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日本計量新報 2015年5月17日 (3056号)

計量先進国と計量模範国としての日本の計量行政の継続

計量法は計量の単位を定め、その単位の精密さが世のなかの求めに応じられる体制を敷くこと、そして国民生活が安定するように特定の部門を中心に計量の取引に不審がもたれないような体制を取ること、である。これを語る言葉はいくとおりかあって細部を追加したくなるかも知れないが大筋はこのようなことだ。計量の単位のことについていえば国によって単位の呼称が異なり、単位の基準が違っていれば学術文化面でも経済取引の面でも困る。フランス革命の以前の西洋の国々は上のようなことであった。メートル法はフランスがつくりだした計量単位の国際規格であり、現代の国際社会はこれを基本にしている。フランスのメートル法の創出とその推奨は単純に科学的見地によるものではなく、フランスの威信を国際と国内に示す意図があった。この企画戦略をその後、ISOという形でとっているのであるが、本質の意義と規模とでは比べることが笑止なほどにメートル法は画期であった。
 地方計量行政の大部分が機関委任事務から自治事務になったのは十数年前のことである。地方分権という名目の推進の時流のもとでのことあった。電気、ガス、水道といった国民生活に密着した計量器の検定が、指定製造事業者制度の創設によって「メーカー自己検定」に移行した。ガソリン計量器、タクシーメーターは国民生活に寄り添った状態で使われており、この計量器の精密さが確保され、料金が誤魔化されてはいないかという不安を解消するために地方公共団体は計量器の精度の担保に大きく関与している。
 ハカリの場合には製造にともなう検定は、その多くが「メーカー自己検定」方式でおこなわれている。使用中のハカリは2年に1度の定期検査をするしくみとなっており、これを実施する責任は地方公共団体にある。その定期検査は、指定定期検査機関制度によって計量協会などの一般社団法人、公益社団法人や民間法人(企業)が、役所から指定されて、実施されている。この方式ですべてのハカリの定期検査が実施されているということではないが、その実施割合は年を追うごとに高まっている。定期検査に代わる計量士による代検査もおこなわれている。地方公共団体がその地域の計量士の団体などに定期検査の業務を委託して実施することが一般的になされている。計量法の適正計量事業者制度はその法的内容として、事業所内のハカリの管理を所定の方式にしたがって実施すれば、それが定期検査に代わる、という規定になっており、百貨店、スーパー、大手の製造業などが、この適正計量事業者の指定を受けている。
 計量単位の定め、単位実現のため、あるいはそのもとへの遡及のしくみが技術と制度の両面で確保されていることは、科学と技術の振興のために欠くことができない。計量法の定めによって検定され精密さが必要な度合いに確保された計量器を使って商業分野での取引がおこなわれること、そしてハカリの場合には検定時の許容器差の2倍の器差で定期検査が2年に1度実施されていること、の2つは計量法が国民から付託された約束事である。先進国、文明国が当たり前のように実施している計量法と計量行政であるから、日本はその模範となるように今後とも計量大国としての伝統を継続していくことになる。

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