計量新報記事計量計測データバンク会社概要出版図書案内
2014年5月  4日(3009号)  18日(3010号)  25日(3011号)
社説TOP

日本計量新報 2014年5月18日 (3010号)

意識の空白は行動にも空白をもたらす

地震と津波のこと、この災害に2011年3月11日に遭ったばかりであるのに、人はこの教訓を忘れたようである。2014年2月の関東地方の大雪による農業被害を想定する力がこの日本の国にはなかった。NHKテレビは雪によって商店街のアーケードが壊れて落ちたことを繰り返し報道していても、農業施設などへの降雪被害の恐れを口にしなかった。国とその関係の機関が積雪による被害とその対策のことを気象の状況にあわせて警報をだして、しかるべき対応をしていたならば、その後の復旧支援の貸し付けや補助といった出費を押さえることができた。
 気象の把握とその気象としての大雪による災害からの知見と、連動する防災体制が作られ機能していることが求められた。ニュース報道からは関係する組織にこのことの反省がない。したがって大雪があれば同じような被害が繰り返される。ハウスの雪による損壊も地域の公共団体の警報とすべての手を動員して雪下ろしをしていれば被害を少なくするのに有効であった。そうした警報をだせば、対応にあたる人に犠牲がでるから控えたなどと考えるのはうがちすぎである。
 台風、竜巻、火災、地震と津波そして交通災害などへの備えと対応は、この国に住む人々の暮らしに欠くことはできない。地震と津波への対応については、グラリとくればテレビが警報を発することになっているが、やたらにこの警報がでるので人の反応は鈍くなっている。津波のことは千年に一度の規模のものであるということになっているが、三陸地方のいくつもの地域で丘の相当に高い場所にここから下に家を建てるなと石碑に刻まれているのを無視して街がつくられて、渚を埋め尽くしてその突端に港湾が築かれ、国道が沿岸線に延びていった。地球より重い命をないがしろにして、うたかたの夢に似た暮らしをそこでしていた。
 国の守りのための軍備と戦争の連携のことが総理大臣の意識になっていて、この意識の命ずるところでの行動は明確である。人と組織は意識にもとづいて構想し行動する。しかし意識すべきことに気づかずにいることが多く、意識していない部分は空白になり、ここに危機の穴が掘られている。化学工場での爆発事故、自動車の不備への対応のための大量のリコール、誤った計量と商品の量目不足といった事柄は、意識の空白がもたらしているといってよい。
 計量制度が確立されていて、その法律による計量行政の円滑な実施は、この国の人々の暮らしと経済と文化を支える基盤をなす。計量制度と計量法の施行と計量行政の実施に関係する部署で意識の空白ができていれば、行動が対応しないことになり、そこに危機が発生する。地方公共団体における計量行政事務の計量法との不整合をいくつもみる。環境省は犬の飼育に関係して、その飼い犬は子供を生むのであるから、飼い主は登録して、犬の販売に関係した講習を年に一度受けろという。行政機関の狂的な事務執行と、計量行政を対比すると、後者の側には意気込みの不足があり、あるいは計量法とそれに基づく計量事務の内容を知らないのではないかと疑念を抱くことになる。

※日本計量新報の購読、見本誌の請求はこちら


記事目次社説TOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.