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計量新報 2006年 4月2日発行 /2625号 10,11面


講演の概要

全国計量士大会(再録と新掲載分)
新しい計量行政の方向について
−計量行政審議会等の検討状況について−
経済産業省計量行政室長 籔内雅幸

 以下は、全国計量士大会(2月23日開催)での籔内雅幸計量行政室長の講演の概要である。(文責・編集部)

          ◇

 計量行政室長の籔内でございます。皆さまこんにちは。第4回全国計量士大会にお招きいただきありがとうございます。計量制度の見直しにつきまして説明させていただける機会を得ましたことを、大変喜んでおります。

 お配りした資料に基づきながら、少し詳しくご説明いたします。一昨日(2月21日)、計量行政審議会の計量制度検討小委員会に、これからご説明する内容をご議論いただいたばかりでございます。小委員会の下に3つのワーキンググループ(WG)があります。パネラーには、これらの小委員会、WGの委員としてご審議いただいている方もおられます。

検討小委員会とWGで審議

 まず、資料の1ページ目(計量行政審議会等の開催状況について)をお開きください。経済産業大臣の諮問を受けまして第1回の計量行政審議会を昨年の7月26日に開催しました。その後、内容についての議論は小委員会なり3つのWGで、それぞれの検討項目にしたがって議論をしてきたところでございます。

小委員会は4つの項目を検討

 2ページ目をお開きください。このページは、計量制度検討小委員会の議論について、簡単にまとめたものです。小委員会では、3つのWGでの検討課題に当てはまらない横断的な事柄、たとえば単位、計量士制度などを議論する場でございます。単位について、情報提供、計量士制度、特殊容器について議論を重ねてまいりました。この順番は資料ができあがった順でして、重要度の順番ではございません。

新たな単位の是非判断の基準を定める

 まず単位でございますが、新しい単位が国際度量衡総会で採択されたとしても、それがすぐに国内で法定計量単位として採択すべきかどうかというのは、なかなか今までは明確になっておらなかった、なおかつ、迅速に決められなかったわけであります。

 この反省にたちまして、国際的に新たに採択される単位を我が国として採用する際、法定計量単位とすべきか否かの是非を判断するための基準、迅速な手続きをこれから定めていく。

 さらにその単位を採択すると決まったら、速やかに法律のなかに位置づけ、それによる国家計量標準を供給できる体制について整備をしていくようにしましょう、ということが大きな問題提起の一つです。

非法定計量単位禁止の現行制度を堅持

 もう一つは、尺貫法からメートル法へ、さらにSI単位へと計量単位を統一していこうということで一定の成果を収めつつあるんですが、依然として非法定計量単位についての問い合わせとか、要望が寄せられております。そこから、非SI単位等の使用の要請をどうしましょうか、といったことを中心に議論をしてまいりました。内外に対しまして、我が国のSI単位推進の立場をさらに明確にする必要があるのではないかと思います。

 また、併記を認めたりしますと、超過コストが発生するとか、読み間違いや設定ミス等により事故の発生の恐れがあるとか、いろいろな問題があります。

 もう一方で規制対象になっていない個人とか家庭等の一部では、たとえば尺などの使用が尺相当目盛ということで実質的に今でも可能であり、取引証明においても、きわめて限定的ではありますが、ヤード・ポンドなどの非SI単位が現在でも使用されております。

判断基準の公表を検討

 したがいまして、今後とも取引や証明において非法定計量単位の使用を禁止するという現行制度は堅持するという方向でいきたいと思っておりますし、現行制度の運用の透明性を確保する観点から、運用基準の明確化を図るとか、計量法で許容される非法定計量単位の表記の事例や、法令違反となるか否か、規制の対象となる計量器か否かの判断基準等については、できる限り今までの事例を集め、公表できるものは公表していきたいと考えております。

情報提供を広くやる

 次に、情報提供についてです。これは制度をどうこうするということではなく、国民の適正な計量に対する関心と知識の向上にむけて、我われ役所がやるべきことをやり、もう一つ、消費者や地域住民の方々に、主体的に参画していただければ、と思っております。

 11月1日は計量記念日ですが、経済産業省では4つある記念日の一つになっております。

 計量関係の各団体が協力して計量全国大会を開いておりますし、各地方ではいろいろなイベントをやっておられます。そういうことの情報提供をもっと広くやっていけたらなあと思っております。

