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日本計量新報 2013年7月14日 (2972号)

商店街とそこで使われているハカリの定期検査の実施

中央道が渋滞したために東京方面への帰りに大月インターで高速をおりて、国道20号の甲州街道を走った。大月駅前の商店街は日曜日ということを差し引いても無残なほどシャッターが閉まっていた。店を開けている肉屋のショーケースには肉はでておらず、ときおり買った馬肉もケースにはない。別の冷蔵庫にしまっていて馴染みの客の要望に応じた販売をするのだろう。店の近くには大型スーパーが出店していて客は車で買い物をする。この商店街の裏手に20号の新しいバイパスができていて、都留方面からの車は旧道を避けて通る。
 東京の武蔵小山のアーケード商店街は長い歴史をもっていて今なお繁盛している。近くに大型スーパーマーケットなどがないからであり、アーケード商店街そのものが大型スーパーと同じような構造をし機能を備えている。東京都計量検定所が移転する先の近くにある砂町銀座の商店街には繁盛する商店街を映すためにテレビカメラが取材にはいる。この商店街は昔と同じように繁盛していて、老舗ともいえる団子屋も元気に営業している。しかし、子細にみると昔あったあの店、この店の姿がない。低料金の寿司屋ができコンビニエンスストアができている一方で、金魚やメダカや鈴虫やジュウシマツなど売っていたお店が消えていた。
 大型スーパーマーケットなどが新規出店すると、地域の商店街の客がそちらにごっそり移動する。砂町銀座の商店街に隣接して旧国鉄の時代からあった操車場跡地に大型ショッピングモールができ、顧客量に見合う駐車場が備えられている。ここは砂町銀座の商店街に足を運んでいた人々とは別の新規顧客を近隣から集めている。
 肉屋、八百屋、お茶屋、その他のお店の店頭で商品を計り売りするハカリは計量法によって検定を受けたモノを使い、そのハカリは2年に1度の定期検査を受けてこれに合格していることが求められる。検定に合格したハカリも、使用によって性能等が低下するからである。商店で使っているハカリは、計量法の指定製造事業者制度によって、メーカー自己検定ともいえるしくみで検定合格と同じ内容を備えた基準適合証印を付したモノが使われている。すべてがこの方式の検定品ではないが高い割合でそうした検定品になっている。
 商店街やそのほかの店舗や事業場で取引証明に使われているハカリはすべて検定付きで、2年に1度定期検査を受けてこれに合格していることが求められる(一部除外品もある)が、現場を回って定期検査の代検などに従事する計量士の人々が観察し、その結果確信することとして、定期検査実施率はせいぜい5割であるということがある。定期検査対象器物としてそのハカリが役所の台帳に記載されていないか、記載されていても検査がされていないか、そのどちらも含めて総合すると、計量法によるハカリの定期検査の実施率はせいぜい5割であるという、計量士の観察とその報告をどのように受けとめたらよいであろうか。
 計量検定所の職員が素直に語った言葉として、ハカリの定期検査を完全に実施するための重要な要件は、職員が足を使って回って調べて、それを台帳に記載することだ、というのがある。使われているハカリのすべてが台帳に記載されていればよいが、それができていないことから、問題が発生する。ハカリを販売する時点で、あるいはハカリを購入する時点で、そのハカリを取引証明に使用するためには、検定品であることと、2年に1度役所が実施する定期検査に合格していることが必要であることという知識が供与され、それをその通りに使用者が受け取って、使用者の義務を果たすことができれば良いのであるが、日本の世の中のハカリの使用の実態はそのようにはなっていない。
 全国の47都道府県と特定市のすべてで、ある区域を設定して役所の人と公正な第3者が共同して、ハカリの定期検査の実施の状況を調査するとどのような結果がでてくるのであろうか。計量法はハカリの検定と定期検査の実施義務を使用者に求めている。ハカリの定期検査を受ける義務はハカリの使用者にあり、ハカリ使用者はハカリの定期検査を受検して、これに合格したハカリを使用しなければならない。同じ意味であるが検定品でないハカリを使用したり、定期検査を受けていないハカリを使用することは計量法に違反し処罰の対象となる。こうしたしくみに対してユーザー検定といういい方があり、この言葉は現在はあまり使われてはいないが、ことの本質を表現している。ハカリの定期検査の合格のための器差条件は検定の規定の2分の1である。
 その一方で計量法が自治事務化したために、ハカリの定期検査を実施する責任の一切は地方公共団体に帰属する。地方公共団体はハカリ使用者がいて定期検査の求めがある以上、この検査に全面的に対応しなければならない。ユーザー検定という建前はよいとしても、地方公共団体は取引証明に使われているハカリの全部を台帳に記載して、この全部を定期検査する責任を負う。このことによって日本の取引・証明などの適正な計量の実施が確保される。

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