計量計測データバンク >機種別特集トップ >過積載防止特集

安心・安全輸送のために(1) 過積載・偏荷重の防止

(2922号/2012年6月24日掲載)
安心・安全輸送のために(2)へ
特集記事 製品紹介

事業用自動車における交通事故件数・死者数は、ここ数年、減少傾向にある。しかし、ひとたび事故が起きると、社会的影響の大きい重大事故に繋がりやすい。事故は複合要因で起きるが、事故の一因となる車の整備不良による車輪脱落や過積載・偏荷重などを防止するため、種々の計量器を活用することが望まれる。今週から2回にわたり、事故を防ぐための計量器であるトラックスケール、トルクレンチを特集する。


重大事故につながる過積載・偏荷重

物流はトラックが担う

業用自動車のなかでもトラックが物流を支えている。現在、国内貨物の9割をトラック輸送が担っている。船舶や鉄道、航空輸送でも、末端輸送はトラックが担っており、トラック輸送は国内物流の基幹的役割を果たしている。東日本大震災からの復興にも、トラック輸送は大きな力を発揮してきた。
 日本のトラック輸送産業の規模は13兆円を超え、産業活動や国民生活に不可欠な存在になっている。一方、トラック運送事業者の99%は中小企業が占めており、現今の厳しい経済環境のもとでは厳しい経営環境にさらされている。
 それだけにトラック輸送の事故が産業、社会生活に及ぼす影響も大きく、安心で安全な輸送サービスを安定的に供給することは社会的な責務といえる。

減少する交通事故

2010(平成22)年中に全国で発生した交通事故全体の件数は72万5773件、そのうち、事業用自動車は5万1061件だった。関係者の努力もあり、05年の6万8409件をピークに事故件数は減少傾向にある。事故による死者の数も減ってきている。しかし、走行距離1億kmあたりの業務用自動車による死者数は、10年は前年に比べ増加した。
 事故数が減少傾向にあるとはいえ、いったんトラックが事故を起こすと影響は大きく、安心・安全な輸送の確保は依然として重要な課題である。

過積載・偏荷重は重大事故につながる

事故原因は単一ではなく、整備不良による車両の破損、過積載、偏荷重、劣悪な労務環境による居眠り、飲酒運転などのいくつかが重なり合った複合的である場合が多く、理由を特定できる事案は少ないが、そのなかでも整備不良(車輪の締め付け不足など)による車両破損や、過積載や偏荷重による横転、追突事故などは、重大な結果を引き起こしてしまう。
 過積載運行は、制動距離の伸長、ハンドルの操作性悪化など、重大事故誘発の原因になっている。
 また、路面に過大な荷重を加えるので、舗装や橋梁の傷みを早め、耐用年数を短縮させてしまう。
 さらに、エンジンや車体に過大な負担をかけることから、騒音、振動、排気ガスを増大させ、沿道の環境悪化にもつながる。
 09年4月1日から法令違反による行政処分基準と監査体制が強化されており、過積載運送の減少などに一定の効果を上げているが、厳しい経営環境と零細企業化は、過積載増加への誘因材料となりうる。

トラックスケールなどの活用を

過積載の防止のためには、はかりを購入して対応する必要がある。
■事前計量か事後計量か、業態に応じた対策を
 積載重量を計るには様々な方法がある。積む前に個々の積み荷の質量や寸法を計っておき、規定量におさめる方法、積みながら質量を計る方法、積載してからオーバーしていないか計ってみる方法など。
 はかりの各メーカーはこれらの方法に対応した各種はかりをラインアップしているので、業態に適した方法を選択すればよい。

偏荷重や重心の計測が求められる

近年問題視されているのが、「偏荷重」である。国土交通省の「貨物自動車運送事業の運行管理に関する基本的な考え方」(準則)にも、過積載の防止とともに、運行管理者は、偏荷重が生じないように積載しなければならない、という記載がある。

海上コンテナ陸送中の事故防止

国際海上貨物用コンテナ(海上コンテナ)が陸送中に横転する事故が、毎年発生している。
 横転事故の原因として、カーブを曲がる際の速度超過とともに、「偏荷」や「荷崩れ」、「過積載」などがあった場合、熟練した運転者が制限速度以内で走っていても横転してしまう場合があるという実態が明らかになってきた。
 「国際海上コンテナの陸上における安全輸送ガイドライン」にも、トラック事業者の取り組みとして、過積載防止とともに、「コンテナヤード内で偏荷重、高重心などが生じていることが判明した場合」は「海貨事業者などへ連絡し、指示を受けること」、「偏荷重や不具合などが、安全輸送に支障をきたすおそれがある場合にあっては搬出させないこと」という記載がある。
 偏荷重、高重心の計測に対する需要が高まっている。

コンテナ車両の偏荷重三次元計測システム

注目されるトラックスケールが開発された。コンテナ車両の偏荷重を三次元(左右、前後、高さ)で計測し、安全輸送に大きく貢献する大型トラックスケールである。(財)横浜港湾貨物計量協会と鎌長製衡(株)が共同開発した。

重心位置(左右、前後、高さ)を三次元計測

偏荷重計測結果の例両者は、2010年5月、日本で初めて二次元計測(左右方向の偏荷重測定)を完成させ、運転者に「輪重量」と「軸重量」の情報を提供してきた。さらに、今回開発した三次元計測システムでは、コンテナ車両の「重心位置(左右、前後、高さ)」のバランス情報を提供できるようになった。
 三次元計測の結果は、数値とイラストで表示し、運転者に提供する。重心位置がイラストに直線で示されているため、視覚的に理解しやすい。
 このように偏荷重や重心位置の計測が全国に普及していけば、偏荷重や高重心による事故の確率をさらに低下させることができる。

Since 15 Mar 2006/Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.