What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク
2007年11月  4日(2698号)  11日(2699号) 18日(2700号)  25日(2701号)
社説TOP

日本計量新報 2007年11月11日 (2699号)

地方計量行政は機関も職員も疲弊しきっている

学校の学級名簿や在校生名簿がつくられないことがよくあり、これは個人情報保護法への抵触を恐れてなされている。NHKラジオに個人情報保護法をよく知る人が出ていてこれは学校側の対応の誤りであり、熱さに懲りてなますを吹くにたとえられるということであった。
 計量の世界でも開催が事前に公表されてその団体が一般会員ほかの参加を募る会議への出席者名簿を出さないことがときどき見受けられる。会議の目的に副次的に交流という内容をもつ場合にはいつもつくられていた参加者名簿が欠落すると、何のために集まったのかとキョトンとさせられる。これは公の団体の公の会議に参加している公務員への配慮なのかどうかわからないが馬鹿げたことである。
 個人情報保護法とは別のことであるが、計量行政に従事する公務員が事務所を同じ場所に有する「計量思想普及」事業の協力者である計量協会の会議に出ることさえはばかる傾向がある。ある県では新年会などにはでない一方、ある県では知事や市長や商工労働部長が酒食を伴う新年会にも出席している。
 地方公共団体の計量行政機関職員が計量協会などの公式の会議に出席しないのはいいとして、その行政実務の内容をこの30年の単位で比較するととんでもないことが起こっている。質量計(はかり)の定期検査の実務を計量協会などの指定定期検査機関に指定してここに行わせているとはいうものの、全体として行政職員の著しい縮小とそれにともなう知識技能の消失を含めて計量行政事務の内容の低下・劣化は明らかである。計量行政が機関委任事務から自治事務に闇討ち的に切り替えられてからこの傾向が顕著になっていて、地方公共団体は一番悪い行政事例を基準にしてそこを目指して皆で改悪を続けている。現在は30年前の計量行政職員数の半分以下どころか3分の1あるいは4分の1になっている。
 法令遵守ということでコンプライアンスが叫ばれ食品関係などでは製造日を誤魔化している事例などさまざまな悪事が摘発されている。計量法を施行すべき地方公共団体の計量行政が法律の定めにある質量計(はかり)の定期検査を真っ当に実施できないほどに組織・人員・財政を削減している状況では、この方面で法的適合性や法令遵守に抵触するようになるのではないかと危ぶまれる。とくに県や市の計量行政が質量計(はかり)の定期検査を実施する体制が取れていない状況までに手を抜かれている状況は、県民、市民ならびに日本国民に対して計量の安全の確保の義務を放棄しているのと同じであり、存在する定期検査対象の質量計(はかり)の把握のための台帳の未整備とそこから発生する検査漏れ(脱検)が恒常的になっていれば、それは未必の故意であり同時にこの時点で公序良俗にも反することになる。
 突けば決壊し駄目になるほどに疲弊している地方公共団体の計量行政はこれ以上後退してはならない。自治事務では実施できないのが検定・検査を主な内容とする計量行政であるから、機関委任事務に相当する実施施策をすべきである。


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.