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日本計量新報 2012年3月18日 (2909号)

技術や制度の変化により発生した異常現象

 インターネット利用が普通になってしまった。パソコンでインターネットの世界に入っていくという方式から、携帯電話などにインターネットを利用するためのパソコンの機能が盛り込まれるなど、インターネット利用の利便性が高まっている。手元にこうした機器があれば電話番号を調べるのに104番に問い合わせなくてよい。銀行などの諸業務もこうした機器で用が足り、コンビニは普通の人が日常使う銀行の機能のほとんどを備えるようになった。こうした業務が銀行窓口だけで行われていたころには、会計担当の朝一番の業務は銀行に行って通帳の記帳をすることだった。このような業務をインターネットがとって代わったことによってどれだけの業務合理化が進行したかを、金銭に換算して考えることはあまりない。

 電子技術の発展とその典型でもあるインターネットの普及によって、新しく生まれる産業がある一方で、社会的に用をなさなくなった業種や職業もある。手に職を持てば一生食いっぱぐれなしということで、旋盤工のような職業があったがNC旋盤を使えない職人はご用済みにされてしまった。技術革新によって消えていくものと新しく生まれてくるものを的確に予測できる能力があれば、あるいは株式投資に成功するかも知れない。

 自動車の修理塗装をする場合に、修理工場とメーカーがインターネット通信で結ばれて、指定の塗色をつくりだすために、メーカーから発せられる調合情報にしたがって、高精度ハカリで幾種類かの元塗料を混ぜ合わせるということが行われている。これは質量計(ハカリ)の世界の出来事の一つである。この作業をするためにはハカリが所定の精密さで機能しなければならない。しかし、ハカリの世界には、どうした事情か性能表示は見せかけであり、実際のハカリとしての性能は実現できるはずの精密さより一桁も二桁も悪いという場合も、事実としてある。表記した性能を確実に実現することがハカリをはじめとする計量計測機器の使命であるのだが、ここに偽りが混じり込むことがあるから、世の中はややこしくなる。

 計量の世界の一つである計量行政は、計量法の変更によって大きな影響を受ける。技術進歩や世情を反映して、ハカリや電力量計などいくつかの計量器(特定計量器)には、メーカー自己検定と表現してよい指定製造事業者制度がつくられた。計量法に基づいてハカリなどの検定を実施していた計量検定所など地方公共団体の計量事務が大幅に削減された。似たような制度である指定定期機関制度によって民間団体や株式会社の組織が役所の指定を受けることによって、ハカリの定期検査業務を「実施」できることになった。この制度を取り入れて定期検査をすることになったために地方公共団体の関連の職員が要らなくなったとして、行政組織を度を超えて縮減している不届者がいる。さらなる不届が発生している。役所以外はできないはずのハカリなどの検定を無資格組織が実施していることである。計量法の規制内容の緩和を良いことに、守るべき事柄を守る意識が減じている状況に輪を掛けたような違法行為が横行する。これを技術革新や世相の反映の一つと見ていては、この世も末になる。

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