 計量記念日のポスターなどをつくっております。WGで東京の谷中銀座商店街の理事長さんに委員になっていただいておりますが、ポスターを1部差し上げたところ、商店街独自の折り込みチラシまでつくっていただいて、11月1日を宣伝していただいたようでございます。そういった草の根を中心に計量に対する皆さんの関心を広げていけたら良いなと思っております。

計量制度は事後規制に重点おく

 皆さまに直接関係がある計量士制度についてでございます。私たちは今回の計量制度全般の見直しのなかで、特定計量器の規制もさることながら、今後はますます事後規制、すなわち立入検査なり商品量目における試買などに重点を置いた制度にしていきたいと考えておる次第でございます。

法執行に民間能力を活用

 特に地方自治体においては、地域の実情に応じた自らの自主性を高めた計量行政を推進していくべきじゃないかと考えます。

 現状の計量法の執行体制の維持の困難性を訴える自治体におきましては、自治事務としておこなう検定の実施事務や実施体制の整備状況といった、計量器ごとの特性をふまえつつ、必要であれば条例の改正等の環境整備をおこなっていただいて、指定定期検査機関や指定検定機関などの民間能力の活用を進めることが期待されます。

 その中におきましても計量士さんの活躍の場が広がっていくんじゃないかと、我われは期待している次第であります。

計量士の登録更新制を導入

 事後規制にウエイトを移していきますと、地方自治体だけではなかなか実施できにくい点があります。そのあたりを計量士の方々に補っていただけるようになればよいと思っております。平成16年度(2004年度)末においては、一般計量士、環境計量士を合わせて約2万5、6千人ぐらいの方が計量士として登録されています。しかしいかんせん、他界なさった計量士さんもいらっしゃいますし、どこの県に何人ぐらい計量士さんがいらっしゃるのかよくわからないというのが実情であります。したがって、今後いろいろと都道府県を中心に計量士の方々に、計量法の執行を維持していくためにお手伝い願いたいと思っているんですが、各自治体では、私たちの県に何人の計量士さんがいらっしゃるのかよくわからない、という状況です。

 そこで、まず計量士さんに登録していただいた後には、資質の維持・向上を図るために更新制を導入し、さらに更新時には研修をしていただくとか、計量士制度についてはそのような方向で検討しております。

特殊容器制度は廃止の方向

 検討の4番目は特殊容器制度です。この制度は昭和32年(1957年)にスタートしたわけですが、その当時はビン(瓶)の総生産量に占める特殊容器の割合が27%、約3割近くありました。それが、現在はちょうど10分の1の2・7%になっております。平成12年(2000年)以降製造されていないものもたくさんありますし、缶や紙パック、それから特殊容器として省令で定められていない容器がたくさん出回っております。

 各種容器の製造技術の向上や自動充填装置の高度化によって計量技術が向上したため、特殊容器を用いる必然性が低下してきているんじゃないか、一言で言えば特殊容器制度の役割はもう終わっているんじゃないか、ということから特殊容器は規制から外す、つまり計量法からなくす方向で、現在検討している最中でございます。


規制対象計量器と検査・検定制度を検討

 つづきましてお手元の資料の3ページをお開きください。「第1WGの骨子(概要)」と書いてあります。第1WGは、2つの大きな項目について検討をするWGでございます。一つは、計量法で規制の対象とする計量器についての検討、さらに特定計量器の規制方法である検査・検定制度の検討をおこなっております。

規制対象計量器を見直す

 一つめの特定計量器をどうするかですが、計量法の規制対象となっている特定計量器は、これまでも適宜見直しがおこなわれてきたところでございます。

 昭和26年(1951年)に計量法が制定されときには51品目、昭和41年(1966年)の改正では51品目から27品目、さらに平成4年(1992年)の改正では27品目から18品目に、というように現在の姿になっております。その18品目という中身は40数器種あるわけです。

 以上のように適宜見直しをおこなってきた特定計量器ではありますが、今回の検討にあたっても検査・検定制度における規制改革の流れ、それから取引証明における当事者同士が計量に関する技術的知見を有してきつつあること、たとえばJCSSの校正証明書があったり、ISO9000認証などを取っているなど、取引相手が正確な計量をしてるかどうかなどを確認する手段が年々充実してきているのではないかという状況をふまえ、計量器ごとの使用実態をみつつ、国や地方自治体の関与が真に必要なものに限定するように今回、規制対象を見直ししたいと思っております。

