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飲酒・酒気帯び運転を減らせ!アルコール検知器

特集記事 製品紹介

アルコール検知器 使用を義務化

 

 事業用自動車における交通事故件数・死者数は、ここ数年、減少傾向にあるといえる。しかし、ひとたび事故が起きると、社会的影響の大きい重大事故に繋がりやすい。事故の一因となる飲酒運転や過積載・偏荷重、車輪脱落を防止するため、種々の計量器を活用することが望まれる。今週から3回にわたり、アルコール検知器、トラックスケール、トルクレンチを特集する。

 近年の自動車による交通事故の発生状況を俯瞰すると、全体的には2004年をピークに事故件数は年々減少し、死者数も着実に減少している。
 しかし、事業用自動車については、事故件数・死者数ともに、自家用自動車と比べると減少の歩みが鈍い状況にある(図1)。また、飲酒運転のように社会的影響の大きな事案についても、自家用自動車にくらべて減少幅が小さい(図2)。
 そこで国土交通省は、2010年4月28日、「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、事業用自動車の飲酒運転ゼロの目標を達成するため、旅客自動車運送事業運輸規則(昭和31年運輸省令第44号)および貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)ならびに関係通達の一部を改正した。
 これにより、2011年4月1日から、運送事業者は事業所ごとにアルコール検知器を設置し、点呼時にアルコール検知器によって運転者をチェックすることが義務づけられた。
 改正規則の詳細は以下の通り。
▽事業者は、点呼時に酒気帯びの有無を確認する場合には、目視などで確認するほか、アルコール検知器を用いてしなければならないこととする(旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部改正)。
▽事業者は、営業所ごとにアルコール検知器を備え、常時有効に保持しなければならないこととする(旅客自動車運送事業運輸規則及び貨物自動車運送事業輸送安全規則の一部改正)。
▽このため、事業者は、アルコール検知器の故障の有無を定期的に確認しなければならないこととする(関係通達の一部改正)。
▽電話点呼の場合には、運転者にアルコール検知器を携行させ、検知結果を報告させるなどにより行うこととする(関係通達の一部改正)。
 違反した事業者には、以下の厳しい罰則が科せられる。
(1)アルコール検知器の備え義務違反=初違反は60日車(一日実働一車当たり)、再違反は180日車の業務停止
(2)アルコール検知器の常時有効保持義務違反=初違反は20日車、再違反は60日車の業務停止


事業用自動車に関わる事故等の発生状況 飲酒運転に関わる道路交通法違反取締り件数

アルコール検知器とは
精度や機能を見極める

 国土交通省は当面のところ、アルコール検知器の機種の指定や機能の要件などを定めていない。しかし、市販の製品の中には、精度誤差の大きいもの、寿命の短いものなど、業務用の使用に適さないものもある。業務用に購入する際には、価格だけでなく、精度や機能の違いを見極めた上で選択したい。測定結果を本体に記録したり、印刷したりする機能を持つ機種もある。
据え置きタイプ、ハンディタイプ
 業務用のアルコール検知器には、卓上型とハンディー型がある。
 卓上型は、事務所に据え置く大型のもので、ストロー状の吹き込み部分を口にくわえて測定する。
 ドライバーの携帯に便利なハンディー型は、1000円台から1万円台まで多数販売されている。ただし、安価な機種の中には息を吹きかける簡易なタイプなど、業務用として十分な精度が期待できないものや、メンテナンスができず使い捨てのものもあるので、注意が必要。
センサー
 アルコール検知器のセンシング方式には、以下のようなものがある。
◇半導体方式
 アルコールガスの吸着・触媒反応による電気伝導度の変化を利用している。日本で販売されている比較的簡易なアルコール検知器は、この方式を採用しているものがほとんど。
 安価で小型、かつ素早い応答性が利点。ガス選択性に優れていない(アセトンなどアルコール以外のものに反応してしまう場合がある)こと、高湿度、高海抜下など環境による精度誤差が大きいこと、センサー自体に個体差があること、寿命が短いことなどのマイナス点も。各社では、こうした点を改良した業務用の機種を開発している。
◇燃料電池方式(電気化学式)
 呼気中のアルコールを燃料にして、アルコール中の水素イオン(プロトン)と電子に分離して、電気を発生させることを利用している。
 アルコール以外にはほぼ反応せず、高精度の測定が可能。再現性が良い。また、気圧、結露など環境の影響を受けにくい。ただし、センサー単体の価格が比較的高い、反応時間が長く測定に時間がかかるなどのマイナス点もある。
 海外では、この方式によるアルコール検知器が多い。
◇赤外線方式
 赤外線を用いて、アルコール固有の波長吸収を光検出器で電気信号に変換する。
 直接呼気との接触部分がないため、寿命が長く、 ある常温下で高い精度を発揮する。しかし、アルコールと同一吸収帯域を持つガス成分に反応してしまう可能性がある。また、気圧、温度など環境による測定誤差が生じやすい。特に、光検出部についた結露や、タバコの煙などで反応してしまう場合がある。非常に高価かつ装置が大きい。
◇接触燃焼方式
 アルコールガスを接触燃焼させ、その際に生成する燃焼熱を抵抗変化として検出する。アルコール以外に反応しにくく、検知能力が高い。燃料電池式に比べて長寿命。
 ただし、センサーのクリーニングに時間がかかり、振動・衝撃に弱い。
購入後もメンテナンスを
 アルコール検知器はセンサーの構造上、使用状況に応じて測定誤差が大きくなったり、異常値が出たりすることが多くなってくる。
 正しく使用するためには、メーカーの指定する使用回数に応じて、測定値調整のメンテナンス(キャリブレーション)を受ける必要がある。センサー交換式のものは、適切な交換を心がけたい。

 

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