What's New計量新報記事計量計測データバンクOther Data会社概要出版図書案内リンク
2007年7月  1日(2681号)  8日(2682号)  15日(2683号)  22日(2684号)  29日(2685号)
社説TOP

日本計量新報 2007年7月22日 (2684号)

計測とはあることを知ってそれに対応する行動を取ること

ラーメンのスープの味を管理するのに屈折計を応用した糖度計が使われている。蕎麦(ソバ)や饂飩(ウドン)のつゆのためには比重計が使われている。ラーメンスープや蕎麦つゆの達人が使っているかどうかは不明ではあるけれど、糖度計と比重計は実際によく使われていて、ラーメンの有名チェーン店では糖度計でスープを管理している。ラーメンもソバも麺の味とスープやつゆの味は重ね合わされて全体の味を決めるものであり、とくにチェーン店はあの店のあの味ということが出来上がっているので別の味を提供することはできない。味がその店のブランドと一体になっているからである。ここで使われる糖度計と比重計は人の味覚と対になっている。糖度計や比重計は糖度と比重しか示さないので別の要素が加わって糖度と比重の同じ値を指しても味が同じということにはらならいからである。ここで行われている測定は精密さの度合いとしては特別に高度なものではない。人の勘との併用で高度なことをしているのである。
 計測器はある定まった計測目的をもってつくられて商品化されている。実際の測定はその計測器の目的とは違った使い方がされることが少なくない。計測器は計測目的に応じて個別対応型のオーダーメイドであることが望ましいのに、需要の規模が価格を決めることもあってそのようにはなっていない。だから計測の需要家は帯に短しタスキに長しの計測器をだましだまし使っていることが多い。
 計測には目的がある。計測の目的は比べたりすることでさまざまな状態を知ることである。知ることでそれに対応する行動を取ることが計測の目的である。しかし計測器はそれ自体に計測目的が固着している。固着した計測目的に縛り付けられずに計測の需要家は計測器を利用することで目的にそったよい計測を実現して行動を対応させることができる。
 精密さが高いだけが計測器の価値ではない。これまで計れなかった要素などを計ることを可能にすることを通じて計測器産業は大きく発展してきた。さまざまな要素を計ってそれとの比例関係などにある別の要素を表示することも行われてきた。電子センサーの発達、コンピュータ技術とインターネット技術や社会のインフラへの巧みな組み込みを利用することがこれからの計測技術では大いに行われることになる。計測はある目的をもって行われるのであり、それはあることを知ってそれに対応する行動を取ることである。このことをラーメンのスープの糖度計による管理、蕎麦つゆの比重計による管理がよく言いあらわしている。


記事目次本文一覧
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.