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日本計量新報 2015年6月14日 (3060号)

計測の魔界から抜け出すために標準器と対比しよう

朝に顔を会わせて「お早うございます」というと、会釈ぐらいは返すのが普通である。「お早うございます」と、しっかり言葉を返すのはもっと普通だ。近所に住んでいるのに、顔を見ても見ないふりをする。近所の人とすれ違っても、反応せず、そこにモノがいないように振る舞う人が多くなった。このような行動をする学校の教員がいて、国会議員の大物までそのようなのだ。国会の議長とか副議長とかいう立場のこの人物は、普通の人が大きな声であいさつしても、お義理以下の応答をするだけだ。日本とはこのような国であり、何故にこのようになったのだろう。街にはあいさつのことが喧(やかま)しく張り紙されている。これは昔からのことだ。
 「わかったのか」と問うと「わかりました」と言葉を返す。同じことが繰り返されていて、問う側と答える側ではいつでも思いが違っている。答える側はどのようなことがあってもその意を問うまいとする。「あれとこれを何時までにやろう」というと「ハイわかりました、そうします」この会話が何回も繰り返され、5年も10年もそのままになる。このような事例はごまんとある。戯れ言や笑い話の世界と同じだ。担当者がなすべきことを忘れると、担当者任せになっていたことのすべてが忘れ去られる。計量の全国規模の会合が担当者の失念によって年度のぎりぎりに開かれたことがある。予算の約束がなされていて、期日までに書類を出せば事業がなされるのに、その書類をつくることを忘れたために大きな財産を取り逃がした大失敗がある。
 物事は人が共同して、指さし確認をすることで、うまくいく。この指さし確認のしくみがくずれると前述のようなことがおこる。2人3人あるいは組織の人々に計画と実行のための日程が文書で示され、それに従って進行を確認していることが大事だ。気負いも高ぶりも要らない、小さなことの積み上げでできてしまうことが、心がつぶれていたりわざと忘れていると、誰にでもできることができなくなる。困ったと思ったら、何に困っているのか同僚や上位の者に素直に相談することだ。いつでも答えは簡単であり、行動も簡単なのだ。心が挫けているからそれができない。あの人に電話しろ、あれを持ってきてここにあてがえ、で済んでしまうことができないのは不思議であるが、心を閉ざしているとそれができなくなる。
 世のなかにはあの人憎し、といつでも敵をつくって、その敵を打ち負かしていないと心が平静でない人がいる。ハカリの定期検査に随行してその検査の在り方が法令に適合しないとして、その都道府県の計量検定所の上位の組織に通報した人物がいた。組織のなかのある人への逆恨みから出た行動であり、このことを持ち込まれた組織は事情を調べて法令への適合を確認することになった。この人物はこの後には別の人物を恨みの対象にして、火のないところに煙を立てる行動に出た。このようなことが続いたために周囲はその人物の異常性が組織に及ぼす害を断つために組織規則による最高の措置を執り、措置をした長は事が落着した後職を辞した。組織とは意外なことにこのような異常者あるいは破壊者の存在やその行動に気付かないものである。
 街中で気持ちよいあいさつをしていても、底知れない悪意を宿した者が少なからずいる。ニコニコ笑っていても、それが悪魔の笑いであった事例をかつての霞が関の役人にみている。この人の反感を買った事務局の責任者は組織の大事なところを衝かれて詰め腹を切らされた。業界の人々が恥ずかしげもなくおべっかをつかい、飲食と遊興を振る舞いつづけ、人によっては子分であるように行動していたことがあった。相手は霞が関の役人であった。本人にとっては抜き差しならないある利益を得るための行動であったのだろうが、傍目には他に確かな道があった。
 ニコニコとして好印象であるとその人を良い人にしてしまう。つぎつぎに恨みの対象者をつくりだす人物も好印象を与えていた。だからみんなが騙され、組織は良い役職をその人物に与える。人はさまざまなようすをしてして世に棲む。言葉通りに控えめな人がいる。控えめというのではなく内気な人がいる。内気すぎて世のなかにいたくないほどの気持ちの人がいる。正真正銘、ごく普通の人がいる。何時でも半オクターブほど高い熱気で行動している人がいる。半オクターブではなく1オクターブは高くて、のべつ幕なしに喋って行動していないとおさまらない人がいる。見ればわかるとおりの異常者がいる。人の世は魔界であり、うっかりしていると騙されたままに生涯を終える。
 こうした事柄がそのまま計測器と測定の世界に出現する。カメラに付いている露光計でこれを示そう。外観が綺麗で新品と同様の輝きをしていても露光計がまったく反応しないカメラがある。デコボコでグチャグチャの状態であってもカメラの内部は正常で露光計は標準器と寸部違わない動作をするものがある。光に反応していてもその反応がいい加減なものがある。強い光にはほどよく反応しても、弱い光には反応をしないものがある。カメラの外観も露光計も駄目なものがある。
 身の回りの計測器とこの事例を対比しよう。そして製造現場や各種事業所の計測器を検証しよう。標準となる確かな値や計測器との対比によって、使っている計測器の確かさを推し量る。

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