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日本計量新報 2016年7月31日 (3113号)

定期検査実施の補助率を5割から7割に増額した当事者の労苦

計量法とその関連法規が取り扱う分野は、適正な計量の実施の確保であり、その範囲は取引と証明に関する計量に限定される。このようのに述べると計量行政にかかわって意気込んで仕事をしている人の気勢を削ぐことになるが、計量法が規制法として作用するのはこの範囲のことになる。

計量の単位を定めることは広く産業と学術文化と連結してその基盤をなすようにみえる。しかし取引と証明に関わらない分野での国際単位系以外の単位の使用はことのほか多い。国際単位系から派生させてそれと結びつくように計量単位ができていればよいのであるが、新しい事象を測定し記録するときに国際単位系から離れた計量単位が使われていることが少なくない。

計量の世界で仕事をする計量計測機器製造・修理・販売事業者、関係する消費者、計量士、計量行政機関ほかに勤務する人々の多くは計量が世界を救うと思っているかも知れない。だから合い言葉は「計量思想の普及」ということになる。「計量思想の普及」という言葉を団体の定款に書き込んでいるところでは明快な解説をしてほしい。

「計量思想の普及」を第一義として定款に書き込んだ計量協会の会員が減少の一途である。計量計測機器製造・修理・販売事業者を計量法に連動して会員に取り込んだ規定が、登録制から届出制になってその有効期限が定められなくなったために、再登録の講習受講とその手続きで便宜があった計量協会から離れていくようになった。「計量思想の普及」への思いがどこまであったか疑わしい。時代が変わると正しく計る、計ることで不正をしないといった精神は当たり前のことになったために「計量思想の普及」にこだわらなくなったのだろうか。

体温計販売事業者を会員にかかえて1000を超える会員数があったある計量協会は2016年現在会員数は200を割り込もうとしている。ハカリの販売事業者の会員が激減しているためである。この計量協会が実施している主な事業は計量行政機関から指定されてのハカリの定期検査である。ハカリ定期検査の指定機関としての業務がそれであり、この業務が増え、従事する職員が増員されるのと連動して計量検定所職員の数が大きく減っている。計量検定所職員の減員の要素は指定製造事業者制度ができたために、この方面の検定要員がいらなくなったためである。これに加えてハカリの定期検査の実務が計量協会に移ったために計量検定所の職員数が大きく減っている。

ハカリの定期検査は地方公共団体が条例で定めている検査手数料では費用をほとんどまかなうことができない。1967(昭和42)年までは定期検査手数料が無料であり、その理由は国家が強制して検査をするもの(メーカー検定主義)であることとされた。その後にユーザー検定主義が導入されて有償になったがその料金は検査のための費用に対しては微々たる割合である。形式はメーカー検定からユーザー検定に移行しても検査手数料は移行前のままであり、議会は手数料値上げを容易に認める状態にはない。

このような状態だから計量協会が地方公共団体の指定を受けてハカリの定期検査団体になったとしてもその運営費は計量検定所や計量検査所などのこの方面の計量事務を担当する部署と同じほどでなければならない。民間に移管すれば費用は低く押さられるという一般則はハカリの定期検査には全く通用しない。地方計量協会にハカリの定期検査を「委託」するにあたって検定所などの職員の人件費を欠落させた委託費にしてしまった、という事例がある。

指定を受けてハカリの定期検査を実施してきた関東地方のある協会はこの業務実施で欠損が続くようになって困窮していた。協会運営が維持できなければハカリの定期検査を実施することができない。行政機関には職員の数などが減ったために協会が実施できなくなったこの検査を引き戻して対応することができない。不足した費用を補うために委託費の増額をした。補助率という言葉を使えば5割から7割に増額された。物事の性質に合わせた行政費用の算出が重要になる。計量協会の定期検査実施の補助率を5割から7割に増額することに関わった関係当事者の労苦は大きかった。

 

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