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日本計量新報 2017年4月30日 (3147号)

数値が決める人の健康と健康を保持する心得

医学では人の健康を数値ではかって決めている。人があそこが痛い、ここが痛いというとそこを検査する。何もなければ病気ではないことになる。計って決める、これが現代の医学である。計ることと見ることは似ているから臓器をカメラで見て病気のあるなしを決める。本人に痛い痒(かゆい)いの自覚がなくても尿に混じった血液で胃や腸や泌尿器の病気を疑い写真を撮って診る。痛い痒いがあれば病気が潜んでいると考えたらいい。かすかにでも痛い痒いを感じたらその様子を詳しく書き出して診療を受けることだ。それでも計測した数値や見ることによって病気のあるなしを決めるのが今の医学と医療であり、医学用の計測器の役割は大きい。  

年齢を重ねると足腰そして腕や肩に違和感がでる。目もかすみがちであり記憶も気力も体力も落ちる。誰でもがそれを感ずる。そうした症状を改善する副食物があると宣伝され、効果があったと喜ぶ人がいると多くの人がその副食物を欲しくなる。テレビのCATVチャンネルの番組はほとんど同時に長いこと副食物の宣伝をする。人の耳はその言葉の洪水に見舞われ思考回路はその論理で充満する。大手の有名企業がこの分野で商売していることに驚く。ソニーなどは損害保険で稼いでおりこれに追随する企業は少なくないから、本業で稼げない企業の行動様式なのだろう。  

論理をなりたたせるための論証と構成がもちこまれ、あれこれの物質は何々の効用があるからこれこれに効くと述べて、それを使ったから元気になったと喜ぶ人を登場させる。論理学の手法がここには持ち込まれる。ああすればこうなる、という単純な論理構成に人は弱い。ナチスがそうであったし日本の戦前の軍国主義体制がそうであった。指導者そのものが単純な論理構成の落とし穴にはまったから日本は惨禍にみまわれた。  

論理学は伝統的には哲学の1分野に属していた。しかし、今は数学的演算を導入した数理論理学があり記号論理学ともいう。数字をもちだして物事の正当を説くというのがはやりである。体の調子をよくするという副食物の宣伝はこの論理手法を単純にして使う。ああすればこうなる式の論理は懐疑される。しかし皆がころりとやられる。副食物が売れるわけである。それを使ったら効いたという人がいるから反論を強弁できない。  

体重計を主力商品にしていた企業の食品やレストランほかの事業展開がつづいている。平凡な目では追いかけられないほどであるが、その企業が企画した弁当は人気だしプリンも売れている。マルコメと提携して販売しているインスタントみそ汁はとてもおいしい。旧来の企業のそれにまさる味であり喝采ものだ。健康をつくり、おいしさをつくり、人の生活を楽しくさせる事業だ。計って分からせて決めるというのも計測である。計らなくても計ったのと同じような結果を招来するように図ることはもっとよい。世の中のよい仕組みとは後者のことであろう。

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