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100周年は200周年への100年の計

大和製衡(株) 川西勝三社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2015年10月11日 (3076号)2面掲載

圧倒的な競争力をつける(1)

ーー大和製衡の企業活動の方向性をご説明ください。
川西勝三氏

原則は変わらない

われわれの事業展開の原則は、国際的に計量計測関連の企業も数多くあり、そのなかで大和製衡という企業の特長を活かし、世のなかに貢献していくことであり、これを経営ビジョンとしています。

圧倒的なユーザー満足の提供めざす

この特長が企業の競争力と顧客の創造になるのですが、競争力というものは、ただ企業間技術の評価の比較ではなく、ユーザーに対するメリットの差であり、それは自分よがり、自己満足ではダメで企業の成長に繋がりません。
 大和製衡は技術革新による圧倒的な競争力をつけることを目標にしていますが、いいかえると、これは技術革新により圧倒的なユーザーメリットの革新を提供するということです。
 そして、この圧倒的なユーザーメリットの革新とは、あいまい・概念的・アナログ的ではなく、デジタル的に数値で革新変化を表さなければなりません。

残りの5%に95%の力注ぐ

わたしはかつて、事業経営で非常に尊敬できる同業他社の前社長に教えを請うことがありました。その方はそのときにソニーの話をされ、一般に商品づくりにおいては、完成度が95%ぐらいで満足して商品化されるが、ソニーは違う。最後の見えない部分5%へのこだわりがある。この5%に95%分の努力を注いでいる、それがソニーだという話をされました。
 たしかに一流ブランドとされている製品の最後の5%へのこだわりは、むしろ目立たない部分でそのこだわりに配慮した技術イコール完成度です。
 これはサービス産業で見てみるとよくわかるかもしれませんね。料理屋さんを例にとると、味が一流、これは95%の部分です。あとは、カウンターの内側です。厨房での包丁などのしまい方、手入れのしかたや、見えないところへの掃除の行き届きなどが残りのこだわりの5%です。
 われわれの製品でいえば、一見ユーザーが気がつかないところまで技術的配慮をしていくということで「世の単位を守る」という大事な仕事をしているわけですから、完成度100%の事業をしていく必要があります。

100%だけでよいのか

しかし、わたしは今、はたして100%だけでよいのかということを考え、革新技術とは何か、たしかに100%は、製品に対するこだわりの意識と高い目標がなければたどり着けないものですが、逆に言えば、誰でもたどり着けるものです。
 しかし、われわれがめざしているものは、他社が追いつけない絶対的競争力、つまり絶対的なユーザーメリットです。100%は、確かに大変なことではありますが、心がけ次第で誰でもが到達できるものです。
 現実の商品の移り変わりを見てみればそれが実感でき、電卓や液晶、半導体などは当初はその技術の開発企業が圧倒的な力を持っていました。しかし、これらはわずか1〜2年で時を経ずに汎用的な技術になってしまい、だれでも100%の製品をつくれるようになってしまったのです。
 今は、液晶テレビ業界、ゲームソフト業界を見ても業界の絵図が1年ごとに入れ替わっているという、恐ろしい状況です。日本の家電メーカーが陥った苦境はここにありましたね。わたしが100%だけではダメだと考える基礎は、この現実にあります。

100%に満足せず、もっと上をめざす

他社がまねできない150%、200%のユーザー満足を求めていかないと、企業の継続性はキープできません。それには、100%で満足しない、100%ではダメだという自分に妥協しない姿勢が求められます。
 それには経営者自身が技術の革新に手本を示す。そうでなければ、これまでの体質・風土は改革できません。
 わたしは事業家でありながら、音楽や、アスリートとしてスポーツに取り組んでいます。音楽の世界で、プロに混じってオーケストラで演奏することになると、アマチュアの座に安住してはおられません。スポーツの馬術競技の世界でも、わたしが対戦する相手は日本のトッププロの人たちで、そのなかでトップを狙おうとしたら、アマチュアのなかで100%の力を発揮しただけではだめです。アスリートの世界では、真の最高を狙う、自分に妥協しない、というこだわりの追求が必要で、自己能力の最高をビジョンとすることは事業の世界よりもはるかに競争はシビアです。

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