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DSP技術で新市場開拓


森島 泰信

(株)エーアンドデイ 取締役執行役員営業本部長

vol.1

日本計量新報 2011年9月18日 (2886号)2面掲載

高精度と高速応答を両立

−−(株)エー・アンド・デイは、計測、計量、医療機器、健康器具の分野に計量計測機器と技術を提供されています。このエー・アンド・デイの製品を支えている技術を紹介してください。

熱中症指数モニターが好評

−−9月に入っても暑い日が続き、熱中症が心配されていますが。

森島泰信熱中症指数モニターに当社が取り組んで4年目になります。まず、直径75mmの全球形黒球を採用して安定した測定が可能な熱中症指数モニターを製品化しました。そして、お客さまからの意見を取り入れながら、毎年新製品を出してきています。
 そして、今年「熱中症 みはりん坊」という名前を付けた「熱中症指数モニターAD−5688」などを出しています。コンパクトで多機能ですから、日常生活やスポーツ、イベントでの熱中症の対策と管理に、労務環境の安全管理にと、広く使っていただいています。
 多機能ですが使いかってのよさを追求していますので、簡単に使えるおまかせモードにすると、熱中症指数が28℃または31℃に達すると自動的にアラームが作動して、熱中症指数の危険度ランクを表示(注意・警戒・厳重警戒・危険の4ランク)します。ストラップ付で携帯にも便利です。熱中症予防に、ぜひご活用いただきたいと思います。

基盤技術の一つであるDSP

−−エー・アンド・デイのコア技術を紹介してください。


 

AD-4408当社の基盤技術の一つであるDSP(Digital Signal Processing)技術を紹介します。具体例を紹介するのが一番わかりやすいと思います。
 振動などの外乱は計測器による測定に大きな影響を与えるわけですが、当社のウエイングインジケータ「AD−4408C」が、この振動などの影響をいかに受けにくいかを同じ振動条件で、他社製の機器と比較しながら見ていただきたいと思います。


優れた高速応答性

まず、AD−4408Cは指示値ゼロへの戻り、すなわち応答性が早いということがあげられます。モーターによる振動に別のランダムな振動を加えて、複雑な振動のもとで実験すると高速応答性に優れていることがはっきり分かります。

ランダムな振動を除去

細かな数値を読み取るため分解能を上げたところ、AD−4408Cはすぐに表示値が安定しましたが、他社製品は表示値がばらついたままでした。これは振動を除去する能力の差によるものです。定常的な振動を除去するのは比較的簡単ですが、ランダムな振動を除去するのは大変なことなのです。

高精度と高速応答の両立は難しい

産業用計量器には、振動の多い環境において精度よく計量することが求められます。そのため、アナログフィルター、移動平均処理、オイルダンパーなど、電気・ソフト・機械の各面からの振動対策が必要になります。
 しかし、機械的な対策は、費用と時間がかかり、ソフト的な対策では、計量計測器の応答速度を遅くすることにも繋がるため、高精度と高速応答を兼ね備えた計量計測機器をつくることは容易ではありません。
 他社の製品は、反応を早める設定にすると応答性はよくなりますが、振動をかけると表示値がばらつきます。

ノイズ除去の新アルゴリズム開発

AD−4408Cはハイパフォーマンスデジタルフィルター(HPDF)を搭載しています。従来の技術ですと、フィルタリングによってある振動成分をカットするなどしているわけですが、われわれの技術は、このフィルタリングをフルデジタル処理でやっています。オートマジカルにさまざまなノイズ成分を除去できるアルゴリズムを開発しました。
 これにより、今まで困難であった振動の多い環境での高精度と高速応答の両立を実現しています。
 他社も同じ技術を開発したといっていますが、AD−4408Cのハイパフォーマンスデジタルフィルターとは明らかに性能が違うということを、お客さまの目の前で示すことができました。本質的に技術が違うと申し上げてもよいと思います。

計量器の性能向上を安価に実現

この機能を利用することにより、自動重量判別機、CFWなど、構造上振動源を含んでしまう計量器の性能向上を安価に実現できる可能性を持っています。
 業務用の一定量のご飯を計りとる機械にも搭載されています。工場などで粉体の処理に使われるホッパースケールなども振動がかなりありますから、この技術を使って振動の影響を除去することにより計測精度が向上しました。この技術を組み込んだシステムは、大手企業の工場から数百台の受注がありました。
 特別な機械的防振構造も不要になるため、コストパフォーマンスやメンテナンス性も大幅に向上します。

自動車試験装置で磨いた信号処理技術を応用

われわれは自動車関係の試験装置を開発していますが、そこで信号処理技術を磨いてきました。その技術を計量計測器に応用したのです。

新ユーザー、新市場をつくる

日本の市場は成熟した市場だといわれています。
 一方で、グローバル化の時代です。これに計量計測器メーカーがいかに対処するか、それへの回答の一つが新しい技術の導入です。新技術の導入により、新しいユーザーを獲得したり、新しいマーケットをつくっていくことができます。これが成長の力をつくっていくということでは、一つの参考になるのではないかと思います。

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