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はじめに


今回審議の背景

 平成11年12月の知的基盤整備特別委員会の審議会報告から、未だ1年余りしか経過していないが、この間に知的基盤整備を取り巻く状況が以下のように大きく変化したことから、その対応を図ることが求められており、再度、「知的基盤整備特別委員会」を開催するに至ったものである。

 

【知的基盤整備の全政府的な位 置付け】

 その第一は、昨年12月に知的基盤の整備に関し、「概ね平成22年(2010年)までに世界の最高である米国並の整備水準を目指す」ことが政府全体の方針として閣議決定がなされ、併せて、地質情報も知的基盤の整備に加えることが決定された。このため政府全体としての知的基盤整備における経済産業省の取り組みとその位置づけを改めて明確にすることが必要であり、また、効率的かつ効果的な知的基盤整備に必要な関係各省との連携も視野に入れることが求められている。

 

【初期の収集・集積の段階からより高次の整備とより良いサービスの展開へ】

 その第二には、我が国の知的基盤については、長い年月にわたる関係各位の努力により積み上げられてきて、特にここ数年の集中的、体系的取組みによりその進展は目覚しく、ストックとしては必ずしも十分とは言えないながらも核ができてきた。知的基盤は一定量を超えると俯瞰性、網羅性の効果により、広い意味での新たな発見やフロンティアの開拓にもつながるような可能性が高まることとなる。このため、今後の知的基盤の整備にあたっては、知的基盤の厚みを増しつつ、より高次の段階に向けた整備の方向を国際展開も同時に睨んで検討する必要がある。
 一方、これまで知的基盤として整備・蓄積されてきたデータ等については供給・提供できる段階に至っており*1、また、計量標準分野においては、計量法校正事業者認定制度(JCSS)*2の改正により、今後校正サービスの需要が大幅に増大することが予想される。さらに、1年後には、生物遺伝資源保存供給施設が完成し、生物遺伝資源の提供が開始される運びとなった。知的基盤の整備は、知的基盤の開発・蓄積のみならず、それに加えて供給・普及の段階へと移行してきている。これに伴って、供給・普及にあたっての料金設定を受益者負担の原則と公共性の観点から個々の場合について、考え方を整理することが必要となっている。
 また、政府資金による委託研究開発から派生した知的財産権の帰属について、従来は、すべて国に帰属することとなっていたが、現在は一定の条件の下、受託者に知的財産権を帰属させることが可能となっている。これを受けて、知的基盤の整備においても多くの民間企業・団体に委託して行われているが、かかる政府の政策転換を知的基盤整備の上でより効果的に活用するために、知的基盤整備における知的財産権の考え方を検討することが必要である。

 

【整備機関に係る行政改革の実施を受けた機動的業務展開の必要性】

 その第三は、行政改革に伴う独立行政法人の設立である。従来、通商産業省(現在、経済産業省)の知的基盤整備の大宗を担ってきた「工業技術院の研究所」及び「製品評価技術センター」がそれぞれ、本年4月から独立行政法人として経済産業省から独立した政策実施機関となった。
 これら政策実施機関に対して、独立行政法人通則法に基づき、経済産業大臣から4〜5年の中期目標が指示され、独立行政法人は目標達成のための中期計画を策定したところである。今後これに基づき各機関の創意工夫で機動的に実施していくことになるが、知的基盤については、2010年に向けての長期目標に基づき整備していくことが政府の方針であり、また技術革新の急速な進展に適時、適切に対応していく必要があることから、各分野ごとの整備の方向性、プライオリティの考え方をより明確化し適時に示すことにより、独立行政法人が中期目標・計画に基づきつつ創意と機動性を持って業務をダイナミックに展開していくことに資する必要がある。

    かかる知的基盤整傭を取り巻く状況変化を踏まえ、本委員会においては今後の知的基盤の整備及び普及の観点に立って、以下の諸点について審議を行うことに至った。

    まず、審議の前提として、知的基盤という概念が、新しくかつ広範なことから本審議における知的基盤の定義を明確化するとともにその取り扱う範囲を規定することが必要との認識に立って、知的基盤の定義と範囲を定め、それを前提として、

・世界最高水準を目指した整備の方向(整備のダイナミズムと主導的国際取り組み)
・供給料金、知的所有権、研究者の評価といった開発及び供給における共通ルールの策定
・計量標準、地質情報等各分野における知的基盤の整備・供給の詳細な進め方の諸点について検討を行った。

 

(注)本文中の*1、*2...は、参考資料1、参考資料2...を示す。

 

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