どれを外すかは決めてない

 「JISマークの活用が適している」とか「他法令等の規制がある計量器」については規制の対象外とすることを検討する、というように文章に書かれております。また骨子案において事例としてこんなものはどうかと書かれてありますが、40何品目を一通りヒヤリングをしたばかりでございまして、どれを外すのか外さないのか、業界団体またメーカーの方々と相談して、議論している最中です。したがってまだ、どれとどれを外すのか外さないのかということは何一つ決めておりません。

 「計量新報」などを見ますと、どうやら役所は大型はかりを外すらしいとか、自動はかりはとうとう規制対象になるらしいとか、いろいろ書いてございますが、何も決めておりません。

自動はかりは、規制の必要性の有無から検討

 いま自動はかりと申しましたが、実際に取引証明に使われなくなってきているものは特定計量器から外していくという反面、新しく自動はかりなどを規制の対象にしてくれないかという議論もありますが、それは実際に規制の必要があるかないかから検討していきたいと思っております。

 したがって、自動はかりを規制することが決まったかのように書かれておったりしますが、規制の対象とするのかどうか、規制の対象にする必要性については検討してみましょうということでありますので、そんなことは全く決まっておりません。これらが第1WGで検討している大きな項目であります。

地方自治体の体力格差が拡大

 行財政改革の流れのなかで、検査・検定制度は、平成11年(1999年)の改正により、国からの機関委任事務から自治体の自治事務になりました。この自治事務化以降、計量行政に関わる人員や予算がかなり削減される自治体が多く発生し、地方公共団体間で計量行政を実施する上での体力格差が拡大しています。

計量行政の執行方法の選択肢を拡大

 したがって、それを補う一つの方法が計量士の皆さんにお手伝いしていただくことでありますし、民間機関の能力を最大限活用することを含めて、地方公共団体の計量行政の執行方法に関する選択肢の拡大、それから地方計量行政を支える人材の育成、これが必要なんじゃないかと思っております。

ハードウエア規制から事後規制へ

 また、現在は特定計量器すなわちハードウエアの規制に重点が置かれていますが、ハードウエアの性能が向上してきているなかで、むしろ重要になってきているのは、計量器の使用者による不正を抑制すること、すなわち事後規制に重点を置くべきではないかと考えております。

新JISマークなど第三者認証活用を検討

 これらをふまえて検査・検定においては、具体的にどういったことを検討しているのかといいますと、一つは第三者認証制度の活用を検討したいと考えております。

 製造事業者や、地方公共団体の執行方法の選択肢が増えるように、信頼性確保に注意しながら、第三者機関による認証制度を検定の選択肢の一つに加えることについて、検討していきます。

 その際、新たな制度をつくるというのではなく、既存の例えば新JISマーク制度のスキームを計量法のなかで使うことができないか、などを検討していきたいと思っております。

指定機関も民間の参入を促すしくみに

 もう一つ、皆さまには釈迦に説法でございますが、指定定期検査機関や指定検定機関という制度についても、民間機関が参入しやすくなるように若干制度を変更したいと思っております。ただ、その際には信頼性確保の条件として、ISO/IEC17025のような何らかの基準を設定することを考えております。

指定修理事業者制度を検討

 それと、今回の第1WGの検討での大きな目玉かなと思っておりますのは、指定製造事業者制度に関することです。この制度は初回の検定品に限って適用が認められております。指定製造事業者がつくって市場に出した計量器が、修理してくださいということで自社に帰ってきた際、この計量器をもう一度修理して市場に出す際に、もう一度検定をするということはいらないんじゃないか、少なくとも修理済み再検定品に関しては自主検定を認める制度ができないかということを、今考えております。これもさらなる民間能力の活用ということになるんでしょうけれども、適用範囲に関しては皆さんと議論していきたいと思っております。

