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質の高い製品を東南アジアで供給したい

(株)田中衡機工業所 田中康之代表取締役社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2014年12月14日 (3037号)2-3面掲載

常に新技術・新製品を提供(2)

洗浄性抜群のツインコネクト

3つめは、ツインコネクトというステンレスの計量器です。この製品は、水を使う食品関係や、床を掃除したいというニーズに応えるものです。ツインコネクト
 じゃぶじゃぶ水を使うようなところなどでの使用に適しており、計量器本体を簡単に移動させられますので、床面を簡単に洗うことができます。
 そういう要望が強い食品加工、水産加工、薬品、サプリメント、化学工業などでお使いいただいています。
 ひょう量が600kg、1500kgの製品は検定付ですので、取引・証明にお使いいただけます。

「HIRAKAWAシステム」を提案

トラックスケールに対する雷対策から派生して当社が扱っている製品を紹介します。このシステムは雷を検出して雷から設備を守る製品、避雷システムです。
 電源開放型雷対策「HIRAKAWAシステム」といいます。HIRAKAWAシステム
 当初はトラックスケールが雷で壊れることがあるので、雷対策としてお客様に提案させていただきました。デジタルロードセルは雷に強いのですが、まだまだアナログロードセルを使ったトラックスケールをお使いのお客様がたくさんいらっしゃいます。そこで、雷からトラックスケールを守るシステムということで提案しています。

避雷のしくみ

避雷のしくみを簡単に説明します。雷(直撃雷および誘導雷)から工場や工場設備を守る最もシンプルで効果的な方法が「電源開放」と「サージバイパス回路」を組み合わせたもので、「電源開放型雷対策システム」といいます。
■電源解放とバイパス回路で設備を守る
 電源開放とは、雷が落ちる前にパソコンの電源ケープルをコンセントから抜くようなものです。雷の影響により発生する過渡的な異常高電圧を雷サージといいますが、電気設備へ雷サージが侵入する経路を物理的に切断(開放)する方法です。
 ただし、雷の電流は瞬間的に少なくとも1万、大きなものだと50万アンペアにも達し、これは人の致死電流量の20万倍以上です。このためサージを計画的に安全な経路へ流す目的で、サージ用のバイパス回路を組み合わせる必要があります。
 このシステムは「雷防御ブレーカーシステム」や「対雷自動ブレーカ」とも呼ばれています。雷を感知すると、サージの侵入経路である主電源から機器を切り離し、UPS(無停電電源装置)や発電機などのパックアップ電源に切り替えることで、雷サージを完全に防ぎながら、設備への電源供給をも継続させるシステムなのです。図を参照していただければしくみはおわかりいただけると思います。

何がすぐれているのか

雷対策として大きな効果を発揮するこの「HIRAKAWAシステム」は、広島の(有)平川製作所が開発したシステムです。
 「HIRAKAWAシステム」の特徴は3つあります。
 第1は、高精度の雷センサーを使用していることです。気象観測機器防御用センサーとして国産品で唯一、気象庁に認定されています。
 第2は、雷安全基準UL1449(3rd)適合システムであることです。「HIRAKAWAシステム」で使用するSPD(サージ防御デパイス)は、特にUL(アメリカ保険業者安全試験所)要求にある「直撃雷を受けても爆発や出火しない」という基準を世界で初めて実証されたもので、世界初のUL認証品です。GE社製ですが、HIRAKAWAが国内特許を持っています。
 第3の特徴はコストを抑えられることです。一般的な、SPDのみの雷対策に比べ、HIRAKAWAシステムは、保護性能が高いだけでなく、設置コスト、ランニングコストを低く抑えることができます。

故障の許されない施設で広く採用

優れた特徴を持つHIRAKAWAシステムは、国内では、電波送信所、空港管制塔、海上保安庁管理灯台、鉄道中央制御システム、また最近では、雷雲のなかを直接観測できる東京スカイツリーの雷電流測定システムなど故障の許されない大規模公共施設で広く採用されています。海外でも、雷センサーが、米国航空宇宙局(NASA)宇宙関連システムで10カ所採用されているほか、米国やドイツの航空管制塔でも67カ所採用されるなど海外の公共設備でも広く採用されています。

