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長期的視野持ち業績伸ばす
(株)タニタ 谷田千里社長に聞く(2)

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2010年11月7日 (2845号)3面掲載

ニーズ取り込み、注目製品開発

携帯型デジタル尿糖計「ユーチェック」

短期的な戦略も推進しています。お客様のアンケートから生まれた製品が「携帯型デジタル尿糖計」です。小型で持ち運びに便利です。気になる食後高血糖を外出先でもチェックできる優れた製品です。現在は「ユーチェック」という名前で販売しています。

宣伝方法も工夫しています。医療関係機器は宣伝が規制されていてやりにくいのですが、保険会社と提携して販促をしています。

売り方も変えて工夫しています。
 「ユーチェック」は、現在はクラス<CODE NUMTYPE=SG NUM=8A60>の「高度管理医療機器」ですが、この医療機器のクラスを変えてもらおうという動きもやっています。

医療機器認可も取得

医療機器の認可の関係では、「腹部脂肪計」が、認可を取得して販売できるようになりました。医療認可では苦労しました。「腹部脂肪計」も私自らが試験データの説明もし、開発意図もお話して、誤解を解いてもらい、認可にこぎ着けました。

話題を呼んで各メディアで大きく取り上げられた「睡眠計」も、医療機器認可で苦労しましたが、クラスIの一般医療機器として販売できるようになりました。
 短期的戦略も効果が出てきています。

シェア伸びている

短期的戦略がどのくらいの効果を挙げているかははっきりはつかめませんが、有力な調査会社であるGfKマーケティングサービスの市場調査では、タニタのシェアが伸びています。

日本の人口はこれから減少していきますから、売上を伸ばすには、他社のシェアを取るしかありません。短期的にはそういう思いでやっています。今後も短期戦略と長期戦略を組み合わせて進めていくやり方は変わりません。

諦めずにとことん追求

アメリカ時代の上司の影響も

−−社長自らが先頭に立ち、率先して動いておられますね。

私はもともとコンサルタントをやっていましたので、自分から動かないとお客様は獲得できませんからね。ですから、自分ではそれが普通だと思っています。

タニタアメリカ勤務時代の上司(社長)の影響も大きいですね。このアメリカ人社長の働きぶりが半端ではありませんでした。ここまで働くか、という感じでした。それで、業績も改善しました。タニタアメリカは当時赤字だったのですが、その社長のもとで黒字に転換しました。戦略を作って製品を売るのですが、売れるまで諦めずにとことん追求するわけです。その姿を見て「ああ、ここまでやれば成功するのだな」と思いました。

 

トップが率先して動く

私は、これが経営者の正しいあり方なのだなと思い、私のビジネスにおける標準モデルにしようと思いました。ですから、社長就任以来、私も辛くて休みたいなと思うこともありますが、トップが率先して動くようにしています。

それが社内改革の一種でもあります。この背中を見て動いてくれる人が、増えてきました。言葉だけで頑張れと言っても信頼感がないですから、一緒に頑張るようにしています。

 

「こだわり」がよい製品を生む

 レシピ本に関する私の「こだわり」なども、こういうところから来ているわけです。製品に対する「こだわり」などは、徐々にですが、組織に浸透してきていると思います。なかなかよい企画が生まれるようになってきました。

「ブレスチェッカー」という製品があります。これは口臭のレベルを6段階に数字と顔マーク(アイコン)で表示するのですが、今回の製品は使えるドット数の制限もあって、顔マークだけではその判別が分かりにくかったのです。これは数字のレベル表示に頼りすぎて、顔マークだけでも判別できるようにするという工夫が足りなかったからです。私は、こういう細かなことにこだわることが、お客様の心に響く製品を作るためには必要だということを話しました。

こういう改革はこつこつ進めていますので、今後出る企画や製品には、ここまで考えたかというものが出るようになると思っています。

 

足元を固める

 −−今後の方針の重点は何ですか。
 一つは海外進出です。今更何を言っているのかと笑われますが、進めていかなくてはなりません。もう一つは、そのためにも足元をしっかりと固めておかなくてはなりません。営業的にも、従来からのお客様をもっともっと大事にし、お客様の声をよく聞いて、細かく対応していかないといけません。

どちらも中途半端ではダメだと思います。

 

飛躍のための力は蓄えた

必要なツールも使ってスピードアップ

 −−製品開発のスピードもアップしているように思いますが。

思うほどにはアップはしていないのですが、プロジェクト管理のツールなども使って、開発のスピードを上げるようにしています。ツールを使えば、仕事の順番やムダが明確に分かります。私が自分で使ってみて確信がありましたので、まず、2名の社員に実際に使ってもらい、習得してもらいました。その結果、改善が進んでいますので、開発のスピードはまだ速くなります。

アイテム数も必ず1番に

ライバルには必ず勝たなくてはなりません。アイテム数でも当然、当社が1番になるようにしています。全体的には、ライバルに比して圧倒的なアイテム数ですが、部分で見ると、まだ負けているところもあります。圧倒的にシェアを取っているカテゴリーでは、アイテム数でも圧倒しています。ですから、必ず1番にならなくてはいけません。


付加価値を付けた製品を出す

手頃なお求めやすい製品をもちろん数多く提供しますが、付加価値を付けた製品を出していきたいと思います。

−−どういうカテゴリーの製品を開発していかれるのですか。

主には健康に関連する分野です。ただ、すでに開発した画期的な製品、たとえば先ほどお話しました携帯用デジタル尿糖計や腹部脂肪計、睡眠計などがありますから、これらの販売にも力を注いでいきます。

 

オフィスをリニューアル

本社とR&Dを改修して、一つに統合します。きっかけは耐震構造の建物にすることです。これは必ずやらなければなりませんので、その際、リニューアルして2つを統合することにしました。9月の2週目くらいから工事にかかっています。来年の4月には完成します。

 

完全ペーパーレス化

今度のオフィスはレイアウトフリーにします。さらにキヤノンと協力して社内を完全ペーパーレスにします。紙を置く場所は作りません。これはすでに進めていて、1カ月で30万円ぐらいコスト削減できています。加えてペーパーレス化で文書管理のセキュリティも強化されます。情報の共有化を進めて、ナレッジマネジメント(Knowledge management)を徹底していきます。

 

内部的に力を貯めてきた

私は、さらなる飛躍のために、内部的に力を貯めようということを就任以来やってきました。この3年間である程度それは達成できたと思います。来年の4月で一区切りです。

製品も、揃いました。この力を、今後の飛躍につなげていきたいと思っています。

−−ありがとうございました。

 

 

 

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