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分銅特集 〜 精度維持に不可欠な分銅、JCSSで世界とつながる

 
特集記事  

JCSS分銅で
トレーサビリティ体系を構築

はかること――すなわち計量・計測は、売買や製造といったすべての産業活動の基盤である。それ故、計量・計測の結果には、常に正確さが求められてきた。
 製造過程における技術が高度化し、製品の品質管理が厳しく求められるようになると、計量・計測結果の正確性に対する要求もますます高まっていった。
 そのため、はかりは分銅による定期的な校正が必要不可欠である。最近では、校正用分銅を内蔵するはかりも少なくないが、そうでない場合は、日常点検や定期点検ではかりに分銅を載せ、質量表示が点検基準以内であるかを確認する。
 経済活動がグローバル化した今日ではそれだけでは足りず、国際基準への適合も必要とされるようになった。
 製品の品質基準を定めるISOやHACCP等のグローバルスタンダードは、使用する計量器や計量データが国家標準にトレーサブルであることを要請している。「国家標準にトレーサブルである」とは、計測結果が切れ目のない比較の連鎖によって国家標準に関連づけられることをいう。
 この計測結果のトレーサビリティを担保するために導入されたのが、JCSS(Japan Calibration Service System)という制度である。
 計量器の校正に用いられる分銅も、JCSSロゴマーク付校正証明書の付いた分銅であることが望ましい。

一般の事業所は基準分銅を持てない

以前は、(独)産業技術総合研究所(旧計量研究所)や計量検定所へ持ち込んで校正や値付けをしてもらい、基準分銅(特級から3級)により、国家基準への関連付けがなされていた。ただし、この分銅は日本の計量法には適合しても、国際規格との整合性はなかった。
 1993(平成5)年の計量法改正で、はかりメーカー、検定所・検査所、計量士にしか基準分銅の供給をしないことになり、その用途も特定計量器の検定、修理、検査などに限られるようになった。
 それでは、一般の事業所が分銅のトレーサビリティ体系を構築するには、どうすればいいのいか。その答えが、JCSSである。

JCSSで国際的なトレーサビリティ体系を

JCSSは、国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた校正機関に関する基準(ISO/IEC 17025)の要求事項に適合しているかどうか審査を行い、校正事業者を登録する制度。1993(平成5)年11月に導入され、計量法に基づく校正事業者認定制度として運営してきたが、2005(平成17)年7月より校正事業者登録制度となった。
 JCSSで登録された校正事業者は、その証として【図1】のような標章の入った校正証明書を発行できる。この標章によって日本の国家計量標準へのトレーサビリティが確保され、校正事業者の技術能力のあることが一目でわかる。
 さらに、国際MRA対応を希望する登録事業者に対しては、校正能力の維持状況を確認するための定期的な検査及び技能試験が実施される。国際MRA対応認定事業者は、【図2】のようなILAC MRA付きJCSS認定シンボルの入った校正証明書を発行できる。これは、一度の校正で相互承認協定を結んでいる国ならどこでも受け入れられる、グローバルなものである。
 一般の事業者は、登録事業者が発行したこのJCSSロゴマーク付校正証明書付の分銅を使用する。JCSSロゴマーク付校正証明書を持っていれば、トレーサビリティ体系図やメーカーの成績書などは必要ない。
 JCSSは現在、順調に普及しているとは言い難い状況にある。その背景には、証明料が高いこと、証明書に不確かさの記述があり、やや難解であることがある。
 しかし、国際的なトレーサビリティの重要性は日に日に増しており、JCSSも今後さらに普及していくと思われる。
 なお、分銅の形状や材質等の規格は、JIS(日本工業規格、Japanese Industrial Standards)によって定められている。

JCSS分銅の
登録事業者は28

JCSSの登録事業者の登録区分は長さ、質量、時間など24ある。質量分野のJCSS校正は、 「はかり」と「分銅等」の2種類。
 2010年1月現在、質量分野の登録事業者は日本全国で44事業所。このうち、「分銅等」での登録があるのは28事業所で、うち27事業所までが国際MRAに対応している。
 それぞれ、校正範囲や最高測定能力も異なるので、目的にあった登録事業者を選択することが大切である。
 (独)製品評価技術基盤機構WEBサイトでは、JCSSの登録事業者を区 分別に検索し、各事業所の校正範囲や最高測定能力を確認することができる。

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