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2010年には1000億円の売上をめざす


寺岡 和治

(株)寺岡精工 代表取締役社長

vol.2

日本計量新報 2008年4月13日 (2719号)2面掲載

市場開放が活性化への道

−−どのような処方箋が必要でしょうか。

処方箋はいろいろあると思います。世界にはいろいろな事例があります。1980年代の英国におけるサッチャー革命などです。

パイを拡大する

寺岡和治ヨーロッパでは市場統合でEUが形成されました。EU参加国の間では経済的な障壁がなくなって広い市場ができ、お互いが競争関係になってきました。それにより強い企業がたくさん出てきています。競争が激しくなることで大変な面はありますが、パイ自体が拡大すれば、その配分も大きくなるわけですから、このパイを拡大することを考えなくてはなりません。

日本マーケットを世界に開放せよ

イギリスでは規制緩和によりイギリスの企業がなくなったといって嘆いている人がいます。しかし、資本や国籍はどこでも、その企業がイギリスで企業活動をしてくれればいいわけで、なにもイギリス企業である必要はありません。

「ウインブルドン化」ということがいわれます。ウインブルドンが土地と施設は提供して、世界の頂点に位置するテニスの国際トーナメントを開催して、賑やかにやっています。しかし、そこで活躍しているプレーヤーは必ずしもイギリス人ではありません。

日本にも巨大なマーケットがあるわけですから、この豊かなマーケットを世界中に開放する。そして、世界からいろいろな人が来てそこで賑やかにやってくれれば、日本のマーケットは活性化します。  そういう発想が無いのです。日本の国民が選択した結果なのでしょうが、日本の政治家は相変わらず、日本の枠組みの中だけでしか考えていませんね。

先ほど人口の高齢化の話をしましたが、移民の問題などもこれと関連して考える必要があります。高齢化に伴い介護を必要とする人はどんどん増えていきますが、介護ができる人は逆に少なくなっていきます。

日本への移民の増大を望んでいる国は東南アジア各国を始め多いわけですから、そういう国とよく協議して移民の枠組みを作っていけば、介護問題の緩和にもなります。

その際は、日本の介護士の資格を取らなくてはいけないというようなことにするのではなく、その国の看護に関する資格をとっていればそれを認めて、日本で介護の仕事をすることができるようにするなどの柔軟な施策が必要です。

グランドデザインをもった政治家が必要

政治家は、国のあり方をもっと本質的に考えなくてはいけません。単なる選挙対策や政局をうまく処理するというような次元だけの知恵の出し方ではなくて、これからの日本をどうしていくのかというグランドデザインをもった政治家が出てこないとダメです。そういう可能性をもった政治家もたくさんいると思うのですが、どういう訳か集団になるとだめですね。日本人の、内向きで、島国の中でのみ考え、オカミに頼り、オカミに従うという資質、体質に起因するものかもしれません。政治家あるいは政治はそういうものが反映されたものですから。そういうことを考えると、政治に対しては悲観的にならざるを得ないですね

企業は国に依存しない

−−企業はグローバルな活動をしていますが。

企業は心配ありません。企業は国にその存立を依存しているわけではないですから。しかし、国による保護などに依存しようとすると国と心中することになります。今の時代に企業は国の施策などに依存する必要はありません。ヨーロッパでは、北欧の企業がスイスに本拠を移すなどのことが、普通に起こっています。企業の活動領域は国境をまたいで多くの国に関わっていますから。したがって、日本の企業も日本市場がダメなら別のところで商売をすればよいのです。

キーワードは小さな政府と道州制の実現

日本を10ぐらいの道州に分ける

−−国民は住む国を自由には選べませんね。

ヨーロッパなどでは比較的自由に住む国を選べますが、日本国民の多くは自らが住む国を自由に選ぶことは難しいですね。この日本で暮らしていかなければなりません。私は今の状況を打開するキーワードは2つあると思います。

