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日本計量新報 2008年6月22日 (2729号)

一般の計測需要家からは計測のことは何も見えていない

自分は計量計測の仕事で頑張っているんだと、どんなに大きな声をだしてもその仕事を利用する側には伝わらない。特に大衆的な計量計測機器の需要家にとっては、その計測機器に接する機会がまれであるからその存在を知らないことが多い。
 需要家の側からはみえない仕事をみえるようにするにはどうしたらよいか。かつては紙に「活字」で文章を書き、本にして、これを需要家に送り届けることが宣伝・広報であった。情報伝達にはこのほかにテレビやラジオの放送メディアがあって、計量計測機器メーカーが野球のナイター中継のスポンサーになっていたこともあった。
 そうした情報伝達や情報取得の方法に大変革をおこしたのがインターネットである。企業業務に携わる人々も一般に個人生活をおくる人々もパソコンを利用することが普通になっていて、インターネットを図書館やその他の知識の倉庫として利用するという社会の仕組みができあがっている。そしてその状況はこれからもさらに大きく進展するだろう。インターネットの世界、つまり情報世界にそのような状況ができあがっているので、この世界にむけた情報発信をしていないとその人やその企業の仕事が存在しないのと同じになってしまう。
 企業で仕事をしていると、そこには会議の場があり顧客からの電話への対応があることから、音も姿も存在も雰囲気もあるこのようなことが世間に伝わっていると思いがちである。しかし、自分たちがしている仕事の利用者である顧客の側からは、そうした雰囲気はみえない。その場にある音も風も映像も顧客にはみえないのである。
 その仕事を伝えるのが、その企業や人のホームページと呼ばれるインターネットのwebサイトである。どのような仕事をしても、その仕事の内容や仕事の結果としての商品の内容をwebサイトに情報として掲載しなければ顧客には伝わらない。インターネットが社会の重要な情報インフラとなっている時代では、企業情報、営業情報、製品情報、サービス情報その他さまざまな情報はwebサイトに盛り込まれることによって情報発信され、顧客に伝わることになる。まずは情報の盛り込み、これがあってこそすべてが始まる。
 そのようにして社会に提供される計量計測情報のどのような内容や部分にアクセスがあるかというと、計量計測機器(サービスを含む)を買うため(使うため)のものが90%である。企業のことを調べる、計量制度のことを調べるなどといった部分への情報アクセスは10%ほどだ。何度調査を実施して、都度検証しても結果は変わらない。
 この世界のなかにいる人々は、この世界をともすると社会制度としての計量制度から考えがちである。計量計測の社会制度と計量計測機器の供給・販売を内容とするのが計量の世界であり、社会構造としては計量制度があってこその計量計測機器であり、そのサービスであるということになるのは当然である。
 しかし、社会にとっては、必要な計量計測機器を使うことにこそ意味があり、計量制度はそれをそっとしっかりと支えている仕組みであるので意識はこちらには注がれない。計量器を使う側のこの心理と行動に間違いはない。ただし、例えば計量販売などの取り引きに用いるハカリ(質量計)は検定付きであって2年に1度の定期検査を必要とするという計量制度上定められた使い方の説明が良くなされなければならず、このことは計量器の取扱説明の文章として記載されている。読んでも意味が分からなかったり、読まないということが起こりがちだから、ここに何らかの問題がないとも言い切れない。
 計量器を使用するために購買する側からは計量制度のことはさほど意識に上らないのだから、人が意識しなくても計量器の性能が確保されるように制度の運営をしっかりしておかなくてはならない。計量制度の維持運営は社会を円滑に機能させるという大きな役割があり、そのためにはそこそこの費用をかけることになる。これが社会の円滑な運営に欠かせない計量制度が必要とする社会コストであり、政府もその他の行政機関も相当の認識をしなくてはならない。政府や地方公共団体などの行政機関が一般の計量器の使用者と同じように計量制度への認識を欠くと、社会は混乱し日本の社会発展の大きな妨げになる。政府や地方公共団体の計量制度へのしっかりした認識が求められる。計量制度の維持運営を投げ捨てている地方公共団体が幾つかみられるようになったのは残念であり、このことが全国に広がると応仁の乱のような大きな社会混乱が生じ、戦国の世の中に突入して多大の損失を被ることになる。痴呆のようになった地方公共団体から、あるべき姿の計量制度と計量行政を守り維持して行かなくてはならない逆行の時代が今である。計量行政がらみの音、姿、雰囲気が情報発信されなくなった地方公共団体では、計量行政の崩壊現象が起きていると考えてほぼ間違いはない。


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