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日本計量新報 2009年5月17日 (2773号)

計量法の世界にとらわれると木を見て森を見ないことになる

度量衡という旧世界で事業をしている人々や、この分野に深く関わっている人々は、計量計測の世界を計量法の世界と重ねて物事を考えており、計量法の世界が計量計測の世界であると錯覚して、その思い違いに気づかないままに生きている。すべての人々がそうであるというのではないけれども、多かれ少なかれ計量法の世界が計量計測の世界であるという思いに引きずられている。

 そもそも、計量法の役割とは何か。計量法は、計量計測の技術世界が機能を発揮するための基礎的条件となる計量単位を決めている。これがなければ、同じ物事を計っていてもてんでんバラバラになってしまう。
 計量法のもう一つの機能は、経済社会の円滑な活動を支えるために、取引・証明分野の計量に法的に割って入って、これを厳しく規制することである。規制対象となっている計量器は「特定計量器」と呼ばれていて、ハカリ(はかり、質量計)、タクシーメーター、ガソリン計量器、水道メーター、ガスメーター、電力量計などがある。「特定計量器」に指定されている計量器は、検定を受検(メーカー自己検定方式の占める割合が9割ほどになっている)して供給される。ハカリ(はかり、質量計)の場合には、検定に合格した製品が使用者に渡り、使用者は2年に1度実施される定期検査に合格することが、引き続き使用するための条件となる。器差(精度)に関して定期検査の合格条件は検定合格条件の二分の一である。
 計量法の規則の対象となって検定を受検し、供給される計量器(「特定計量器」)は、生産される計量計測機器の1%程度の数量といっていい。温度計や簡便な体重計などは検定を受検して供給される割合がきわめて少なく、検定の対象となっていない計量計測機器のほうがはるかに多いからである。計量法は、生産される計量計測機器の1%ほどを検定という規則でしばり、そのうちのさらにわずかな数量のハカリ(はかり、質量計)については、定期検査を実施して、取引・証明の安全をはかることを目的として適正な計量の実施を確保している。
 計量法の世界から、計量法が描く世界観に立って計量計測の世界を見ていくと、ともすると1%ほどの計量器だけを見ていることになり、全体を見る目を失うことになりがちである。コンピュータの心臓部である半導体の演算装置ほかの製造には、超精密な計測と機械の作動が不可欠である。自動車の製造などにおいても同じことであり、これに加えて計測管理、品質管理、製造技術など管理技術が付加される。その管理技術の本体と神髄は計測技術であり、その応用は品質工学のような技術でもある。

 計量法の世界に従事する人はその世界でしっかりと仕事をすれば良いのであるが、計量計測の世界で仕事をすることが本来である立場の人々は、計量法の世界にとらわれすぎないことが大事である。計量法の世界にとらわれすぎると、木を見て森を見ないことになるからである。

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