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日本計量新報 2016年7月24日 (3112号)

守れない法規定と意図した違法行為の狭間

関東地方の計量検定所の課長職の職員が検定所の設備となる計量器を購入するにあたって、製造事業者から2000年当時28万円相当の商品を受け取った事件が新聞で報道された。双方は収賄罪と贈賄罪に問われた。これは検定所職員が女性との交際をめぐってその女性への傷害事件を発端として余罪を暴かれたものであり、計量検定所の計量器の備品の購入が直接の対象となって事件になったものではなかった。

計量法と計量器の検定ならびに定期検査に関係して眉をひそめることが幾つかある。

質量計の定期検査受検にあたって定期検査合格の要件である器差を超えている電気式のハカリを調整することである。電気式のハカリは使用しているとゼロ点などがずれるのでこれを再調整して使う。この調整をすると修理になるからそのハカリは再検定を受けてこれに合格しなくてはならない。世の中ではスパン調整がありふれておこなわれていて、その後に定期検査を受検して合格の証印を受けている。取引証明に用いるのでないハカリであればこの行為が計量法の違反行為となることはないが、取引証明用のハカリである場合には違法行為になる。

この行為が違法にならないように法の側が現実に歩み寄ることが良いと考えられる。守ろうとしても守りきれない不合理で無理のある法律の規定は関わる者すべてを違反者にしないためにも改正されなければならない。もちろんこの分野でどこまでも適法を実現するために無理をしている事業者が多くいる。

トラックスケールという大きな秤量のハカリは、設置現場で検定を実施するには大きな費用がかかり、検定に不合格になった場合に再検定のための調整をしてもう一度同じことをすることはさらに大きな費用を要することから、工場で組み立てた後に検定を受けてこれに合格すれば良い規定になっている。指定製造事業者による検査は検定に代わるからこれも工場検定である。合格したトラックスケールは解体されて設置現場で再度組み立てられる。

問題はこの先である。現地で組み立てられたトラックスケールは検定のときと同じように分銅を積載してその性能の確認しなければならない。あらかじめ質量がわかっている幾つかのトラックを載せて性能を確認する方法があるが、こうしたことがどこまで実施されているのか疑念があるとされる。こちらはどこまでが合法で何が違法であるか判別しがたいが、規定では現地で性能を確認することになっている筈だ。トラックスケールの性能の確認と法的整合の確保をしている事業が多数ではあっても、これをしない者もいる。

収賄罪と贈賄罪に問われた計量器は基準分銅であった。分銅はこれをハカリに載せれば性能を確認できる。質量の小さな分銅であればこれを用いることに大きな費用はかからないが、質量が大きくなって組み合わせることによって10トン、20トンの分銅を持ち運んで現地でハカリに載せるのは大きな費用を要する。受注額が安くなるとこれを省くことにもなる。別のある計量器の業種では「適正価格」での受注と「適正価格」の維持のことが叫ばれている。

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