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TUDのトルク機器をグローバル展開

(株)東日製作所 辻修代表取締役社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2014年5月25日 (3011号)2面掲載

テクニカルセンターをオープン(2)

1階に校正室、測定室、製品試験室を設備

建築面積は419.84m2、延べ床面積は756.98m2の鉄骨造地上2階建になります。
 2階は、事務所、多目的室、会議室、工場の従業員のための食堂等になります。
 1階が、校正室、測定室、製品試験室になります。
 製品試験室には、製品耐久試験機を7台設置します。耐久試験の動作をカメラでモニタリングできるようにして2階の事務所から管理できるようにします。

三次元測定機、X線検査装置を設置

測定室には、三次元測定機を設置します。X線検査装置も入れます。これは外からは見えないトルクレンチの内部の検査に使います。これまでは、外部の試験所などで検査していましたが、X線検査装置の導入で自由に検査できることになります。この装置は特殊仕様で画像処理により立体的に被検査物を見ることができる最新の装置です。

JCSS校正を実施

校正室では、トルクの第2次階層のJCSS校正を実施します。当社のトルク標準室は、2011年11月に、トルクの第2次階層で、国内トルク機器校正事業者として初めてJCSSに登録しています。国際MRAに対応しています。
 JCSS校正の対象はトルクレンチテスタで、対象トルク範囲は10N・m〜1000N・mです。この範囲以外は、通常の校正になります。
 現在、第1次階層(参照用トルクレンチ)のJCSS取得も視野に入れて動き始めているところです。なるべく早い時期に取得したいと思っています。

トップメーカーとしての責務

東日製作所は、トルクレンチのシェアでは国内でトップです。したがって、メーカーとしてトルクのトレーサビリティを確保する責任を感じています。責務であると思っています。
 ですからまず、第2次階層のJCSSを取得して実績を積み、次のステップとして第1次階層をしっかり見据えていくということです。

現場で役立つトレーサビリティを

ただ、私どもは校正も実際に現場で役に立つことを第一に考えています。ですから、トルクのトレーサビリティをお客様に理解していただくために説明図(トレーサビリティ体系図)をトルクハンドブックなどに掲載していますが、この説明図は逆三角形になっています。現場で使うトルクレンチを一番上に置いて、特定2次標準器やトルク標準機が下にきています。当社独自の表記ですが、私どもの現場第一という考え方を示しています。

太陽光パネルを設置

テクニカルセンターの屋上には、太陽光(ソーラー)パネルを120枚設置します。すでに、甲府工場の第2工場棟と製品倉庫の屋根に太陽光パネルを設置しています。テクニカルセンターに新たに設置するパネルと合わせると、甲府工場には1008枚の太陽光パネルが設置されることになります。年間計画総発電量は289000kwhになります。

新製品を次々発売

ーー旺盛に製品開発をされていますね。

ユーザーフレンドリーな製品を開発

新製品を数多く開発して発売しています。たとえば3月24日に発売したデジタルトルクレンチテスタ「TCC2シリーズ」も海外を中心に引き合いをいただいています。
 デザインがよくなったというお褒めの声もいただきました。ユーザーが使いやすいものをという考えで、表示部を手で持てる仕様にしました。また、目盛を見やすく工夫したトルクレンチも開発しています。
 このようにユーザーフレンドリーな設計を心がけて製品開発をしています。今年もまだまだ新製品を出していきますし、新設計の製品が普及してほしいと思っています。

トルクハンドブックを改定

ーー「TOHNICHI TORQUE HANDBOOK」を改定されました。

軽量化はかる

「TOHNICHI TORQUE HANDBOOK(東日トルクハンドブック)」は4〜5年に一度改定しています。今回で「vol.8」になりました。「vol.8」は「vol.7」に比べてページ数が増えました(479ページ)が、総重量は軽くしましたので、見やすく使いやすくなりました。

現場で役に立つハンドブック

このハンドブックには、製品紹介だけでなく、トルクに関連する技術資料も詳しく掲載しています。材料力学とか表面粗さなどの基礎資料も載せています。
 現場で実際に役に立つハンドブックをめざしています。
 英語版のカタログも作成しています。

ドイツ語版と中国版もつくる

今回はこの英語版に加えて、ドイツ語版と中国版の「TOHNICHI TORQUE HANDBOOK」も、夏ぐらいをめどにつくります。

ユーザーにきちんと届けることが大切

私は、ハンドブックをつくることが終点とは考えていません。このハンドブックがきちんとユーザーの手元に届いて、実際に活用していただいて初めて、ハンドブックはその使命を発揮します。ですから、ハンドブックをユーザーにいかに届けるかということがとても大切です。とくに海外のユーザーにどう届けるかですね。この届けるということに力を入れたいと思います。

ーーCUD(カラーユニバーサルデザイン)で作成されていますが。

色弱者などに配慮したデザイン

「TOHNICHI TORQUE HANDBOOK」は、「vol.7」に引き続き、色の見え方が一般と異なる(先天的な色覚異常、白内障、緑内障など)人にも情報がきちんと伝わるよう、色使いに配慮したデザインCUD(カラーユニバーサルデザイン)を採用しています。

製品にもCUD

東日製作所では、カタログだけでなく、製品にもCUDを適用して、色覚の個人差を問わず誰でもが安全で使いやすい製品を設計しています。
 たとえば、皆さんが使う通常の充電器のバッテリー表示は「赤」と「緑」ですね。しかし、この色の組み合わせだと認識しづらい方がいるのです。「赤」と「青」の組み合わせであれば大丈夫です。したがって東日製作所の製品は「赤」と「青」の組み合わせを採用しています。また点滅時間を変えたり、縞模様を採用するなどの工夫もしています。
 当社はもう10年程CUDに取り組んでいます。欧米人では日本人よりも色覚異常の人などの比率が高いですから、世界中で使っていただく製品を開発するために意識して取り組んできました。
 社会貢献にもなりますし、弱者にも配慮した、安心して誰でもが使える製品への配慮は業界全体としても取り組むべきだと思います。

TUDで製品設計

今後は、当社がこれまで培ってきたCUDのノウハウを基礎に、色のみならず当社独自の製品の使いやすさなどを加味した独自のデザイン規格であるTUD(Tohnichi Unified Design)で、カタログや製品を設計していきます。

トルクレンチは計測器でありツールでもある

こんな計測器はほかにない

トルクレンチは、トルクを測るという仕事をしながら、ねじを締め付けるという動作もします。つまり、計測器でありながらツールでもあるわけです。作業と測定を同時にしています。こんな計測器はほかにはありません。

規格作成にも意欲

東日製作所はトルクレンチでは世界でトップメーカーですが、これまではトルクツールに関する国際規格の作成に原案作成段階から関わったことはありません。
 残念ながら、現在は直接関われるルートがないのです。すぐにというわけにはいかないでしょうが、将来的には、これもトップメーカーの責任として考えていきたいと思います。

−−ありがとうございました。

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