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日本計量新報 2015年9月6日 (3071号)

課題から目をそらす者と計測の世界の大事な課題

「理科離れ」「科学離れ」と、かしましい。これは最近おきたことのように思われているが、昔からあったことだ。中等教育、高等教育に進む者の割合は戦前の学校制度のもとでは1割ほどであった。高等教育にいたっては2%あったかどうかだ。能力があるかないかは別にして、ごく限られた者が、中等教育と高等教育を受けていた。旧制の高等学校と帝国大学の定員は同じであったから、選り好みしなければ先の教育機関に進むことができた。旧制の高等学校入学は難関であり、復路として私立の大学や、ほかに専門学校があった。
 戦前ではエリートになるには旧制の高等学校に進む必要があった。戦後は米軍によって日本の教育制度が打ち壊された。いまでは新制の高等学校を通過するのが普通になり、新制の大学には希望すればどこかに入れる。高校を出る人と大学入学の定員が同じかそれより多くなっている。試験問題を解く能力の状態で最上級にあるのが東京大学だ。優秀なはずの東大卒であるが天下の東芝の社内役員に東大卒はおらず幅をきかせているのは早慶であり、ほかに一橋と東北大などであった。中央官庁は東大卒が動かしているといってよい。その日本の経済成長が止まってしまうとこの人たちは何をしていたのかということになる。20年先、50年先の日本の国家経営をどうするのかとなると国家公務員幹部の能力は怪しい。
 優秀なはずの東工大の入学者は、大学入試センター試験で8割9割を正解する。それが入学して半年経つと、5割6割しか解けない者が少なからず出てくる。この者たちの回答能力は中堅私大程度か、それ以下になる。もっとも、中堅私大の入学者も同じような状態を呈することが想像される。世のなかで活躍する人々に東大卒は多い。それぞれの分野で優秀な業績をあげる能力を持った人が東大卒にはいる。その一方で、世のなかに出ると普通の人並みか、それ以下の働きしかできない東大卒も少なくない。試験の問題を解く能力を極度に高めただけの人、そして、自分で考えて行動していく能力が極度に低い人が東大卒にはいる。あるいは、有名大学には多くいる。同じように、大学卒には多くいる。となると、大学卒をどのように見るかという問題が浮かんでくる。
 東大卒を取り上げて学校の試験回答能力のことを述べてきた。与えられたことを示された手順どおりに処理することだけができるという状態の人間に日本人はなっているのではないか。さまざまな仕事の分野において課題を捕らえてそれに挑み、課題を見事に処理することができる人間になることが大事だ。人によっては課題をみないどころか、わざわざ目をそらし避けてとおる。暗愚な者になると課題そのものに気がつかない。このようなことが起きている。身の回りの職場にそれがあり、計測の世界にも同じことがある。計測の世界の大事な課題のことはあえて言わない。広くは日本という国にそれがある。膨らむ社会保障費を借金政策で誤魔化すことがつづいている。国土開発計画は21世紀末に日本の人口が7千万人になることを前提に立てられている。人口はそれよりも少なくなるかもしれない。高速鉄道、高速道路網を維持するのに必要な人の数がなくなることが予測される。

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