計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

新しい技術でマーケットを切り開く


古川 陽

(株)エーアンドデイ 代表取締役社長

vol.1

日本計量新報 2008年3月16日 (2715号)6面掲載

−−世界経済と国内経済の見通しは。


サブプライムローンなどに端を発して、原油高、株安など、世界経済に不安要因が出てきています。しかし、短期的ではなく全体的に見ると今のところはまあまあの線で推移しています。現状では景気は悪くはありません。しかし、円高傾向が強くなれば収益的には厳しくなります。

産業構造の転換に時間がかかった

−−日本経済で懸念すべき点は。

古川陽90年以降、バブル崩壊で日本経済が長期に低迷しました。あれは産業構造の転換に時間がかかったためです。つまり、90年までは日本が生産工場でした。それが韓国から始まって、中国、アジア地域へと生産地は移っていきました。そのときに2つの対応がありました。1つは、積極的に海外で生産して海外へ売っていくという道です。もう一つの道は、日本がもっと産業の高度化に対応して、国内で生産しても利益が出る体制をつくるということです。これが定着するまでにかかったのが、いわゆる失われた10年です。
 ですから今、韓国あたりはつらいですね。生産コストの点で中国や他のアジア諸国の後塵を拝していますから。

部品まで自社生産しないと海外生産のメリットなし

低価格の製品は、海外で生産しないと利益が出ません。しかし、海外生産と簡単にいいますが、実は大変なのです。
 日本の場合は、部品メーカーがきちんとしているなど、インフラが整っています。しかし、中国など海外での生産の場合は、その多くが、部品まで自社生産しないとメリットが出ません。
 エー・アンド・デイは、現在、血圧計を中国で生産していますが、血圧計は、ゴムホースの製作や腕帯の縫製まで自社でやっています。また、はかりでしたら、熱処理まで内製化しないとメリットがありません。当社はこれをやろうとしています。
 素材産業も低迷していましたが、高張力鋼の開発など、新技術開発などで技術を高度化して再成長しています。第2の道ですね。


グローバル化とM&A

もう一つは、グローバル化のなかでM&A(企業の合併・買収)、金融資本による産業資本の支配がおこっています。
 資本には3つの種類があります。産業資本、商業資本、そして金融資本です。このなかで現在は金融資本が非常に強くなっています。そして、M&Aなどによる金融資本の産業資本、商業資本への支配が最大の問題だと思います。
 産業資本によるM&Aは多くは救済型のM&Aです。
 これに対して、金融資本によるM&Aは、利益重視型なのでどうしても乱暴なかたちになります。
 当社は、基盤技術をしっかりさせて、長期視点に立った経営に努力していきます。

次世代の技術開発に成功

海外での売上が60%

−−エー・アンド・デイの国内外の売上比率はどのようになっていますか。

当社の場合、約60%が海外での販売になります。海外での生産、海外での販売が全体としては増えています。中国とロシア、中国とアメリカ、韓国とアメリカ、というようなかたちで、レートなどで難しい計算をしなくてはなりません。
 新事業として、自動車開発の加速に寄与する計測・制御・シミュレーションシステム(DSPシステム)がありますが、この事業がどのくらいのシェアを獲得できるかです。どの会社もそうですが、経済全般の良い悪いということと、会社の成長余力の均衡をどうとるかということになります。
 バブルの時期までは、会社の成長余力がそれなりにありましたから、景気の波の影響を受けずにきました。しかし、1990年のバブル崩壊期は、たまたまいろいろな波が重なって、会社としての成長余力がなくなってきて、停滞せざるを得なかった時期でした。
 ここにきて次世代の技術開発に成功しました。したがって、景気の波がどうなるかも重要ですが、われわれとしてはあくまでも新しい技術で、新しいマーケットを切り開くということがポイントになっています。

自動車全体の挙動を把握するシステム開発

その条件として、まずコンピュータの能力が非常に上がってきました。そこでシミュレーションを使ったオブジェクトモデル、ソフト開発のためのツールが見えてきました。この技術を使って、どのようなマーケットに参入できるのかということが、われわれに問われています。

−−それは製品や事業分野でいうと何でしょうか。

自動車関係ですね。自動車全体の挙動を総合的に把握するシステムです。おもしろいのは自動車は力で動いていきます。どの方向にどういう力がかかるかをはかることで自動車の挙動を把握できるのです。そうすると当社がはかりで培ってきた高精度な力計測の技術が役にたってくるのです。

[1 2 3 ] 次へ》


インタビュートップ記事目次
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.