1つは徹底して小さな政府を作ることです。もう1つはこれとセットになった道州制の実現です。

基本的なことは道州が決める

日本の国の行政区を、各々が人口1000万人ぐらいの10ほどのブロックに分けます。そして基本的なことはすべてその道州の中で決めていくことです。

たとえば税金に関しても道州が決め、道州が徴収するのです。そして、その中から一定の割合の額を、道州が国へ渡します。国が集めて、その中から一定額を道州に渡すのではありません。その逆です。

そうすれば、ヨーロッパと同じような状況が生まれます。今、ヨーロッパの各国では法人税の引き下げ競争が始まっています。なぜなら、企業が国をまたいで自由に活動できるようになっていますから、自国だけが高い税金を課していると、企業はその国から逃げていってしまいます。人も逃げていってしまいます。

ドイツなどは、ヨーロッパの中では税金が高い国ですが、そのドイツでも、再来年にはこのぐらい税金を下げますよということを宣言しています。すぐには税金を下げられなくても下げる計画があるということを言っておかないと、企業も人もドイツから逃げていってしまうからです。

地方分権ではなく地方自治

そういう状況を日本でも作る必要があります。地方分権ではありません。地方自治です。分権というと中央が持っているパワーや権限の中から、そのいくつかを地方に分け与えるという感じですね。そうではありません。分権ではなくて自治です。地方が中心です。
 中央政府は本当に小さな政府にして、全体に共通する外交、防衛、環境だけを担当します。

道州が知恵を出し合う

あとは、教育の施策などもそれぞれの道州が決めればよいのです。それぞれの道州が知恵を出して、たとえば東北道ではこういう学校制度でやっていくとか、九州道ではまた違う方法でやるとか、それぞれ独自の制度でやっていけばよいのです。そうすると「ああ、ここの教育政策はわが子の成育にとって良さそうだ」となると、その道州へ移住する人も出てきます。

弱みを強みに変える

過疎の地域でも、たしかに交通は不便だが、自然環境は抜群だし、税金も安い、生活コストも安い、というふうになれば、これまでの過疎の弱みを強みに変えることができます。

日本全体を一つのやり方でやっていくのではなくて、各々の道州が独自のやり方を競うことによって、日本全体のレベルが上がっていきます。

各地域の自立が前提に

繰り返しますが、国の権限を分与するのではなく「それぞれの地域が自立をする」ということを大前提とすることです。各々の道州自身が自らの生存を賭けて政策や進むべき方向を考えることが大事です。

住民にとってもこの方がはるかに良いのです。現在は、日本全国どこに住んでも同じ条件です。税金をとっても、教育をとってもね。道州制になれば、道州ごとに、税制も教育制度も、公共サービスも違うわけですから、住民はそれをよく判断して、住みやすいところに住めばいいのです。

それを阻んでいるのが、政治家の利権とオカミに依存する日本人の体質ですね。

税金のばらまきではダメ

−−財源の問題はどうなりますか。

現在は、行政が抱える借金の額がとんでもない額になっています。これまで税金をばらまいてきた結果です。今後はもう無理です。

世界の資金を呼び込め

税金を国民から取ってそれをばらまくという発想ではダメです。世界中をみればお金が有り余っているわけですから、そのお金・資金をどうやって日本に呼び込むのか、こういう発想が必要です。

サブプライムローンの問題でも、問題化するまではこれに資金が流れていたわけです。現在はそれが引き揚げられて石油や穀物に流れています。石油や穀物の価格が上がっているのもこのためです。投機資金がここへ流れているのです。

したがって世界規模で見れば、世界にはお金があるのです。それが日本へ回ってくるようにすれば良いのです。

今、世界で発展しているところを見てみると、自分たち自身が持っているお金で発展しているわけではありません。世界中からお金や人がその地域へ集まってきているのです。先ほど言った、みんながそこへ行ってプレーをしたくなるウィンブルドンを作ればいいわけです。

そのためにも、日本一律では無理ですから、それぞれが特長を出していく道州制が良いのです。これまでにない試みですから最初は混乱もあるでしょうが、10年ぐらいでやれるようになると思います。

日本は落ちるところまで落ちないとダメ

私は、日本は一度、落ちるところまで落ちないとダメだと思います。イギリスも100年間停滞し、サッチャー革命でよみがえったわけですから。小手先の改革ではダメです。

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