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日本計量新報 2007年11月4日 (2698号)

全計量器のうち0.1%を検査して社会の平和を築く質量計の定期監査制度

世の中には理化学機器に属する計量計測機器があり、分析機器に属する計量計測機器があり、環境関連の計測機器があり、さまざまな産業分野でそれに対応する計量計測機器が使用されている。身の回りではエアコンやストーブは温度センサーと制御装置によって温度を決めている。テレビは部屋に射し込む陽光の変化に対応して輝度を調整する仕組みがあって、ここにも照度計とその制御装置が稼働している。車のABSのブレーキ装置には圧力制御技術が使われている。車はエンジン、足回り、バックソナーなどあらゆる計量と制御の仕組みのかたまりであり、カーナビもGPSによってできており、ETCにしてもそうである。計量計測機器は機器に付加されている一方、機器をつくり出すための生産装置として機能している。計量計測機器なしではものづくりは成り立たないし、商品の品質と機能は計量計測機器と計測技術によってつくり出されている。
 計量計測の世界には自ら「計量界」とくくって存在する世界とそこに集まる人々がいる。この世界は世の中の計量の仕組みの骨格となる計量制度の中心部分の計量法(度量衡法である時代もあった)に連なって集まっていて、明治時代のはじめの度量衡取締条例などのころにはサシ・マス・ハカリによって計量の世界が成り立つ技術の水準にあった。その後計量計測技術は大きく発展している。計量法が検定検査など規制の対象とし実際に検定を実施している計量器の数量的割合は、世の中に存在するあらゆる形式の計量計測機器のうちの1%に満たない。検定対象計量器が全計量器の1%なのに対して、計量法の定めによって定期検査が行われている計量器は質量計(はかり)であり、これは検定対象計量器のなかの10%にも及んでいない。計量法で定期検査が定められ実施されているのは、計量法上の特定計量器としての質量計のうち定められたものであり、全部ではないがかなり多くの部分であるが、これは世の中のありとあらゆる計量器のうち0・1%ほどのものである。
 質量計(はかり)の定期検査は機関委任事務から自治事務に変更されており、地方公共団体の責任において、計量法の定めにしたがってこれを実施している。現在の「計量界」に集まっている人々のうちの計量士の実質上の業務は、指定定期検査機関に属しての定期検査、適正計量管理事業所に属して計量器の管理としての定期検査行為、代行検査(代検)である。そうすると計量士が検査や管理の対象をする計量器はあらゆる計量器のうちの0・1%であるということになる。そして地方公共団体などの計量行政機関が対象とする定期検査対象としている計量器は実質上は質量計(はかり)であって、それは全計量器のうちで0・1%にすぎないことになる。
 計量法は特定計量器の検定にメーカー検定制度としての指定製造事業所制度を設けており、検定の基準に適合して製造されていれば検定と全く同等のラベルとしての「基準適合証印」を付することができるよう仕組みをつくっている。計量器の大規模製造業(メーカー)では、ほとんどの特定計量器で定製造事業所制度を利用していて、地方公共団体の計量行政機関が実施する特定計量器の検定は極度にその割合と数量を減じている。地方公共団体の業務には指定製造事業所制度の指定を受けている企業の定期的な監査などがあり、これは重要な業務であるので十分な監査能力とその態勢の維持・向上が求められる。ここが崩れれば指定製造事業所制度は崩壊し、日本の計量制度は国民の信用も失い大きな社会問題にもなる。計量士のうち適正計量管理事業所に属する計量士は事業所内のすべての計量器を管理対象にしており、設備の保安だけではなく計量器の校正や計量の設計にも従事しているので、世の中に存在する計量器のうちの0・1%の割合に過ぎない質量計の定期検査に相当する検査とその管理をしているのではない。
 計量法が規定する地方公共団体の計量行政機関が実施する質量計(はかり)の定期検査が、世の中に存在するすべての計量器のうちの0・1%であるという事実を確認するとともに、地方公共団体がこの検査をする責任と意義をいま一度確認して遺漏なきを期する体制整備をすることが大事である。質量計(はかり)は国民生活の安定を確保する重要な取引証明分野であり、全計量器のうちの0・1%のものを検査するだけで相互に信頼できる平和な社会関係を築くための礎(いしずえ)になるのであるから、もっとも効率的で合理的な制度が質量計(はかり)の定期検査制度であると考えることができる。


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