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日本計量新報 2013年10月20日 (2984号)

日本がかかえる人口減少・高齢化、財政赤字解消、デフレ克服の課題

日本の製造業が海外生産の割合を高めている。自動車のトヨタはすでに海外生産比率が5割を超え、ほかの自動車会社もこの傾向が顕著だ。製造業の生産の割合の高まりとならんで進行しているのが部品の海外からの調達である。自動車産業などの第2次産業の海外生産などの比率の高まるなか、農業、林業、漁業、鉱業といった第1次産業の衰退が著しく、農山村の過疎化が進行している。情報通信業、金融業、運輸業、販売業、対人サービス業などの無形財を取り扱う第3次産業が経済に占める比率を高めている。水産加工のように天然資源を元に加工して食品を製造する業種は製造業に分類され、第1次産業には含まれない。石巻市の水産加工施設などの津波被害は第2次産業の施設などの被害であり、ほかの地域の津波被害も多くは第2次産業の被害であった。
 県庁所在地や札幌市、仙台市、名古屋市、広島市、高松市、金沢市、福岡市などの都市にビルが林立して、都市空間をつくるのは第3次産業に移行している日本の経済を映しているためだ。東京都、大阪府、京都府などの中心部の都市化は経済の第3次産業化の象徴である。第3次産業にはコンビニエンス・ストアなど小売り、飲食業ほかが含まれ、この分野では労働賃金の低さが目立つ。経済の中心が第3次産業に移行しているなか人の生活の向上は思うに任せない。情報通信業などの情報や知識を取り扱う産業を第4次産業あるいは第5次産業といい、農業や水産業などの第1次産業が食品加工・流通販売にも業務展開している経営形態を第6次産業ということがある。農業のブランド化、消費者への直接販売、レストランの経営などのことを指すようで、安倍首相は日本の農業と水産業は6次産業化によって高収益構造になると述べる。
 産業の高次元への移行は、1905年生まれのイギリス出身の経済学者コーリン・グラント・クラークがその分類とともに提唱した。1766年生まれのイギリス出身の経済学者トマス・ロバート・マルサスは、幾何級数的に増加する人口と算術級数的に増加する食糧の差により人口過剰、すなわち貧困が発生するのは必然であり、社会制度の改良では回避され得ない」(人口の増加が生活資源を生産する土地の能力よりも大きいと主張し、人口は制限されなければ幾何級数的に増加するが生活資源は算術級数的にしか増加しない)と提唱した。しかし、現代の日本が対応しなければならない課題は、減ることが必然の人口問題にどのように対応するか、年金制度や社会保障制度と財政赤字の解消など税政策などの社会政策の舵の取り方、日本の産業のあり方を決める産業政策や経済政策をどうするか、デフレの解消に足がかりがついたと考えられるなかで、この後の対応をどうするか、などである。
 人口は1872(明治5)年に3300万人だった。1919年(大正8)年に5700万人になり、1947(昭和22)年に7800万人、2011(平成23)年10月1日時点での日本人の人口は1億2618万人である。厚生労働省の日本人口推移推計では「近年横ばいであり、人口減少局面を迎えている。2060年には総人口が9000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になる」とのことである。
 財政赤字の解消策は消費税しかないと10%への消費税増税を首相就任直前に民主党の菅直人氏が述べた。この後に首相になった野田佳彦氏は10%消費税の法案を自民党などと一緒になって通した。菅氏、野田氏ともに財務大臣であったので、財務官僚にこってりと財政危機を聞かされ、対策は消費税増税しかないと思わせられていたようだ。公約破りの民主党は愛想をつかされ、政権を自民党の安倍晋三氏に取られる。総理大臣経験者がどうであるかは別にして、現代の国会議員には自ら考えるということよりも人から教えられれば覚えるといった人々が増えており、これをもって国会議員のサラリーマン現象というようだ。教えられれば覚えることができる人々が増えたことの確認としては、入学しにくい学校やかっこう良い職業、かっこう良い会社の職歴をもつ人々が政党の国会議員候補者公募で選ばれ、その人々を選挙民が当選させていることである。
 安倍内閣とその閣僚たちが自分で描いた日本像によるものなのか、官僚やほかの政策ブレーンがつくりだした像なのか、安倍首相の単純な物言いは何かの教科書によると推測する。農業政策の一つとして1次産業である農業を6次産業として推進することを一部の事例をあげて声高に主張する。国があっちを向けといってそのとおりに動いた農家で成功した事例は少ない。米の増産の八郎潟の干拓事業、酪農、ミカン栽培への切り替えとオレンジ自由化ほかである。原子力発電プラント輸出を語る安倍首相の「日本の原発は安全である」という言葉は、足下のフクシマの実際を知っているのか疑わしい。現在も県庁所在地福島市の放射線濃度は近隣に比べて高い。行政は産業界に補助金などを用意してあれこれの方向を推奨するがその政策がうまくいった記憶は薄い。

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