 以上が、第1WGでの検討の大きな方向性であります。


商品量目制度、適正計量管理事業所制度の見直し

 次に第2WGでの検討内容でございます。ここでは計量法を中心とした計量制度のなかで、商品量目制度や適正計量管理事業所制度について検討しているところでございます。

地域住民の積極的参画を

 商品量目制度に関しましては、計量情報の提供とも絡みますが、一つには消費者を中心とした地域住民の方々に、公平な計量を実現するための重要なプレーヤーの一人だということをよく自覚していただいて、適正計量の実現に積極的に参画していただきたいということでございます。

不正事業者名公表のガイドライン作成

 具体的には計量器の不正使用の摘発を強化すべく、抜き打ち検査などの事後検査を強化する方向で検討しています。さらに、例えば消費者の信頼失うなどの不正な行為があった事業者の名前の公表などの手続きについては、不正を抑止するという意味で、全国一律の基準、ガイドラインなどを作成したいと考えております。

計量士活用して立入検査実施を検討

 さらに地方自治体についていえば、状況に合わせて非常勤や常勤などの形態で、計量士の皆さんの能力を活用してより多くの立入検査などを実施することについて、検討していきたいと思っております。

適管事業所へ新たな価値を付与

 適正計量管理事業所制度でございますが、この制度は自主的な計量管理の推進を目的とする制度であり、事業者にとって例えば非自動はかりその他の計量器の定期検査の免除などのメリットがあります。このように活用が図られているところではございますが、適管事業所の指定を受けるための体制整備とか、維持管理にコストがかかる一方で、メリットといえば定期検査の免除程度であって、事業者が適管事業所となるインセンティブは少ないんじゃないかということがございます。適管事業所の指定を返上したいという事業者も出てきています。これはどうにかしなければいけない、と思っているしだいでございます。

手続きの簡素化と新マークの創設

 したがいまして、適正計量管理事業所についてはもう少しインセンティブを与えるべく、例えば商店街などを一つの単位として、より活用できるように手続きの簡素化等を図っていきたいと思っておりますし、さらに一般の適正管理事業所と比べて計量管理がすぐれている事業所については、現在の適管とは別に商品に新たなマークを使用できるとか、すなわち新たなマーク制度の創設を考えております。

 これはスーパーなどの流通業のみならず、製造業の工場などにおいてもこの新たなマークを使えるようにしたいと思っておりますし、消費者の皆さんにもマークの創設時から関わっていただいて、今の適管マークがダサイというなら、ぜひかっこいいマークを考えてくださいということで話をしていこうと思っているしだいであります。


第3WGは計量標準供給とMLAPを検討

 5ページ(第3WGの骨子〔概要〕)になりますが、第3WGは計量法のなかで計量標準の供給とトレーサビリティの確保、さらに特定計量証明事業について検討しているところであります。

標準物質供給で指定計量標準制度を創設

 近年、バイオ関係など化学物質の標準を必要とする場面が多々増えてきております。しかしながら、計量標準物質の供給がなかなかそれに追いついていかないという現状でございます。したがって、民間の(社)日本試薬協会などが使っている化学物質を、国家計量標準が指定されるまでの暫定的なものとして、準国家計量標準物質と位置づけて、それを使っていきましょうというような制度(その後、3月10日開催の第8回会合で出されたWG報告書案では指定計量標準制度〔仮称〕という名称が使われている。編集部注)の創設といったことが一つです。

 さらに、それにむけて(独)産業技術総合研究所が他省庁の研究機関などとの関係を全部コーディネートしたような形で、準国家計量標準物質について検討できる場を運営していくようにしよう、というようなことを検討しております。

MLAP不正行為への罰則適用を検討

 計量証明事業に関してですが、ダイオキシンなどの極微量物質について計量証明をおこなっているMLAP(特定計量証明事業者認定制度)という制度があります。これらについて、一般の環境計量証明事業もそうですが、現在は不正行為に関する罰則の適用がございません。したがって、不正な行為をおこなった計量証明事業者に対して罰則の適用を検討いたします。

認定基準にISO/IEC17025を採用

 またMLAPの認定基準に、国際整合性を確保する観点から、たとえばISO/IEC17025を採用することを検討していきます。非常に技術的な分野ではありますが、第3WGではこういうことを検討している最中でございます。

          ◇

 以上簡単ではございますが、今申しましたようなことが、今回の計量制度全体のおおよその改正の方向性でございます。

(以上)

 
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