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日本計量新報 2015年11月1日 (3079号)

言葉が数式と同じ働きをすることが理想だ

状況にあわない言葉を述べるのをよく耳にする。今の日本人が語る言葉はほとんどすべてが状況にあっておらず、状況に合わない言葉が連結する上滑り現象がおきているように思われる。「認識します」「感無量」といった言葉はおそらく別の簡単な言い方にした方が正確度が増すと思われる。「そのように思います」が「認識します」になり、「しみじみと思う」は「感無量」なようだ。「収斂(しゅうれん)する」と国会議員がいう言葉は数学の世界のそれとは違う。
 漢語も含めて単語としての言葉には意味があり、ある種の概念である。言葉と言葉をつなげればさまざまな事象ができあがる。概念としての言葉をつなぎ合わせる現代の日本人は自分が使う概念を理解しているかというとそうではなさそうだ。漢語は使うな、難しい言葉は使うな、そして互いに意味を違って取るカタカナ語は使うな、と言いたい。うんと平易な言葉、できるなら和語(わご)(大和言葉)を使えば会話は通じる。
 現代の日本人には事実を正しくとらえる、あるいは伝える言葉を忘れているか、持っていないようだ。「認識」「感無量」「収斂」の言葉を重ねていっては事実を伝えきれない。真理を深く追求するための言葉を現代の日本人は持たない。既存の概念でとらえきれないのが新しい真理であり、そこには新事実の発見がある。ニュートリノに質量があることを数式で表現し、その数式にある事実をスーパーカミオカンデの設備による観測によってニュートリノの質量現象がとらえられた。これによって宇宙の質量の不調和の謎がある程度解けたが、まだ不明なところがある。
 できの悪い言葉より、または上手く使われない言葉よりも数式の方が真理に迫るのに役立つ。言葉が真理に迫るよい道具になるように現代の日本人は言葉を選んで使うように心がけたらよい。論理学は数式と似たような働きをする。言葉が数式と同じ働きをすることが理想だ。
 意味の取り方は単純ではないが、ヨハネによる福音書には「はじめにことばがあった。ことばは神と共にあり、ことばは神であった」とあり、「この世は神の言葉によって作られたということ。私たちにとって言葉は神であり、犯すべからざるモノなのである」と解釈できる。言葉を冒涜している現代の日本は神から罰を受けるのではないか。言葉を繕って物事を誤魔化す行動は罰の対象であり、役所や世のなかの偉い人は言葉を大事にしなくてはならない。

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