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「スポーツ経営」で飛躍めざす

大和製衡(株) 川西勝三社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2012年2月12日 (2904号)2面掲載

チームワークと専門技量を活かす

経営方針は「スポーツ経営」


−−経営方針をお聞かせください。
 当社の経営方針は「スポーツ経営」です。
 世の中にはさまざまな文化があります。その一つがスポーツです。企業としてどうあるべきかという政策・方針を社員や社外へわかりやすく伝えるために、私は「スポーツ経営」という表現を用いています。

 

スポーツにはチームワークと専門の技量が必要

 では、なぜ「スポーツ経営」なのか。それは、スポーツが本来持っている特質からきています。まず第1に、スポーツが持つ純粋性やチームワークという特質です。これは人格形成にも関わるマネジメントです。第2に仕事の種類、分野に応じた専門の技量が必要とされるという特質です。

 

スポーツは人間養成プログラム

 これらは全ての文化に関わるものですし、人間そのものの能力が試されます。つまりスポーツとは、その人間の能力をいかにアップするかということを、論理思考を用いて実現する人間養成プログラムなのです。これには、医学、心理学、論理学、社会学などあらゆる知識が必要になります。
 その意味で、スポーツは、目標を立てて人間をどう育てるか、論理思考によるトレーニングの実践により最大の能力を引き出すこと、これを極限の形で実現していくものであるといえます。しかし、一般企業ではそこまではやっていません。個人も学生のうちは試験があるので勉強するけれども、社会人になったら勉強しなくなってしまいます。
 ですから、私が「スポーツ経営」というのは、何も企業がスポーツをやるというのではなく、組織立てて人間に能力をつけさせるということです。そして、その中から人格形成もしていきます。

 

チームワークの形成

 「スポーツ経営」でもう一つ大事なことは、チームワークの形成です。企業には部署ごとにさまざまなチームがあります。このチームワークはスポーツの世界では完璧に教えられるわけです。

 

目標と価値観を共有

 それは、全員が同じ目標を持ち、同じ価値観を共有して、力を合わせて前進するということです。
 もちろん人間ですから、一人一人考え方は異なります。いろいろな意見を持っています。しかし、一旦方針を決めたならば、全員が同じ目標を共有して、それに向かって統一行動で向かっていくことが大事です。そうでなければ、スポーツの世界では目標を実現することができません。情熱や、目標実現を諦めないという精神も、このなかから育ってきます。
 このチームワークはスポーツだけのものではありません。企業活動にも同じく必要なものです。しかし、この点でも、企業の活動はスポーツに及びません。最高の個人能力の発揮という点でも、チームワークでも、スポーツのほうが遙かに上です。

スポーツから学ぶ必要

そういう点で、われわれが企業活動を遂行していく場合に、スポーツから大いに学ぶ必要があります。そのことが企業力になりますし、落伍者を作らない方法でもあるのです。
 このように、スポーツの持つ能力アップにおける論理思考とチームワークによる統一行動の優位性やリーダーシップ、そして諦めない精神は企業経営に勝っており、これを事業政策と活動に取り入れること、これが大和製衡の「スポーツ経営」なのです。

経済の変化は神の見えざる手

−−現在の世界の経済情勢をどうみていますか。

変化を前提にリスク管理体制を構築

自然界、つまり地球の姿も長い目で見れば大きく変化しています。常に変化し続けているといってよいでしょう。それにともなって人間社会は自然災害に繰り返し見舞われています。
 このことを前提にして、予測判断力と、災害が起こることを前提としたリスク管理体制(防御体制)をしっかり構築することが経営においては重要です。

早めに対策し、じっくり進む

 また外部環境の変化に振り回されるのではダメです。地震や水害などはこれからも繰り返し起こるわけですから、起こってから慌てることがないように、早め早めに手を打ってじっくり進む経営方針を取っています。

基本は需要と供給の関係

 経済情勢も同じです。絶えず変化しています。その変化は、なぜ起こるか。表面的には、為替問題、各国政府の経済政策など、いろいろな現象が現れます。EUでの債務問題もこれです。しかし、それは、経済の大きな流れからすると小波です。経済変動の最も基本となる要因は、需要と供給の関係です。アダムスミスが明らかにした「神の見えざる手」です。この大波は10〜20年の周期で現れます。

「神の見えざる手」とはどういうことか

「神の見えざる手」とはどういうことか  第1段階は、需要が供給を上回ります。例をあげましょう。人口が多い国やエリア、現在でいう発展途上国を考えてください。ここで必要とされるのは生活必需品です。人口が多いということは、莫大な消費市場があるということです。
 一般の商品は全人口の30%に普及すると、その市場は満杯になるといわれています。しかし、生活必需品の需要は100%です。それがないと生活が成り立たないわけですから。
 また、一旦この商品を使う生活を始めてしまうと、人間はそれがない生活に後戻りすることはできません。生活水準というものはどんどんと上がっていきます。需要がどんどん増えていくわけです。
 この段階は、需要が供給を遙かに上回っています。経済はどんどん発展しているわけです。商品を作れば作るほど売れる、しかも商品の供給が追いつかないのですから、商品価格もどんどん高くなっていきます。
 この市場には、他からも商品の作り手、売り手がどんどん参入してきます。そうすると市場は次の第2段階に移行します。つまり、供給と需要のバランスが取れた状態になります。
 そして、やがて供給が需要を上回るようになってきます。これが第3段階です。商品を生産しても売れない、価格もどんどん下がってくる状態になります。そうすると経済が成り立たなくなってきますから、業界のリストラが始まります。

国際化の方向へ

 強いものだけが生き残る状態になります。「神の見えざる手」によってバランスを回復しようとするわけです。ここで企業が生き残るためには能力をアップする、つまり効率化を進めざるを得ません。
 また、新しい市場を見つける、あるいは作り出すこと、つまり需要を増やす方向へ行かざるをえません。企業の海外進出、国際化も需要を増やすことでバランスを取ろうとするものです。

 

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