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日本計量新報 2009年7月26日 (2783号)

日常生活では質量と重量の区別はしにくい

ハカリのことを質量計と呼ぶのは、ハカリが質量を測定する器械であるからであり、計量法が規定するハカリ(質量計)とは質量を測定する器械を指す。
 質量測定とは質量の基準との差を求めることである。質量の基準はある重力加速度のもとでの重量をもとにつくられており、質量の基準となる1キログラムは水1立方メートルの質量とほぼ同等である。国際度量衡局にあるキログラム原器が質量の基準となる1キログラムである。質量の定義をキログラム原器から解放するための試みがなされており、物質量や電気量を基に規定される日は遠くないようだ。
 日常の生活において質量と重量の区別はしにくい。重力加速度は日本列島の地域ごとに異なるとはいえ、北海道で計った1キログラムの分銅を同じハカリで沖縄で計ると1・5グラム少なく表示されるという程度であるからだ。東京都心の1キログラムの分銅は、標高のある富士山頂では1グラムほど軽くなる。
 計量法では、同じ1キログラムの分銅に地域によって1・5グラム程度の差が生じる不具合をなくすために重力加速度の程度に応じた補正をして対応している。現在普通に使われているハカリ(質量計)は、何もしないと重力加速度の影響を免れないので、使用地の重力加速度に応じた補正をして使われるような仕組みにしている。重力加速度の影響を受けないハカリは、天びん棒の方式を用いたものである。この方式のハカリは上皿天びんなどであるが、重力加速度の影響を構造的に除去しているものの、測定に手間がかかり、測定者の熟達度によっては重力加速度の影響以上の誤差を生じる。市場に供給されている電子式のハカリはすべて重力加速度の影響を除去するための補正を施して出荷されるか、使用地の現地で使用者の責任でしかるべく手続きをして補正して使用する。重量を測定するハカリであっても計量法で質量計と呼ぶのは、質量を測定するのと同じように補正をすることになっているからである。
 質量の単位はキログラム(kg)であり、重量(重さといってもよい)は力に属し単位の組み立て方は物体の質量(m)×重力加速度(g)であり、重量=質量(m)×重力加速度(g)となる。重量は力であり力の単位はニュートン(N)である。1N=1kg・m/s2。
 地球上での人の感覚としては質量は重量とほとんど同じであるが、月の場合は重力加速度が地球の6分の1であるから、月での1キログラムの物質は地球では6キログラムのモノとして感じられる。質量は物理世界を構成する上で欠かせない要素であるから、質量とはそのようなものだと決めているのである。人が質量を勝手に決めても決めなくても質量はあるのだが、近代科学は、ニュートンが万有引力の存在を確認し説明したのと表裏一体のこととして、質量を規定しなければならなかったのである。

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