現在はこの形態は後退しているものの歴史的な経緯はそのようであり、現在も計量協会と行政機関との官と民の機能を分担しあって、地域住民・国民の計量の安全の実施を確保している。

 戦後の計量法は改正が実施されるたびに、強い規制から弱い規制に、また規制の範囲は縮小されてきた。戦前から戦後しばらくの間あった計量器事業の特権的地位は徐々に縮小してきていることから、計量器事業の登録等の事業者は計量協会に加入するという不文律がなくなっている。

 現在、計量器事業は特別なものではなく、一定の技術的あるいは社会的要件を整えていれば、事業の届出等ができ、商売できる法令的形態が確保されている。このような時代に会員事業者が計量協会に求める重要な事項の一つは、計量法と計量器ビジネスのかみ砕いた解説等を含む技術・知識情報の提供である。また地域住民・国民に対して実施する重要な事業としては、適正な計量の実施の確保に支障をきたさないよう、計量制度に従った検定・検査等を含む計量情報の提供、あるいは生活に欠かせない計量知識の普及と啓発等がある。

 規制に立脚した組織から脱却して、自らの利益実現と地域住民・国民の福祉と利益実現のための計量ボランティア組織に移行することが現在の計量協会に求められている。この移行の過程で会員事業者が減少することは否めないが、気のない会員を多数抱えている組織よりも、意識のしっかりした会員で組織された計量協会の方が社会的には有意義な活動ができる。

 青森県では高齢にも関わらず会長に推された佐々木吉雄会長が小笠原良爾専務理事を伴って、会員の増強のため県内事業所を直接に訪ねて回って、成果を収めている。この意気込みこそすべての関係者が学ぶべきものであろう。

INDEXへ戻る


■社説・三団体統合と今後の計量の世界(99年6月6日号)

 計量の世界で組織されている団体は多い。数多い計量団体がどんな形かで一つになる約束事ができていればよいが、現実はそのようになっていない。

 かつては日本計量協会がそのような立場にあった。現在もそのことが理想との意識はあるものの各団体の動きはそのようになっていない。財力、組織力のある団体が行政との関係を独自に築いており、日本計量協会が計量関係団体の代表として総合的・多面的に行政運営に密接に関わっているとはいえない。

 しかし、計量の世界を束ねる組織の存在は求められるところであり、(社)日本計量協会、(社)計量管理協会、(社)日本計量士会の三団体が統合して新しく作られる団体にそのような機能を期待するのは自然なことである。

 三団体の統合の根源的理由あるいは動機の一つとして、団体を運営する財源の困窮化がある。(社)日本計量士会は地道に開拓してきた計量・計測機器の検査および校正事業が会運営のための財源となっており、財政運営は安定している。対して(社)日本計量協会は、主要な構成員の地方計量協会が、計量法の販売事業に対する規制の簡素化がそのまま会員減少という形で現れており、その他の理由ともあわせて団体運営の財源が不足している。(社)計量管理協会も各種事業を通じて財源の確保に努力しているにも関わらず、つねに収入不足の不安は拭いきれない。歴史的経緯としては、(社)日本計量士会は、(社)計量管理協会の計量士部会の組織が分離独立して発足している。そして(社)計量管理協会は、(社)日本計量協会の活動の上に日本の計量管理活動の普及・啓発のための団体として通産省の強い後押しのもとに誕生している。

 統合した三団体は、それまでの構成員が引き続き会員として、時代や状況に相応しい団体として新たな歩みを始めることになる。

 税の収入が不足したり、補助金の財源が不足すると、補助金に頼った財政で運営されている団体は息を止められる。

 団体は会員の利益になる事業なり仕事をしなくてはならない。計量協会は計量器販売事業に関わる人々に依拠した団体でありながら、事業の実態が通産省の協力団体になっていたことが、その後の発展に大きく影響した。「計量思想の普及啓発」事業が古めかしくなってしまった印象のあるこの時代に、周囲からの支援体制は年を追って弱まる傾向にある。計量器販売事業に関わる者は役所の顔色を気にしなくなったので、地方計量協会の関係会員事業者数は減少の一途にある。

 純粋な技術的側面としての計量計測は科学技術の基礎となるものであり、政治が制度的に関与しなくても自然発生的に技術体系はできあがるように思われる。

 計量制度という社会制度は、税制度などと含めて国家が時代にあわせて法制度と共に築き上げてきている。

 計量協会など計量団体の使命が何であるかを改めて規定することは容易であるが、規定を実現することは難しい。計量協会に関しては、会員事業所の利益実現のための意識がもっと鮮明であってよい。監督官庁の顔色を伺うあまり、自らの主たる構成員の意識や利益に無関心であることは具合が悪い。同じことは地方計量協会にも言え、自らの利益は自らが声をあげなくては実現しないであろう。

