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安心・安全輸送のために(2) 過積載・偏荷重防止が安全のカギ

(3055号/2015年5月3日掲載)
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特集記事 製品紹介

輸送中の交通事故減少へ
過積載・偏荷重を「はかって」防止

「安全・安心輸送のために」特集の第2回は、トラックスケール、ロードメーター等を取り上げる。重大事故や道路インフラに重大な影響を与えている過積載や、横転事故の大きな原因となっている偏荷重を防止する有効な手段として、トラックスケールや軸重計、可搬式ロードメーターなどの計量機器を活用することが望まれる。(公社)全日本トラック協会によると、事業用自動車における交通事故件数・死者数は、ここ数年、減少し、望ましい傾向にある。しかし、ひとたび事故が起きると、社会的影響の大きい重大事故に繋がりやすい。事故は複合要因で起きるが、事故の一因となる車の整備不良による車輪脱落や過積載・偏荷重などを防止するため、種々の計量器を活用することが望まれる。

物流の主力はトラックが担う

事業用自動車のなかでもトラックが国内の物流を支えている。現在、国内貨物の9割をトラック輸送が担っている。船舶や鉄道、航空輸送でも、末端輸送はトラックが担っており、トラック輸送は国内物流の基幹的役割を果たしている。日本のトラック輸送産業の規模は13兆円を超え、産業活動や国民生活に不可欠な存在になっている。それだけにトラック輸送の事故が産業、社会生活に及ぼす影響も大きく、安心で安全な輸送サービスを安定的に供給することは社会的な責務といえる。

過積載・偏荷重は重大事故につながる

事故原因は単一ではない。整備不良による車両の破損、過積載、偏荷重、過酷な労務環境による居眠り運転などいくつの要因が重なり合った複合的である場合が多く、理由を特定できる事案は少ないが、そのなかでも整備不良(車輪の締め付け不足など)による車両破損や、過積載や偏荷重による横転、追突事故などは、重大な結果を引き起こしてしまう。過積載運行は、制動距離の伸長、ハンドルの操作性悪化など、重大事故誘発の原因になっている。

道路保全のため罰則強化

また、路面に過大な荷重を加えるので、舗装や橋梁の傷みを早め、耐用年数を短縮させてしまう。
 国土交通省は、大型車両の過積載が道路に深刻なダメージを与えているとして、過積載の行政処分に関する通達を見直し、車両総重量の一般制限値(国が管理する道路は最大27t)の2倍以上で運行した違反者を即時告発することを規定し、今春施行した。
 これまでは過積載で重大な交通事故を起こした場合や、違反を繰り返した場合に限り告発してきたが、今後は取り締まりの現場で基準の2倍以上の重量超過を確認しだい告発に踏み切る。違反者には100万円以下の罰金などが課せられる。また、基準の2倍に達しない場合でも、積載物の軽減措置や通行の中止を命令する。
 国交省の試算では、道路の劣化に与える影響は、軸重20tの車1台で10t車の約4000台相当となる。全走行車両のわずか0.3%に過ぎない過積載の大型車両が道路の劣化原因の9割以上を占める計算になる。道路の老朽化問題が深刻化するなか、国交省は車両の通行制限を順守するよう、今後も対策を進めていく。
 そのほか、過積載のためエンジンや車体に過大な負担をかけることから、騒音、振動、排気ガスを増大させ、沿道の環境悪化にもつながることとなる。

トラックスケールなどの活用を

過積載の防止のためには、はかりを購入して対応する必要がある。

事前計量か事後計量か、業態に応じた対策を

積載重量を計るにはさまざまな方法がある。積む前に個々の積み荷の質量や寸法を計っておき、荷の質量の合計を規定量におさめる方法、積みながら質量を計る方法、積載してからオーバーしていないか計って検査してみる方法など。
 はかりの各メーカーはこれらの方法に対応した各種はかりをラインアップしているので、業態に適した機器・方法を選択すればよい。

偏荷重や重心の計測が求められる

近年問題視されているのが、「偏荷重」である。国土交通省の「貨物自動車運送事業の運行管理に関する基本的な考え方」(準則)にも、過積載の防止とともに、運行管理者は、偏荷重が生じないように積載しなければならない、という記載がある。

海上コンテナ陸送中の事故防止

国際海上貨物用コンテナ(海上コンテナ)が陸送中に横転する事故が、近年頻繁に発生している。
 横転事故の原因として、カーブを曲がる際の速度超過とともに、「偏荷」や「荷崩れ」、「過積載」などがあった場合、熟練した運転者が制限速度以内で走っていても横転してしまう場合があるという実態が明らかになってきた。
 「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」にも、トラック事業者の取り組みとして、過積載防止とともに、「コンテナヤード内で偏荷重、高重心などが生じていることが判明した場合」は「海貨事業者などへ連絡し、指示を受けること」、「偏荷重や不具合などが、安全輸送に支障をきたすおそれがある場合にあっては搬出させないこと」という記載がある。
 偏荷重、高重心の計測に対する需要が高まっている。

コンテナ車両の偏荷重三次元計測システム

期待のトラックスケールシステムが開発され、運用されている。コンテナ車両の偏荷重を三次元(左右、前後、高さ)で計測し、安全輸送に大きく貢献する大型トラックスケールである。

重心位置(左右、前後、高さ)を三次元計測

運用されている三次元計測システムでは、コンテナ車両の「重心位置(左右、前後、高さ)」のバランス情報を提供できるようになった。三次元計測の結果は、数値とイラストで表示し、運転者に提供する。重心位置がイラストに直線で示されているため、視覚的に理解しやすい。
 このように偏荷重や重心位置の計測がさらに全国的に普及していけば、偏荷重や高重心による事故の確率をさらに低下させることができる。

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