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日本計量新報 2017年7月30日 (3158号)

日本の重力値の新基準とハカリによる質量測定

日本の重力値の新基準を国土地理院が2017315日に公表した。日本の重力値の基準の更新は40年ぶりのことである。公表された「日本重力基準網2016JGSN2016)」は一般に「重力値地図」(重力マップ)と呼ばれており、ハカリなどの検定や定期検査あるいは調整のための校正にさいして、その地域の重力値を用いて補正される。

多くのハカリは重力値によって値が変動するので、どこで計っても同じ値になるように均す作業をしている。精密なコイルバネを使っていると重力値の異なる北海道と沖縄では北海道で1000gであるものは沖縄では999gとして表示される。この違いを補正するために「日本重力基準網 2016JGSN2016)」(「重力値地図」〔重力マップ〕)による重力値が用いられる。

g(グラム)の1000倍がkg(キログラム)であり、kg(キログラム)は質量の単位である。計量法における取引または証明に関係するハカリによる計量は質量の計量である。補正の措置をしなければ沖縄での計量は北海道より1000gに対して約1g軽くなる。10kgでは10g、100kgでは100g軽くなる。だから重力値で補正する。このことによって見掛けは質量の計測になる。

左右が上下に揺り動くヤジロベー式の天びんでは地域によって変動する重力値の影響を排除できる。質量の値が確かめられた分銅と計りたいモノとを釣り合わせているからだ。分銅と計りたいモノに、それぞれ同じだけの重力が作用するため地域による重力値の影響が除去されているのである。モノの質量を計るハカリとしての使用頻度としてはヤジロベー式の天びんは非常に少ない。

NHKアナウンサーが古文書を「こぶんしょ」の言った俳優のあとを受けて即座に「こもんじょ」という言葉を添えた。たいしたことではないのにご苦労なことだ。訂正された俳優の<RUBY CHAR="面子","めんつ">はどうなるのか。専門家が「ニュートリノの質量」と説明するとアナウンサーは「ニュートリノの重さ」と言いかえた。アナウンサーは何を考えたのか。教養からでた言葉なのか無知からでた言葉なのか。無知からでた言葉であることが明らかだった。

質量と重さ(重量)の区別はしにくいが、人の教養にかかわることだから知っておくとよい。重さ(重量)を質量の意味に使うためにおこる国際的混乱をさけるため1901年(明治34年)年にパリで開かれた国際度量衡総会で、「物体そのものを構成する物質の分量である質量(基本単位kg)」と、「質量と重力加速度の積に等しい重さ(重量)」とは異なることを決議した。日本からは国際度量衡委員の<RUBY CHAR="田中館愛橘","たなかだてあいきつ">とそのお供の2名が出席している。この区別の説明が質量と重さ(重量)の区別を明瞭にする。世間が重さと言っているもののほとんどは質量である。重さは場所によって変わる。月へ行くと6分の1になってしまう。宇宙船の中では0である。その人には不変な固有の量がある。それが質量としての体重である。「体重」は質量概念である。このように述べるのは数学教育の高田彰氏である。国際度量衡総会の決議は岩田重雄氏の文章による。質量とは「物体そのものを構成する物質の分量である」そして「そのものがもっている不変な固有の量」という高田彰氏が表現する。計量研究所が編纂した計測辞書や計測用語辞典では上のように説明している。

別の言葉で反復すると「質量は重さと混同される場合も多いが異なる概念である。物体の重さとは、その物体が受ける重力の大きさを表し、重力が異なる場所ではその重さは異なる。しかしその物体の質量は同じである」となる。

インターネット百科事典であるウィキペディア(Wikipedia)が質量の説明をしているから質量を理解しようとこのページを開いても、次のように書かれているからわからなくなってしまう。「物理学的には厳密には、動かし難さから定義される慣性質量(inertial mass)と、万有引力による重さの度合いとして定義される重力質量(gravitational  mass)の 2種類の定義があるが、現在の物理学では等価とされている。慣性質量と重力質量の等価性は、たとえば重力加速度が落下する物体によらず定まることから知ることができる。物体に働く重力は重力質量に比例するが、一方で重力加速度は重力を慣性質量で割ったものなので、重力質量と慣性質量は比例していることが分かる」。

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