INDEXへ戻る


■社説・日本計量協会と関係二団体の統合への期待(99年5月30日号)

 (社)日本計量協会と(社)計量管理協会、(社)日本計量士会は平成十二年(二〇〇〇年)六月下旬には新定款のもと組織・財政を一つにして完全統合する。

 三団体は五月下旬のそれぞれの総会で統合することを決議、統合後の新名称は未定であるが日本計量協会の定款を改正し、他の二団体は解散する形態をとる。

 (社)日本計量協会は四十七都道府県の計量協会と(社)計量管理協会、(社)日本計量士会、(社)日本計量機器工業連合会、全国計量器販売事業者連合会、日本計量器証明事業者連合会の中央五団体が加入して組織形成された団体である。いわば日本の計量に関する民間団体の総本山であるが、各種の計量器工業団体が他に多数あり、また(財)日本規格協会、さらには(社)計測自動制御学会、(社)精密工学会、(社)品質工学会などの学会が組織され、計量と計測に関係する組織は多方面に広がっている。このような組織は統一的に掌握されない状態にある。

 統合する三団体は「国を代表する計量団体」としての構想のもとに、組織・財政等体制の確立に邁進する計画である。

 三団体が統合して新しく組織される「新生日本計量協会」には、全国計量器販売事業者連合会が組織統合する計画を持っており、日本計量証明事業者連合会ではこれから合流を検討する。残る加入中央団体の(社)日本計量機器工業連合会は統合に関しての動きは表面的には見せていない。

 通産省は三団体統合決議を歓迎する姿勢で受け止めている。都道府県の計量協会は、会員を引き留めていた理由の一つである事業登録の撤廃あるいは緩和政策の実行を通じて、会員減少が急であることから、現体制を維持することが困難になっており、打開策を講じることに懸命である。

 規制をもとにして組織された団体から、共通の目的を実現するために組織された団体への移行を迫られているのが現状であり、計量器販売事業者の為になる事業の確立が課題の一つである。

 計量に関係した全ての人々が頼り誇りにできる団体の生まれることを期待する。

INDEXへ戻る


■社説・世が求める計測機器開発の可能性の追求(99年5月23日号)

 「電気量に関する計測がなかったら、エレクトロニクスの技術の発達は、ファラデー以前の状態に停滞していたに違いない」ことを一つの例に引いて品質工学の創出者である田口玄一博士は、科学技術の発展の約七十%は計測技術の発達によることを説いている。

 そのような計測技術であるから、計測技術そのものの開発とそのみかえりとしての対価は現在よりも大きくてよいし、その利用と活用と応用をはかる試みの成功の対価ももっと大きくてよい筈である。

 現代人が購入したいとあこがれる製品やサービスの生産工程の中には様々な形で計測技術が関わっている。この場合の計測技術は、@新しい計測方法や効率的な計測方法の開発、A商品の生産にふさわしい計測方法を使って工程を管理するといった計測管理システムの設計、B計測誤差をどういう調整限界で校正を行うかというトレーサビリティ(標準による校正システムの積み重ね)、の三つの要素からなる。

 商品が持つべき性能や品質を実現させるための設計・開発と製造には計測技術が深く関わり、その計測技術は既存の知識・技術そのものの積み重ねとしての計測工学とそれを身につけた計測技術者、さらに特化された独自の計測技術と計測機器を供給する計測関連企業などによってその総体が形造られる。

 したがってより高性能で高品質かつ耐久力に富む優れた製品は、より優れた計測技術を一つの基にして生み出されるのである。

 計測機器の設計条件をパラメータ設計することの有効性が実証されている。ある企業はヘルスメーターの設計条件をパラメータ設計で求め直すことによって、誤差を半分以下にすることに成功している。ヘルスメータは安価な計測器であったため、十八台の設計パラメータの異なるはかりを作成できたという。規模のあまり大きくない新しい計測機器の開発には、これまでの約束にしばられないで、パラメータ設計を行いやすい条件があり、より安くより高性能な商品を製造できることになる。

INDEXへ戻る


■社説・次世代産業・次世代技術と計測技術(99年5月16日号)

 日本の経済が低迷から脱せずに苦しんでいる。次の新しい技術の水準への移行の過渡的現象であるとするなら、次の新しい循環に向けて大いなる技術革新に国民と政府は全力を投入すべきであろう。この間世界の余剰資金が予測を超えた不可解とも思える動きを見せたことなどもあり、経済現象は単純でないことは確かである。現状の世界経済に対する統一見解は四月二十七日のG7共同声明の通りであろう。

