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すべての製品に革新技術を

大和製衡(株) 川西勝三社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2013年6月30日 (2970号)2面掲載

技術の電子化による経営リスクの増大

−−計量計測機器業界でも同じようなことが起こっているということですか。

計量器も出発はメカ技術

そうです。たとえば、天びんの起源は紀元前約5000年頃といわれていますが、計量器もそのスタートはメカ技術です。精密な天びんをつくるためには、天びんの支点の刃受けの機構など、職人的なノウハウを必要とします。そのため、歴史的な企業が多く存在してきました。

メカ技術の重要性の減少

ところが、質量計を例にとると、ストレンゲージ式のロードセルなどによる質量センサーの電子化の進展で、かつてはあれほど大きな比率を占めていたメカ技術のノウハウの重要性が大きく減少しました。
 その結果、世界の計量業界の主力企業のサバイバルという状況変化が起こっています。

料金はかりの登場

これも例をあげます。第1は、料金はかりです。従来の取引用の計量器は質量をはかることのみの計量器でした。ですから、お店は、お客様に対し、計量した質量に、そろばんで単価をかけて、料金を示していたわけです。
 それが50年ほど前に、電子化によって、質量計に料金計算機構をつけた料金はかりが売り出されました。これは世界中で受け入れられて、急激に市場が拡大しました。料金はかりが、新たなる計量の文化になったのです。
■だれでもつくれるものに
 しかし、この料金ばかりもロードセルと指示計でなりたっており、メカ部分の比重が低下しています。したがって、だれでもつくることができるわけです。
■価格は50万円から数千円へ
 料金ばかりができたころは、価格が50万円ほどでした。これが電子化による量産化、低価格化により、現在では中国製で価格が数千円の料金はかりも登場しています。
 これは、電卓やカメラと同じで、メカ技術の比率低下によって自ら首を絞めることになっています。

体脂肪計も同じ道たどる

第2が、体脂肪計です。これまでの体重計は、ただ体重をはかるだけのはかりでした。ところが、よく考えてみると、体重をはかる目的は健康を維持増進するためですね。
 人は健康になりたいがために体重をはかるのです。そこで、単なる体重だけでなく、体の組成がどうなっているかも測定できるようにしたのが、体組成計です。
 しかし、これも基本的にはロードセルと指示計でなりたっています。したがって、いずれ東南アジア製、BRICs製の低価格の体組成計が市場に数多く出回るようになるでしょう。同じ道をたどります。

天びんもほとんどが電子式に

第3は、天びんです。先ほども申しましたが、天びんは紀元前5000年ほどに発祥し、当初はメカ構造でした。ですから、精密な天びんは、支点、歯受け部分などに匠の技が必要でした。
 ところが、これも電子化して、今や天びんのほとんどが電子天びんです。センサーの方式はいくつかありますが一部の可動部分を除けば、電子式のセンサー部分と指示計でなりたっています。匠を必要とするメカ技術がなくなっています。
 だれでもつくれる製品になってきました。天びんも同じ道をたどっているのです。

台ひょうや斜面はかりも同じ

第4は、台ひょうや斜面はかりです。これも昔はメカ技術の製品で、匠の技術を持った職人が多数関わっていました。
 しかし一部を除いて、これも電子化により天びんと同じ道を歩んでいます。

トラックスケールもセルと指示計

トラックスケールやホッパースケールなどの工業用計量器をみてみると、これらは製鉄、化学、窯業などの分野の生産設備として貢献している計量器です。しかし、これも例外ではありません。ロードセルと指示計で構成されています。

経営リスクの増大

このように質量計の世界でも、すべてにおいて、電子化(高度化)により、経営的なリスクが増しているのです。

革新技術で画期的ユーザーメリット創造(1)

−−100周年を見据えた大和製衡の経営方針をお聞かせください。

200周年見越した100周年

大和製衡は8年後に100周年を迎えます。わたしは、これは200周年を見越した100周年だととらえています。したがって、今からどういうふうに100周年を迎えるかということを考え、正しい道を歩んでいく必要があると考えています。

革新技術で本業を変革

大和製衡の経営方針は、いつの時代においてもいつも同じ経営方針で、高い革新的技術で本業の中身を変革していく、というものです。

公益的事業

けっして本業以外には手を出しません。それは、計量計測器メーカーの事業は、単位を守ることによって社会を守る役割を担っている公益的な事業だからです。

すべての製品を革新

大和製衡は、生産している一般用計量器、工業用計量器の全製品において、革新技術で画期的なユーザーメリットを創造していきます。

8合目まできた

100周年に向かって、すべての製品に革新技術が存在するという状況を創りあげていきます。現在は、その8合目の段階にあります。

思考の変革

「すべての製品に革新的技術を」ということになると、まず、「そんなことはありえない」という思考風土を変えていかなくてはなりません。

技術的骨子

大和製衡の技術的骨子は次のようなものです。
 @革新的メカ技術
 A革新的制御技術(メカ制御と電子制御)
 Bセンサー技術・処理技術
です。

コンテナ車の横転が社会問題に

これも事例をあげましょう。第1は、トラックスケールです。輸送分野においてトラックスケールは、過積載を防止することで交通・輸送の安全に貢献しています。しかし現在、コンテナ車の横転事故が大きな社会問題になっています。
 問題は、横転事故は積載量がオーバーしていなくても起こってしまうということです。その原因は、偏荷重と重心位置にあります。積載物の荷重が偏っており、重心位置が高いと、曲がる際や横風が吹いたときに横転しやすくなります。

偏荷重と重心位置を測定する技術

それを防止する大和製衡の画期的技術が偏荷重と重心位置を測定する技術です。この技術をトラックスケールに組み込みました。

ニーズに革新性を

これは計測の新しい方法であり、ニーズへの革新性を起こす事例です。

処理能力と計量精度の画期的増大

革新的技術の例をもう一つあげます。パッカースケールです。パッカースケールは、ペレットや米、麦など、粉体、流体、粉粒体などの原料を所定量にするとともに、容器に充填する装置です。
 大量の計量・充填処理をしますから、処理能力と計量精度がとても大事です。従来は、処理能力は1時間あたり1200袋、精度は25kgで25g(1/1000)が限界だといわれていました。
 しかし、大和製衡が画期的技術を投入して開発したパッカースケールの処理能力は1時間あたり2000袋以上、精度は25kgで5g以下を実現しています。メカ技術と電子的な制御技術の革新です。ドイツで開かれたインターパックに出品し、大きな反響がありました。

環境効果も期待できる

従来の発想では、計量計測機器において能力と精度は相反する関係にあります。処理能力を上げると測定精度は落ちるわけです。しかし、わたしはそうは考えていませんでした。能力も精度も上げることは可能です。当社が革新的技術で開発したパッカースケールはこのことを実証したわけです。
 今紹介したように、パッカースケールのような定量はかりでラインの能力がこれまでの2倍になれば、2ラインを1ライン化することができます。土地・建物、エネルギーコスト、人件費を半減できるわけですから、環境効果も含めて期待できます。

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