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日本計量新報 2008年5月4日 (2722号)

JCSS認定事業者の校正サービス事業を後押しするのが計量政策

技術その他の認定とか認証とかいうことが大流行している。品質マネジメント規格のISO9000とか環境のISO14000の認証取得は、企業が社会に向けて出していなければならない看板と考えているようで、どこもかしこも9000とか14000とかの文字で溢れている。
 そうした状況下にもかかわらず、ジェット戦闘機の電気系統の配線間違いによる初歩的なミスが原因となって、飛べずに落ちてしまうということが起きた。また、意図的な悪意から食品表示その他の偽装があれば、9000とか14000とかの看板は実際には意味をもたなくなってしまう。ISO9000とかISO14000の規格が万全であり、これによって企業も社会も良くなると考えるのは勘違いである。
 同じ認定であっても、計測分野の計量法の登録校正事業者については、儲けが上がる事業にはなっていないものの、ISO9000やISO14000よりはずっとましである、という感想を述べるのは、これらの制度を利用している計測企業である。計測の精密度の連鎖としての計測のトレーサビリティーは、どのような計測領域でも確保されていなければならず、実際に困難がともなう分野であっても、工夫してトレーサビリティーを確保している。
 計測の国際標準と国家標準の流れの一つは、計量法上で実施される計量器の検定に関わる分野であり、この分野では基準器制度に基づく「基準器」が用いられている。その基準器をもつことができる者は計量器の検定に関わる、計量器製造事業者、同修理事業者、計量士と検定検査に関係する役所などである。基準器は、計量器の検定などに関わることに使用が制限されており、一般の計測標準の精密度を連鎖的に証明するトレーサビリティーに使用することがあってはならない。この原則は、役所の会議で確認されていることである。
 そのような建前は良いのだが、その建前を通すということになると、計量法が推奨する計量標準供給の登録事業者(JCSS登録事業者)の校正サービスを受けることになる。この方面の計測標準器を用いるためには大きな費用が要る。また、計測標準の領域が拡大し、地域的な広がりも見せている一方で、社会全体が求める校正サービスに対して、現在利用可能なJCSS校正事業者の数が十分でないことも、利用の妨げになっている。
 計量標準供給の登録事業者(JCSS登録事業者)の数が増えないのは、この校正サービス事業が採算にのるだけの内容をもっていないこと、登録する側に建前主義が横溢していて、基準器を生産するのと同じ作業条件・環境条件ではJCSS登録事業者として認めないということがある。JCSS登録事業者の数を増やさないでいてJCSS登録事業者の校正サービスを受けるようにというのは、この制度を推進する側の責任を棚上げにしたご都合主義である。ISO9000やISO14000が看板として良く普及しているのにならって、JCSS登録事業者をもっと普及すべく、無用な建前を取り払うことが必要である。
 計測標準の精密度が正しく連鎖している証明としてのトレーサビリティーが、ISO9000やISO14000認証取得事業所でもっと手軽にかつ確実に確保されるためにも、求められる計量標準が安く大量に供給される体制をつくりあげることが大事である。
 トレーサビリティーは、大きな視点でとらえると計量管理である。計量管理は同時に品質管理と連動する。計量のトレーサビリティーが真っ当に確保されていなければ、品質は宙に浮く。実際に、計量標準供給の登録事業者(JCSS登録事業者)の校正サービス活動が旺盛に行われる状況下においては、品質は大きく向上する。
 計測関係事業者が計量標準供給の登録事業者(JCSS登録事業者)として、その資格のもとで校正サービス事業をしたいという意欲を促進するために、総合的な行政施策を構築することは、日本を繁栄させることに役立つ。


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