 すなわち@日本経済に改善の兆しはあるものの短期的な見通しは不透明。成長回復まであらゆる景気刺激策が必要。Aアジア諸国に景気回復の兆候があるものの、新興市場の経済改善には時間を要す。B米国は引き続き成長維持に努力すべきである。欧州経済は弱含みであり、成長と雇用拡大にマクロ政策と構造政策が必要。C為替相場は市場監視と協調行動を継続する状態にある。

 日本国内の産業は設備過剰状態にあるとして、過剰設備の廃棄の動きがでている。旧式の機械・設備で旧式の商品を生産していたのではモノが売れないで余るのは当然である。本来の解決策は新しい市場と新しい商品が生み出されることである。新しい市場、新しい商品の創出こそ新しい産業を産むものであり、ここに産業の革新がある。技術の革新こそが新しい産業を生み出し、次の景気の循環につながる。

 つねに革新されなければならない技術あるいは科学あるいは工学の一番の基礎にあるのが計測であることは関係者の共通した認識になっており、コンピュータの構成要素をなす電子部品やハードディスクドライブの製造あるいは検査には超精密な計測技術が関わっていることも良く知られた事実である。

 超微細・超精密な分野での計測技術の開発と発達はエレクトロニクスあるいはメカニカル等各分野の技術の発達に決定的に関わっている。しかしそうした超微細な分野の技術だけが計測技術ではない。

 物づくり分野においては測れなかったモノを測れるようにすること、旧来と違った方法で簡便かつ正確に測る方法を開発すること、より少なく測ってより完全な商品を作ることなども大事な計測技術の一つである。計測管理、計量管理技術とはこのような計測の技術の粋を尽くしてサービスの提供を含む商品の生産を通じて企業の経営に貢献するものである。

INDEXへ戻る


 

■社説・期限が迫った重力単位系の書き替え(99年5月2日号)

 人類が計測を始めたのはその誕生と共にということであろうと考えられている。はかることの定義は基準となるものと比較することであり、誕生した人類は何かと比較してモノの大小などを把握していた。基準となる何かが計量単位であり、長さの単位は大体は人間の体の部分をもって規定していた。

 自然発生的に生まれた計量単位は、地域により民族により様々なものがあり、交易その他で不便をきたすことになる。世界が一つの単位系を用いることの合意はメートル条約の成立とともにできているが、ヤードポンド系の計量単位を使用している米国、英国などでは移行が困難な状況にある。

 世界各国が採用すべき単位系は、メートル単位系をより一層改良した「国際単位系」(SI=エスアイ=システム・インターナショナル・オブ・ユニット)であるものの、世界のリーダーであった英国、米国は、覇権への思いもあり、移行が遅滞している。

 日本では国民のメートル系単位への意識と習慣の切り替えは、大局的かつ基本的にできており、産業・経済の側面での微調整が残されているだけといってよい。計量法は今年(平成十一年)の九月三十日までに、計量法上のSI単位系でなかった単位をSI単位に切り替える。計量法の全部が改正された現行の新計量法の公布(平成四年五月二十日)から約七年の経過措置期間をおいての切り替えである。
 計量法上の非SI単位の多くは工業分野で採用されている重力単位系であり、重力単位系は基本単位に重量キログラム(sf)、mおよびsを採用している。SIでは力の単位はsfではなく、ニュートン(N:一sf=九・八N)であり、また圧力の単位はsf/m2ではなくパスカル(Pa:一sf/m2=九・八Paであるから、書き替えが必要になる。

 移行の最終段階において計量法から削除される法定計量単位は十一の量である。

 体重は質量で表記されているから、変更はない。力士の体重百五十sは質量表記であり、一部に小錦の体重は何々ニュートン(N)という勘違いがあったことが思い出される。計量単位への理解の難しさを示す事例である。

INDEXへ戻る


  電子メール または このフォーム(クリックしてください) でご意見ご要望をお寄せください。

02年  月/2月/3月/4月/ /5月/6月/7月/8月/ /9月/10月/11月/12月/
01年 
/1月/2月/3月/4月/ /5月 /6月/7月/8月/ /9月/10月/11月 /12月/
00年 
/1月/2月/3月/4月/ /5月 /6月/7月/8月/ /9月/10月/11月/12月/
99年 
/1月/2月/3月/4月/ /5月 /6月/7月/8月/ /9月/10月/11月 /12月/
98年 /1月/2月/3月/4月/ 5月 /6月7月8月 /9月 /10月/11月/12月/
97年 /1月/2月/3月/4月/ /5月/6月/7月/8月/ /9月 /10月/11月/12月/
96年                                     /10月 /11月/12月/


Return to Front Page