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2007計測技術と品質管理手法(計量管理は品質工学そのものだ)
あいち適正計量管理事業所と計量士座談会

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適正計量管理事業所と計量管理そして計量

私たちはこのような計量管理をして高信頼の商品をつくりだしている

横田俊英 本日は適正計量管理事業所で皆さんが活躍されておられるようすをお話いただくことで、社内の方に対してもこういう活動をやっているのですよ、ということを説明していただきたいと思 います。そのことは同時に社外の方々、世の中の人々に対して、わが社はこのような計量管理をしていて、その結果、信頼がおける製品を製造しているのですよ、ということを説明することにもなります。

 また、自らが計量士あるいは品質管理部門で働いている者として、現在の計量法とその制度に関して、規定が曖昧だったり、十分でないという事柄、あるいは改良が望まれることなどをお話しいただきたいと存じます。

ISO9001という品質のマネージメントマネジメントシステムよりも適正計量管理事業所のほうが総合的な計量管理をしているという意見がある

阿知波正之(司会) 適正計量管理事業所制度がどうなっているのか、ということはなかなか見えにくいのです。またISO9001という品質のマネジメントシステムが適用されれば、適正計量管理事業所制度は必要ないのではないかという意見もあります。しかし、企業で計量管理に携わっている方のなかには、むしろ適正計量管理事業所のほうが総合的な計量管理をしているという意見もあります。

 適正計量管理事業所制度が製造業においてどのような役割を果たしてきたのかを語っていただきたいと思います。

第3者機関としてISO/IEC17025の認証を受け、JCSS校正事業者の登録もしている

秋山忠司 パナソニック エレクロニックディバイスの秋山です。

 スピーカーなどを製造しています。私は試験所の経営管理者です。また個人としてQCサークル東海支部の顧問もしています。私どもは第3者機関としてISO/IEC17025の認証を受けています。またJCSS校正事業者の登録もしています。三重県下では最初です。社内に第3者機関を置くという位置づけです。

 試験所の事業範囲は、校正、測定、信頼性試験、それからRoHSに規定される化学分析などの分析をやっています。職員は12名ほどいます。昨年から事業を始めまして、すでに社外に対し17、8件のJCSSロゴマーク付の校正証明書を発行しています。今後更に、社外からの注文も増やしていきたいと考えています。

 計量士といいますか、試験員の資質の観点からいいますと、ISOの審査員をされている方は、日本では今年から審査員としての力量を担保するために継続的な能力開発(CPD)を受けることになっています。私どもも試験所職員に15時間のCPDを受けさせて、主に行動特性の力量担保を求めています。まったく計量に関係しない事柄でも、能力を高める、幅を広げるという観点から、CPDを15時間ぐらいはきちんとやりましょうということです。

 また三重県計量士会で勉強、交流をさせていただいたりもしています。

適正計量管理事業所制度の課題や認知度の向上、適管事業所としての計量管理の方法について

寺倉感二 三菱自動車名古屋製作所の寺倉です。

 私どもの製作所も適正計量管理事業所の指定を受けております。私自身、適管事業所の計量士としてまだ日が浅く、いろいろ勉強しながら経験をさせてもらっています。本日は、適正計量管理事業所制度の課題や認知度の向上、適管事業所としての計量管理の方法というお話ですので、私自身が感じたことを、お話しさせていただきます。

計量管理部門の主な業務は社内の計測器の管理・校正と関連企業や取引先企業の計測器の校正など

 私どもの計量管理部門の主な業務は、社内の計測器の管理・校正です。また、計量管理部門が分社・子会社化されておりますので、関連企業や、一部取引先企業の計測器の校正も行っております。今後は、対外的な信用や校正技術のレベルアップ等を図るため、ISO/IEC17025の認定やJCSSの登録も考えています。適管事業所としての計量管理方法は、特定計量器・特定計量器以外の計量器と区別することなく校正を行い、また、校正方法の見直しも定期的に行っています。適正計量管理主任者講習会も年に一回実施しております。

 但し、適正計量管理事業所という制度自体の認知度は、社内的にも一般的にもまだまだだという観は否めないと思います。社内的には、先ほどの適正計量管理主任者講習会などで、適管事業精度のあらましや、計量管理の方法・主任者の役割などの認知度向上を心掛けていますが、一般的には、あまり知られていないと言うか、ほとんど知られていないと思います。

安心して物が買える、物が使えるというごく当たり前のことが行われる前提となる仕組みとして適管制度を据えるようにすればいい

 私も社内計量士として仕事をさせてもらってからよく考えるのですが、確かに適管制度とは、すばらしい制度だと思います。自主的な計量管理を行うということは、自分達で考え、自分達で実行し、責任を持って計量管理を行う、ということだと私は思っています。

