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日本計量新報 2016年5月1日 (3102号)

計量のありがたみはわかりにくい

計量制度とはどのようなものか。計量という言葉を2つに分類する。1つは社会の科学と技術の基礎をなす分野の計量である。便宜としてこれを第一概念の計量分野とする。もう1つは社会の基盤となる計量制度である。便宜としてこれを第二概念の計量分野とする。

第一概念と第二概念を完全に区分することはできないが、第一概念は概ね科学と技術の基盤としての計量技術である。第二概念は計量法などを基礎として取引と証明にかかわる計量が適正に実施されるようにしくまれた社会の決まりである。

計量の単位を定めて標準をつくってこれを社会に供給することことが科学と技術の発展の基礎となり、取引と証明など経済活動のための計量の約束事が計量法によって定められる。この説明の言葉の背後では第一概念と第二概念の計量が重なる。

 産業技術総合研究所が計量の標準をつくってこれを社会に供給する分野。標準の状態を確かめるためのトレーサビリティにかかわる分野の技術の方面。「計量法トレーサビリティ制度」のしくみ。これらが第一概念の計量か第二概念の計量かを区別するとなると完全に分離することは難しい。計量技術を第一概念とし、計量制度を第二概念として便宜で区別したまでのことだ。

地方公共団体には計量行政組織があり計量検定所、計量検査所などが設置されていて「適正な計量の実施の確保」のための業務をしている。メーカー自己検定制度のもとでその内容の確認、計量器の検定、ハカリの定期検査、適正な計量の実現のための諸業務などがそれである。

 計量の役所が計量法の定めにしたがって活発に活動し、計量器を使い計量する人々が適正な計量をすることが実現している状態は、計量の視点からの平和な社会であり、これはそのまま社会の平和につながる。水やガスはこの供給設備が壊れたときにその意味が意識され「水はありがたいものです」と感想が述べられる。適正な計量が実施されていることは「ありがたい」ことなのだが、その実施を確保することへの意識が役所を含めて多くの人々に薄れがちである。

技術としての計量が発達していなければ半導体技術の躍進はない。そして宇宙観察も宇宙ロケットを支えている技術の基礎が計測技術である。ほかにもこのような事例をあげることができる。どのような分野のどのような事柄であろう。

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