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日本計量新報 2013年7月28日 (2974号)

精密機械の値段が高かった時代と現代の社会との対比

変わる世の中と上手に調和して生きていくことは大事である。社会が変わる、技術が変わる。しくみが変わる、製品が変わる。物事の変わり方に戸惑うのが現代の日本の社会であるし、世界も似たようなことだ。ワープロに使っていたフロッピーディスクが使えなくなったので昔のデータを捨て去ることが多い。写真はフィルムに刻むのではなく電子媒体を使うようになった。現在は写真は携帯電話やスマホを使って撮影される。
 電気、ガス、水道の利用量の確認と利用代金の請求ならびに支払いの形式は、自動検針と自動課金と自動支払いに変わりかけている。もっとも、古くは水は井戸などを使っており、飲料水の代金の支払いはなかったし、下水も半分は再利用されていたのだが。
 東京大学工学部航空学科を1931(昭和6)年に卒業してヤマハに勤めて航空機プロペラの製造に従事し、その後に気象庁測器課長などを経て東京大学教授などを歴任した佐貫亦男の初任給120円に対して、当時売られていたライカVa型はエルマー5センチ(明るさ3.5)付きで660円であった。同氏は1942(昭和17)年にスイスで400円でこれの中古品を買うのであるが、当時の軍事関係者の海外滞在費は特別な体制で支給されていたから実現したことである。
 精密な天びんを1台売ればハカリ販売店の1月の経費がまかなえた時代があったということには誇張があるかもしれないが、その時代は機械の値段はその他の諸物価に対して特別に高かったのである。戦時中には体温計、温度計、ハカリ、その他の計量器を製造するにも材料が不足していたので、調整組合ができて製造の割り当てをしていた。製品の不足のため、造れば売れるという売り手市場が形成されていた。志賀直哉は短編『小僧の神様』に神田の秤屋を登場させ、そこの番頭などは評判の鮨屋でマグロの脂身の握りを食べていたことを描いている。いまハカリを売っても回転寿司で一人前の食事ができるかどうかという状態がみられる。

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