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過積載を防止する計量計測機器(2)

特集記事 製品紹介

事故を無くし安全な輸送環境を実現するために

重大事故を繰り返さないために 社会全体に対する啓発活動を

過積載状態での走行は、ブレーキのききが悪くなって制動距離が長くなる、カーブで余分に膨らむなど、重大事故を引き起こす危険性が高い。平成9年以降、罰則や行政処分が随時強化され、過積載違反の取締件数自体は減少傾向にあるものの、未だ過積載の大型車による重大事故が繰り返されている。

 危険な過積載運行をせざるを得ない原因は、運送業者を取り巻く社会状況にもある。景気は上昇傾向にあるとはいえ、規制緩和による競争激化、燃料である軽油価格の高騰や安全・環境規制に対応するためのコスト増大など、トラック業界にとっては依然厳しい状況が続いている。こうしたなかで、生き残りを賭け、過積載によってコスト削減を図ろうとするトラック運送業者が後を絶たない。

 過積載違反を根絶するためには、トラック事業者に対する処分のみならず、荷主を含む社会全体に対する啓発活動や適正な輸送コストの採用を推進する必要がある。

事例1
東海北陸道で7人死亡 タイヤ破裂、過積載が原因か

2004年7月27日午前、岐阜県郡上市の平山トンネル出口付近でトラックと乗用車が正面衝突し、乗用車の一家5人とトラックの2人の計7人が死亡。事故を起こしたトラックは、最大積載量の約1・5倍にあたる約4・5tの建築資材を載せて走行していた。

 県警は「空気圧が不足していたため、前輪のタイヤがゆがんで破裂し、ハンドル操作が不能となったことが直接の事故原因」と断定。過積載がパンクを引き起こした可能性もあるとみて、同県警科学捜査研究所などで因果関係を調べた。

 また、県警は、過積載を容認していたなどとして、道交法違反などの疑いでトラックを所有、運行させていた愛知県内の建設資材リース会社と社長らを書類送検した。

事例2
過積載の大型トレーラー横転 20歳の女性歩行者が死亡

2006年7月31日午前、静岡県静岡市清水区内の国道1号バイパスで過積載の大型トレーラーが横転し、20歳の女性歩行者が下敷きになって死亡。運転者は業務上過失致死罪に問われ、静岡地裁は懲役2年6カ月の実刑を命じた。

 事故では、15km/h以下の徐行が適切な交差点に運転者が倍以上の速度で進入したため危険運転致死罪の適用も検討されたが、地検は「速度超過が原因なのは間違いないが、故意性の立証は困難」として適用を見送った。

 地裁は、トレーラーが過積載状態だったこと、横転しない速度の限界を超えて右折を行っていたという検察側の主張を採用し、その上で「被告は職業運転手であり、重量物を積んだトレーラーが減速せずに曲がろうとすれば横転の危険性があるということ常識として承知していたはずだ」と指摘。「それでも減速しなかったなど、基本的な注意義務を怠った責任は重い」として懲役2年6カ月の実刑を命じた。

 なお、清水署は過積載を容認したとして被告の勤務先を書類送検した。

事例3
踏切上で列車と衝突事故  過積載との因果関係が争点に

乙社の運転手甲は、乙社が丙社から買い受けた山砂を東京都内へ運搬するため、丙社の千葉工場で、甲所有の大型トラック(以下、本件トラックという)にその法定最大積載量の4倍を超える山砂を積み込み、時速約40キロメートルで運転して、千葉県内のJR東日本の大型警報機、遮断機が設置された踏切に至る下り坂にさしかかった。甲は、前方に通過列車待ちのため停車している自動車を発見し、制動措置を講じたが、過積載のため十分に減速できず、自動車との衝突の危険を感じたので、衝突を回避するため右側車線にでたところ、そのまま本件踏切に進入し、折から進行してきた列車と衝突して、列車の運転士が死亡し、乗客67名が傷害を負ったほか、1両目車両が大破し、2両目から4両目までの車両や線路施設が損壊した。

 そこで、JR東日本は、甲、乙社および丙社に対して、廃車による損害、修理費等約1億円の損害賠償を請求した。裁判では、過積載と本件事故との因果関係等が争われた。

 裁判所は、甲が、前方に停止中の普通乗用車の後部を認めた時点で急制動の措置を講じていれば、本件事故は回避し得たといえるところ、甲が急制動の措置を講じなかったのは、過積載していたことから、急制動措置をとったのでは加害車両が横転する危険があると考えたためであり、また甲のとった制動措置が効果なく、結局本件踏切に進入した時点でも時速20キロメートルにしか速度が落ちなかったのも、過積載による結果であると認められるのであって、過積載と本件事故との間には因果関係が認められるとして、甲およびその使用者である乙社の責任を認めた。(千葉地裁平成10年10月26日判決、判例時報1678号115頁)。

事例4
過積載・飲酒・脇見運転で追突 乗用車4人死亡

2001年12月28日、香川県高松市の県道で大型保冷車が乗用車に追突し、母娘2組4人が死亡した事故で業務上過失致死罪に問われた保冷車の運転手に対し、高松地裁は禁固4年の実刑判決を言い渡した。

 この事故は、県道で4人が乗った乗用車が信号待ちをしていたところ、後方から走ってきたトラックが脇見運転の末に追突。前方に止まっていた別の大型トラックとの間で乗用車がサンドウィッチ状態となり、乗っていた女性が死亡していたというもの。
 調べによって、この保冷車が過積載状態でブレーキ力が弱まっていたこと、事故直前に飲酒していたこと、事故当時に脇見運転を行っており、目前の乗用車の存在に気づいていなかったことが発覚。検察側はこれら行為を「極めて悪質な怠慢」として、業務上過失致死罪では最高刑にあたる懲役5年を求刑していた。

 判決公判にて、裁判長は「脇見運転というドライバーとして安全運転に対する基本的注意を怠った結果、4人を死亡させた事故は極めて重い」と被告の刑事責任を厳しく指摘。しかし、その一方で被告の公判中の態度、反省を評価し、また「過失の内容が『故意に準ずる』と言えるほど悪質ではない」として禁固4年の実刑判決を言い渡した。

 また、香川県警は、ブレーキが効かずに追突したトラックが積載重量を超えていたことが原因だったとして、保冷車を所有していた運送会社の社長を道交法違反容疑で逮捕した。

 

 

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