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日本計量新報 2009年7月5日 (2780号)

世の中の技術の進歩と連動して新しい計量器が生まれる

高速道路のETC割引によってETC装備が一気に進行している。自動車のETC購入と取り付けには1カ月ほど待たなくてはならない。オートバイだとこれが3カ月になる。ETCとはElectronic Toll Collection System(エレクトロニック・トール・コレクション・システム)の略称で、国土交通省が推進するノンストップ自動料金収受システムのことである。土曜日と日曜日そして祝祭日には、ETCを利用する自家用車はどこまで走っても1000円であるから、皆がこの割引制度を利用する。オートバイも同様だ。2009年6月20日現在、累計3100万台以上の車両にETC車載機が取り付けられており、2009年6月12日から18日までの週平均時点における利用率は全国平均で80・8%、首都高速道路では85・5%となっている。自動車側に装備がいらなかったハイウェイカードはお手軽ではあったものの偽造されることなどからETCに移行した。
 自動車に取り付けられている便利な装備として、ETCのほかにカーナビがある。カーナビはカーナビゲーションを縮めた略称で、英語ではSatellite navigation system。現在のカーナビのシステムは、基本的にGPS(全地球測位システム)を利用している。車速パルス、ジャイロなどの自律航法装置を利用して、現在位置や目的地への案内をする。GPS受信システムは携帯電話にも付加されるようになっているほか、取締器が設置されている位置を知らせることにも利用されている。速度違反取締用のレーダー波を感知する初期の装置に比べて、GPSを利用した機器は確度が遙かに高まっている。これに加えて取り締まりの内容を液晶画面にイラストで表示するようになって、実用度を増した。自動車と交通のシステムで実現した、ETCとカーナビの登場と高機能化は、技術の発展を実感させる出来事である。
 自動車の世界では、ガソリンの消費量が従来車の半分になるハイブリッドカーがそれまでのエンジン方式と置き換わる勢いである。
 電気自動車は09年7月に一般への供給のための受注を開始、10年春から順次納車される。電気自動車が蓄電池に蓄える電気は水力発電、火力発電、原子力発電ほかの発電を利用しているので、電気自動車を使えば化石燃料を消費せず、炭酸ガスを低減できる、と単純に考えることはできないものの、低炭素化への配慮としてはかなり良い。電気自動車の価格は500万円に迫る高価格であるうえ、1回の充電で100キロメートルほどの走行であるから、実用面ではハイブリッドカーに随分と劣る。しかしこの先技術改良が進めば、1回の充電による走行距離は300キロメートルほどには伸びる。量産されれば価格は下がる。10年ほど経てば多くの電気自動車がタイヤ音だけを発して静かに走っていて、路上にはそれを遙かに超えるハイブリッドカーがあることは間違いない。20年先になると単純な内燃機関を動力源とする自動車は半分ほどになっていると予測する。

 技術の進歩は、ある分野から起こってそれが他の産業分野へ波及する。ETCは無線技術がなければできなかった。これに加えてコンピュータ技術が決定的な役割を果たしている。GPS技術はカーナビの根幹である。携帯電話にGPS技術が取り入れられていることから、この技術が他の製品分野に利用されることを連想するとよい。
 GPSは計量計測機器の分野にも利用できる。質量計(ハカリ)などは目盛数が800以上になると重力加速度の影響がでる。精密な質量計(ハカリ)のうちヤジロベー方式以外のものはどれもこの影響を免れない。そのために電子式の質量計(ハカリ)、あるいは精密度の高いバネ式の質量計(ハカリ)は使用地の重力加速度に応じた調整をして使うか、その使用を見越して調整して出荷される。電子式の質量計(ハカリ)にGPSシステムを組み込めば使用地の重力加速度にあわせて自動調整することができる。標高が上がれば同じ地点にあっても重力加速度は小さくなる。富士山頂では1キログラムに対して1グラムほどの変化が生じる。GPSは地図情報との連動によって標高も割り出す。
 世の中のさまざまな技術の進歩はハカリなど計量器に影響してきた。歪みゲージはロードセル式ハカリを生み、この方式のハカリは数量面では電子式のハカリの80%ほどになっている。金属音叉方式のハカリの出現も画期的なことであった。電磁式(電磁力補償方式)のハカリは、質量標準の管理をする最高精密度のものとして地位を確立している。技術の進歩と常に絡んでいることが大事であり、うっかりこれから目を離してはならない。圧力計測に半導体圧力センサーが用いられることで自動車は性能を向上させた。
 技術屋魂(ぎじゅつやだましい)が計量器の分野で新技術と新概念の製品を生み出してきたのである。  

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