健康計量器
計量計測データバンク機種別特集トップ 温度計特集
温度計を買うなら

食品製造現場での温度計測機器

(2963号/2013年5月12日掲載)
特集記事 製品紹介

食中毒は、温度計を使って防止する
適切な温度管理を実施するには必要不可欠

これからの季節は細菌性食中毒が発生しやすい

細菌性のものとウイルス性の食中毒を合わせた患者数および死者数は、2002年に患者数2万5000人、死者は最悪の11人をかぞえ、2006年には患者数3万7600人(死者は2人)でピークとなり、その後年々減少傾向にあったが、2012年は、患者数が再び2万5000人(死者は8人)近くまで増えた。(別表参照)細菌性・ウイルス性食中毒の発生状況(厚労省調べ)
 季節による発生件数を見てみると、ウイルスによる食中毒は圧倒的に冬期が多い(ノロウイルスなど)が、細菌性食中毒のピークは夏期。温・湿度が高く細菌が増殖しやすい5月〜10月に発生しやすい。細菌の種類としては、サルモネラ属菌、カンピロバクター、そして腸管出血性大腸菌(O(オー)-111、O(オー)-157、O(オー)-26など)を含む腸管出血性などがある。
 カンピロバクターや腸管出血性大腸菌は、少量でも感染して体内に入ると、潜伏期間を経て発熱や激しい腹痛、下痢、嘔吐などの症状が出る。抵抗力の弱い子供や高齢者は、症状が重くなりやすい。
 食中毒を防ぐために欠かせないのは、「温度」を適切に管理することである。たとえば腸管出血性大腸菌の増殖温度は7℃〜45.6℃。室温では20分程度で倍増するが、熱に弱く、75℃で1分間加熱すれば死滅する。
<最近の食中毒発生事例>
■東京都
 大手予備校の男子寮で4月下旬、寮生49人が食中毒にかかり、便から細菌のエルシニア・エンテロコリチカが検出された。
 寮で出された給食が原因とみられるが、食材は特定できていない。
 エルシニア・エンテロコリチカは豚の保菌率が高い。食中毒は全国で2004年に1件、2012年に3件起きているだけ。
■宮崎県
 4月26日、宮崎市内の居酒屋で飲食した男女16人が、腹痛や発熱などの症状を訴えた。2人からカンピロバクター菌を検出したことから集団食中毒と断定した。
 16人は同店であった職場の懇親会に参加した。メニューは鶏のすき焼きや刺し身などだった。入院者はいなかった。
■奈良県
 5月3日、奈良市の会席料理店で会席料理を食べた男女15人が下痢や嘔吐(おうと)などの食中毒症状を訴え、うち3人からノロウイルスを検出した。全員軽症。
■福井県
 越前市の飲食店で4月29日に食事をした男女9人が下痢や嘔吐(おうと)などの食中毒症状を訴えた。
 9人はいずれも軽症。

正確な温度管理には温度計が必須

食品製造の現場で必要とされる温度域は、下はマイナス50℃から上は200℃近くまでと幅広い。これは特殊な例ではなく、鮮度を保つために極低温で瞬間冷凍した食品を解凍して油で揚げるといった工程でごく普通に目にする温度である。
 食中毒を防止するために適切な加熱が重要なのは前述の通りだが、低温域での温度管理も、安全性や鮮度を保ったまま食品を輸送・保管する上で非常に重要である。
 0℃を挟んで250℃もある温度差を、人間の勘だけに頼って管理・制御することは不可能であり、現代の食品の管理手法にも適合しない。現在はフードチェーンで食品安全のトレーサビリティシステムが導入されており、安全の担保となる温度管理を疎かにはできない。誰もが簡単に正確な結果が得られるよう、温度計を使うことが望ましい。

食中毒の発生要因

食中毒の発生要因には、原材料の汚染、未加熱または加熱不足、調理後の保管方法・保管時間の問題、また、手や器具からの二次汚染などが挙げられる。いずれも衛生の基本的な事由に係わることであり、一層の自主管理体制推進が求められる。一方で、家庭の食事からの発生も、発生件数全体の10%近くに及んでおり、各家庭での日頃の心構えが必要といえる。
 細菌性食中毒の予防の三大原則は、「細菌は付けない、増やさない、死滅させる」。食中毒菌を食品に付着させない清潔な調理環境作り、細菌を増やさない迅速な時間管理、細菌を死滅させる適切な温度管理が重要である。調理施設、調理者、調理器具等は、常に清潔に保つ。掃除や手洗いはもちろん、食器、まな板、包丁、ふきん等の調理器具の洗浄消毒を徹底する。

迅速な時間管理

分裂速度が最も短い菌のひとつである腸炎ビブリオは、最適条件下では7分以内に2倍に増殖し、2時間ほどで食中毒を起こすのに充分な菌数に達してしまう。調理から食事までの時間は、できる限り短くする。食品を冷却することは細菌の増殖を停止または抑制する効果があるが、その際も迅速な対応が必要。

適切な温度管理

食材を加熱する際は、細菌性食中毒の予防には75℃(食材の中心温度)で1分以上、ノロウイルスによる食中毒の予防には、85℃で1分以上の加熱が望ましい。また、保温する場合は、中心温度を65℃に保つ。一度加熱したものでも、一旦冷ましたものは必ず75℃まで再加熱すること。死滅せずに潜んでいた細菌が再繁殖している可能性がある。保存の際は、冷蔵庫で10℃以下、冷凍庫でマイナス15℃以下を目安とする。
 食品の温度は、表面だけでは不十分で食品用中心温度計を用いて、内部の温度を測る必要がある。煮物などを測定する際は、最も熱が通りにくい食材を選ぶと良い。

目的・用途に合わせた温度計選びを

食品現場で役立つ温度計には以下のようなものがあり、使用目的や用途に合わせて使い分けることが肝心である。

食品用中心温度計

食品の温度は、表面では正確に測定できない。食品用中心温度計は、測定したい食品に金属センサを直接差し込み、中心の温度を測ることができる。煮物などを測定する際は、最も熱が通りにくい食材を選ぶと良い。

放射温度計

赤外線センサで温度を計測する。中心温度計と異なり表面温度しか計測できないが、測定対象物に触れることなく衛生的に測定できる点、高速で温度を測定できる点が優れている。

サーモスタット

バイメタルの湾曲などを利用した温度調節器で、機器の放つ温度を一定に保つ。冷蔵庫や冷凍庫、フライヤーに付いているサーモスタットは、温度表示が正しく作動しているか、正確な温度計で定期的に確認する必要がある。

温度データロガー

温度データロガーは、温度データを計測記録・保存する計器。機器の中に温度センサー、メモリー機能、電池が内蔵されており、配線が不要。食品の調理・保存過程で、食品のそばに設置できる器種ならば、細菌が増殖しやすい温度帯の環境に置かれていないか確認するときに便利である。

Since 15 Mar 2006/Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.