 計量・計測というのは、世の中のありとあらゆるものに、ついてまわるものです。たとえば、スーパーでの買い物、病院での体重・血圧その他もろもろの検査など、生活をしていく上で計量・計測は欠かせないものであり、計量・計測なしで世の中は成り立たないと思うくらいです。ですから、計量や計測というのは正しくて当たり前、出来ていて当たり前なんです。この当たり前のことが出来ていないときに、初めて問題になります。

 最近では食の安全がよく問題になりますが、安心して物が買える、物が使えるというごく当たり前のことのためにも、この適管制度というものを見直し、アピールしたらいいと思います。

適正計量管理事業所の指定の利便とこの制度の社会的意義

適管制度と適管マークをISOに負けないくらいにアピールすべき

 確かに、ものづくりや商品において、計量管理が全てではありませんし、法改正など、いろいろな課題はあると思いますが、適管マーク(KKマーク)をもっと積極的に表示できるようにしたらどうでしょうか。スーパーの入り口に適管マークの説明文を掲示し、パック商品に適管マークを入れるとか。商品の袋詰めの、内容量の横に適管マークを入れるとか。製造業でも、適管マークを積極的に表示し、ISOに負けないくらいにアピールしたらと思います。

 また、その反面、サーベイランスの方法を見直し、適管事業所の動静を注視し、各適管事業所は、それぞれ責任を持って計量管理を行うようにします。そうすることで、ゆくゆくは、適管マークが付いた商品なら安心して買えるとか、安心して使えるとか思われるようになると思います。

適管制度と適管マークをISOに負けないくらいにアピールすべき

松下計量自治会では計量管理を幅広く捉えて活動している

阿知波正之(司会) 私は相当長い期間計量管理に関わってきています。若いときに当時の松下計量自治会の活動について計量管理を幅広く捉えて活動されていると聞いたことがあるのですが。

適正計量管理事業所制度は企業の信用(ブランド力)のUPにつながるまでには至っていない

植手稔 松下エコシステムの植手です。

現在は、松下計量自治会は発展的に解消して、生産革新本部に統合されています。適正計量管理事業所制度に対する松下電器の姿勢ですが、地区毎に全部の事業所が取得していきましょう、というものです。現在、コンプライアンスが注目されていますが、適正計量管理事業所の指定を受けることによって、法律上のメリットもありますし、さらに最も重要なのは、自主的な計量管理をやるメリットがあると考えています。

 適正計量管理事業所の課題ですが、特定計量器の使用、不使用に係わらず、適正な計量管理をおこなっているものを「適正計量管理事業所」として指定されていますが、ISO等に比べて国際的な整合性がなく、実質的なメリットとして定期検査の免除しかなく、世間の認知度も低いため、企業の信用(ブランド力)のUPに繋がる迄には至っていません。

 実際には自主的に適正な計量管理の推進によって、製品品質の安定、向上に貢献しておりブランド力の向上の一助を担っている筈なのですが…。

適正な計量管理とは、特定計量器の管理だけでなく、法令の遵守、規程、組織、設備、教育、定期的な校正等の一連の計測管理業務を自主的におこなうこと

 国際整合性への対応としてISO10012の導入、認知度への対応としてJIS規格とのリンク等の提言がされていますが、少し乱暴な言い方ですが、まずは現状の流通業における適正計量管理事業所とそうでない事業所との量目立入り検査の結果をもっと積極的に世間に公表されてはどうでしょうか。

 そうすることによって適正計量管理事業所は信用できる、そうでない事業所は信用できない(インチキをしているかもしれない)と、適正計量管理事業所というものが世間に認知され始めるのではないでしょうか。

 適正な計量管理とは、特定計量器の管理だけでなく、法令の遵守、規程、組織、設備、教育、定期的な校正等の一連の計測管理業務を自主的におこなっていることです。

 松下エコシステムズの取組みとしては、全社の方針を請けて、積極的な適正計量管理事業所指定の推進、各地区適正計量管理事業所遵法監査を実施。監査内容は法律的な内容だけに留まらず、自主的な適正な計量管理の高位平準化をめざして実施しています。

適正計量管理事業所制度は計量管理をやるモチベーションアップに

伊藤文人  私は三菱重工業名古屋航空宇宙システム製作所に勤務しています伊藤と申します。

当製作所は主に航空機やロケットの製造を行なっています。私どもは昭和34年に適正計量管理事業所に指定して頂きました。その当時、当所でも法令遵守や確かなもの造りの観点から、適正な計量管理の必要性が認識され、それをどの様な手法で実現していくかということが議論され、計量法に則した手法を取り入れて実行しました。そして適正な計量管理を実現した証しとして適正計量管理事業所の指定を受けることが出来ました。

