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日本計量新報 2014年5月4日 (3009号)

駅前商店街の衰亡とホームセンターの勃興

中央高速道路の甲府盆地は4月中旬には桃の花がさかんに咲いて桃色に染まる。3月の豪雪によって8割ほどの果樹栽培のハウスが壊れたことが嘘のようである。安倍晋三首相はこの時期に甲府盆地の果樹栽培農家を訪れて被害からの復興助策を打ち出すことを再度明言した。安倍首相と面会した農業者は後継者が農業をつづけることができる農業政策を強く要望したことをテレビとラジオは取り上げた。葡萄栽培も桃栽培も大きな規模で営農している人でも単純に自営できない状態にある。父ちゃんは会社に勤めにでて、爺ちゃん、婆ちゃん、母ちゃんが、畑に出て働くというのが普通の状態である。桃の花が咲いて華やかにみえる果樹栽培農家の営農実態は、安倍首相が取り上げる一部の成功者とは離れている。
 桜と桃とが一斉に咲いた大雪被害のこの年に、日本三大桜の一つとされている山梨県北杜市武川町山高にある実相寺内の樹齢1500余年の淡墨桜「山高神代桜」は、満開の前後2週間にバスツアーの観光客など大勢が押しかける。この桜が有名になったのはこの10年ほどのことであり、押し寄せる観光客に対応するために寺の周囲の農地が駐車場として整備された。1台500円の駐車料金で2週間ほど運営することと、農業による収入が天びんにかけられているのである。
 実相寺の最寄り駅は甲斐駒ヶ岳への登山駅の日野春であり、その先は長坂だ。白い花と赤い花と桃色の花と黄色い花が真っ盛りの長坂駅前付近の商店街は見事なまでのシャッター通りになっていた。八百屋、魚屋、洋品屋、金物屋などが軒をつらねて営業していた商店街が崩壊している。付近にいくつもできているスーパーマーケット、ホームセンター、コンビニエンス・ストアなどで買い物をするようになったためである。車に乗って郊外に出ていくために、駅前商店街がさびれていく。
 金物屋で売られていたサシ・マス・ハカリが、ホームセンターでの販売に切り替わった。大きな街で営みをしていた度量衡店は、地域性がよければマンション経営に転換している。変化がおこることはある程度はわかっていても、変化に対応する有効な手立てができる人は少ない。ゆるやかに変わっていく状況には気づきにくい。少しずつ上がる温度にやがては茹でガエルとは本当のことかどうかわかりにくいが、シャッターが閉まっている駅前商店街をみているとまさしく茹でガエルを想起する。しかしまた「国破れて山河あり」ということで、山や川の自然はもとのままの姿で営みをつづけていて、その様子をみると懐かしさがこみ上げてくる。春に咲く桜の花と桃の花などに刺激されて、人もまた元気をだそう。

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