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日本計量新報 2014年5月25日 (3011号)

計測の精密さの連鎖の視点から計量器を眺める

世界のどこで計っても1キログラムは1キログラムであるようなしくみとして計量制度はできていて、この元になっているのが計量制度に関する国際条約であり、その一つとしてメートル条約がありここではメートル法の完成形としての国際単位系(SI)を加盟国が用いることが約束されている。SIは国際単位系を表現するフランス語の「Le Système International d'Unités」の略称で、読み方はエス・アイである。SIの基本は10進法であり、分野別に使われていたさまざまな単位系を統一して一量一単位を原則としている。
 計量の国際的な整合を確保するための組織として国際法定計量機関(OIML)がある。OIMLは「Organisation Internationale de Métrologie Légale」「International Organization of Legal Metrology」の略称で、オー・アイ・エム・エルと読ませている。計量単位を国際的に統一するだけでは、計量器の国際貿易における技術障壁を除去することはできないので、国の計量器の技術基準および適合性評価の手続きを国際的に調和させている。法定計量規則を整合化して計量器を含めて計量の国際的に共通性を持つことにより、国際貿易の円滑化を図る。そうしたことを目的にOIML条約ができており、日本を含めた主要先進国がこれに加盟している。
 計量が国際的に整合性がとれているしくみは、技術的な視点でみるとトレーサビリティが実現している姿としてとらえることができる。OIML規格に適合した計量器は取引と証明分野に使われ、スイスでの1キログラムも日本での1キログラムも同じ1キログラムとして計量できるようになっている。法定計量分野の日本におけるハカリなどの特定計量器の計量の精密さの実現の連鎖は総合してみるとトレーサビリティシステムであるということができる。計量計測のトレーサビリティとは、計測の精密さのつながりのことである。むずかしくいうと「個々の校正が測定不確かさに寄与する、文書化された切れ目のない校正の連鎖を通して、測定結果を計量参照に関連付けることができる測定結果の性質」である。これがISO/IEC Guide 99:2007が定めた定義である。トレーサビリティという言葉は、「起源・跡をたどれる」「事・物が写せる・描ける」という意味の形容詞「traceable」の名詞「traceability」である。
 計量法による特定計量器の検定の器差は、取引と証明の分野で用をなす程度に設定されている。肉や惣菜(そうざい)を買う人が目方にこのぐらいのバラツキがあってもしかたがないと納得ができるレベルである。特定計量器の検定は指定製造事業者制度によってメーカー自己検定をする方式が普及しており、ハカリ、電力量計、ガスメーター、水道メーター、タクシーメーター、電子体温計、電子血圧計などの量産型の計量器の多くは自己検定方式によって製造されている。
 計量器は検定万能主義の時代が長くつづいていた。取引と証明に用いられるほとんどの計量器がメーカーからの出荷時には検定合格品であることが求められていたのである。検定制度にのらない計量器の公的な精度確認方式の一つとして昔の計量研究所では、依頼試験などによって精度証明をしていた。計量研究所による単独で個別的な精度試験には対応力ほかで制約があり、これに類する試験あるいは校正を民間の事業者により実施されてきた。このような校正業務に計量法の裏付けを持たせることを企図して創られたのが計量法トレーサビリティ制度である。規定を満足する校正設備と校正技術と知識などを有する校正事業者の能力を審査し認定し、計量法トレーサビリティ事業者として登録するしくみである。
 この認定・登録を国際的に通用させるのが国際MRA対応認定事業者制度である。国際試験所認定会議 「InternationalLaboratory Accreditation Conference」(ILAC、アイ・ラック)による、相互承認協定 「Mutual Recognition Arrangement」(MRA、エム・アール・エイ)である。2011(平成23)年1月末現在、計量法トレーサビリティ認定事業者233事業所のうち国際MRA対応認定事業者は188事業所で、MRA契約率は81%である。計量法トレーサビリティ認定事業者制度は英語表記で「Japan Calibration Service System」としており、その略称は「JCSS」であり、ジェイ・シー・エス・エスと呼ぶ。
 計量器は計量法をもとにした計量制度による検定制度などによって、性能の担保がなされている。JIS制度は計量器にもかかわっており、巻き尺、ノギスほかで、この規格に適合した製品は規格の内容の範囲で性能に信頼がおかれる。計量器の製造事業者は国家標準とある精密さで連動しているように計量器をつくる。ある精密さはこれを精度といって日本人には馴染まれていて、計量器や計測器の精密さは精度なのである。その精度はいろいろな方法で確認することになるが、精度を確認する行為を校正という。この校正には計量器メーカーがおこなうもの、ユーザーがおこなうものなどがあり、JCSS制度に基づく登録事業者の校正にはJCSSマーク付きの校正証明書が付けられてるようになっており、多くの校正事業者はこの校正証明書が国際的に通用するMRA契約を選択している。ごく身近な普通の計測にJISマーク付きの計量器を使うときにはこのJCSSマーク付きの校正証明書が必要とされることは少ない。そのようなことよりも計測にあたっては、計測器はどの程度の精密度をもっていて、その測定方式でよいのかと問うことの方が大事である。

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