 航空業界では、米国のMILスタンダードという規格がよく使われています。この規格にも計量管理の手法に関する規格(MIL-C-45662、現在ではISO10012が引用されている)があり、適用が要求されました。適正計量管理事業所の指定を頂いた当所にとって、この要求の実現は難しいものではありませんでした。現在は更にISO9001「品質マネジメントシステム」や、もう少し計量に特化したISO10012「計測マネジメントシステム‐測定プロセス及び測定機器の要求事項」などの適用要求もあります。

これらの規格に適合していれば適正計量管理事業所の指定、更には制度そのものが不要ではないかといった考え方もあるかもしれません。

しかし、法令遵守(計量法への適合)という観点からも有意義だし、この制度のなかで計量管理主任者や計量士として活動するといった目標が出来たり、様々な立場で計量管理に携わる社員のモチベーションアップにも役立っていると思います。

ですから、当所では以来ずっと適正計量管理事業所の指定を受けています。

中小企業が適正計量管理事業所の指定を受けやすくするとよい

絶対に安全なものづくりをめざし、その芽生えをいち早くキャッチして製造部門に伝えていく仕事

阿知波正之(司会) 松井さんは、企業の品質管理部門の管理者として、また、以前は計量管理の組織を持てないような中小企業の相談にのるような、計量士とは少し違う立場で関わっていらっしゃいますね。

松井博武 私は松下エコステムズのクオリティセンターで、お客様の声を聞くVOC室にいます。

 私どもには毎日のようにお客様の声が寄せられます。製品の安全性に関して皆様にご迷惑をおかけしたこともありまして、絶対に安全なものづくりをめざしています。その芽生えをいち早くキャッチしてそれを製造部門に伝えていくことが、現時点での私の主な仕事です。

 6月に、工場内のものづくりにおける絶対安全ということについて、松下電器には14のドメインがありまして私どもはそのなかの1ドメインですが、私はドメイン代表に選ばれました。

 何をやるかということですが、電気製品ですと、安全にまつわる計測が多いわけです。それから計測器の校正周期にしましても、それがものづくりにおける絶対安全を担保できるのか、という部分で関わってきます。松下の全事業場に、安全工程の管理責任者、JISでいう品質管理責任者、を安全に特化して任命をしていくということで進められています。

 安全にまつわる計測に関してのダミー管理の問題とか、計測器の誤差に関して、品質工学の考え方を取り入れていきたいと考えています。傾向管理、すなわち未然にそういうことが起こらない仕掛けをつくりなさいということをいわれています。メーカーとしては絶対安全な商品づくりに計測計量は欠かせないということです。

 また、有害物質不使用に関してもその責任者がきちんと見なさいということになっていますので、環境計量も関係しています。

 QCサークルとはちょっと違うのですが、研究所や技術センターとかあらゆる部門で、職域を超えた研究チームを組織しなさいということです。

 そういう意味では適正計量管理事業所の役割を、もっと認知度の高いものにしてやっていくというのが一つの方向かな、という気がします。

 2点目として、4年間ほど、中小企業にISO9001認証を取っていただくお手伝いをする仕事をやっていました。私どもの会社があります愛知県春日井市の中小企業がISO9001認証を取られるときに、補助金制度がありますのでその制度を利用していただくということで、コンサルティングをさせていただいていました。

 私自身、個人的にはいろいろな中小企業とおつきあいさせていただいて、ものづくりを知ることができて非常に勉強になりました。

 適正計量管理事業所は、大手企業はそのための人材も配置できますのでやっていけると思います。これに対してISO14001という環境マネジメントの規格の取得維持は、40人から50人くらいの規模の中小企業にとっては非常に負担になっています。大手企業の取得は一巡しましたので、もっと簡易版でよいという制度がやられています。環境カウンセラーが1日監査をして、後は定期的に報告書を提出すればよいというものです。

適正計量管理事業所の制度に中小企業向けの制度があれば普及し、認知度も向上する

 適正計量管理事業所の制度も、このような中小企業向けの制度があれば、認知度も向上すると思います。

 お客様の声としては、企業がつくっている品物が信頼できるという信頼感を得るために必要ですし、中小企業も、ものづくりをしているわけですから、供給先の大手企業がその中小企業の製品を安心して使えるということが必要です。このように、相互信頼が確立すれば、ものづくりの品質向上に貢献できると思います。

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