雷による事故や火災、設備被害の減少に貢献したい

このような優れた特徴を持つHIRAKAWAシステムを田中衡機工業所の販売ルートで普及できればと思っています。現在、避雷が必要な設備を持つ企業に試験導入させていただいています。
 現在、日本で世界基準適合雷対策を提供できるのはHIRAKAWAシステムだけですから、今後は、積極的に、世界基準のHIRAKAWAシステムを日本の企業へも紹介・普及させる事で、国内の雷による死亡事故や火災、設備被害の減少に貢献したいと考えています。

東南アジアに力注ぐ

ーー今後、どのような計画を考えておられますか。

ビフォーメンテナンスの実現

1つは、当社の柱であるトラックスケールやフロアスケールは、今後もつくり続けていきます。
 その場合でも従来どおりではなく、先ほど述べましたリモートチェッキング、すなわちリモートで故障前に兆候を発見して事前に対処するしくみ(ビフォーメンテナンス)づくりに取り組んでいきます。

東南アジアの日系企業へ営業

東南アジアでは、ベトナムを中心に、現地に進出している日系企業への営業活動を始めています。今、日系企業のなかに、現地製の安い機器は、精度や耐久性に問題があるものも多く、信頼性がある日本製品を使いたいという要望が高まっています。ただ、日本から輸入すると価格が高くなります。
■当事国の型式承認を取得する
 そこで、信頼性が高い日本品質ですが、現地のベトナムで生産している田中衡機工業所の製品に、興味を持っていただいています。
 東南アジアで販売をする場合、当事国の型式承認を取得する必要があります。ベトナムでは取得しています。今後、他の国々でも型式承認を取得していきます。
 メンテナンスも重要ですので、各国のメンテナンス事業者と提携していきます。将来的には、各国に当社の営業所を設置したいと思っています。
■信頼性があるはかりを提案する
 はかりは産業の基盤です。はかりがしっかりしていないと、ものづくりや物流などはうまくいきません。東南アジア各国で、信頼性があるはかり、計量器を提案していきたいと考えています。

各国のメーカーと共存はかる

それとともに、各国のはかりメーカーと共存したいと考えています。現地のメーカーのじゃまをせず、われわれができるところ、われわれにしかできないところは、田中衡機工業所にやらせていただくという姿勢です。

人のつながりを尊重して

東南アジアでは、情報も含めて人とのつながりが非常に濃いと感じています。ですから、「商売」を短絡的に考えるのではなく、こうした人のネットワークをを尊重しながらやっていかなくてはなりません。「お互いの信頼」がキーワードです。
 そういう活動をしていきますと人脈がどんどん広がっていきます。本当にいろいろな方と知り合いになれておもしろいし、ありがたいです。そして、現地の産業・企業を尊重しながらベトナムの産業発展に貢献したいというわれわれの明確な方針がわかってもらえると、さまざまに協力していただけます。東南アジアは人の気持ちが熱い地域だと感じます。

経済の現況

ーー世界や日本の今と将来を、どのように見ていますか。

円安の影響は心配

この国の巨額の累積赤字の状況がいつまで続くのか、懸念しています。これをどこかでクリアにするような抜本的な対策が将来的におこなわれるのだと思います。
 しかし、株や不動産などとは異なり、実業は大きくは変わらないと思います。はかりは産業にとってないと困る製品ですから、われわれがそれをつくり続ける限りは、どのような経済状況になっても、打開の道はあると考えています。
 ただ、円安の影響は心配です。材料の価格はかなり高騰していますし、当社がベトナムで製造したはかりを日本に輸入する金額もかなり上がっています。あまりにも円安になるのは困ります。

方向性が見えない

アメリカなどのように資源があって、それを商売にできるような国とは異なり、日本は、海外生産を除いては、外国から材料を買ってきて製品にして販売することしかできません。かつて日本が得意とした半導体や液晶パネル生産などで明らかなように、現在では、最先端技術も半年や1年で汎用技術となり、海外でも、日本よりも低コストで生産できるようになります。そうすると、日本の本当の力が今後何になっていくのか、真剣に見極めていく必要があると感じます。

地域として協力し合える関係に

企業戦略でいいますと、東南アジアの話をしましたが、東南アジアは1つの経済的なエリアになっていくと思いますので、この地域で伸びるための戦略が必要です。
 そういうなかで、現在は相互にいろいろな問題を抱えていてなかなか難しいとは思いますが、将来的には、アジア地域として各国が協力ができるチームワークを確立していくことが重要だと思います。

−−ありがとうございました。

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