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流れに価値を加える

(株)オーバル 谷本淳社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)第2部8-9面掲載

流量計製造から流体計測一般へ事業拡大

−−(株)オーバルはどのような会社でしょうか。

私どもの会社は、1949(昭和24)年5月10日に、前相談役名誉会長の故加島淳が東京都品川区東大崎で操業を開始したのが最初です。当時の社名は「オーバル機器工業株式会社」です。

オーバルギアを流量計に適用

加島淳が、元日産自動車2代目社長の村上正輔氏からオーバルギア(歯車)の特許を譲り受けて、これを流量計に展開して企業化しました。これが当社の創業になります。社名もこのオーバルギアから取ったわけです。

画期的な発明だった

このオーバルギアを使った流量計をオーバル流量計といいますが、この流量計は現在も生産しており、現役で使用されています。そのくらいオーバル流量計は画期的な発明だったわけです。

1992年、(株)オーバルに

その後、当社は流体計測一般へ事業を拡大していき、1992(平成4)年、社名をオーバル機器工業株式会社から、「株式会社オーバル」に改めました。

ISO9001、14001を取得

1994(平成6)年、当社の主力工場である横浜事業所が、品質システムに関する国際規格ISO9001を認証取得しました。横浜事業所は、2006(平成18)年には環境マネジメントシステム規格ISO14001を認証取得しています。同年、本社もISO9001を認証取得しています。

JCSS登録を取得

2006(平成18)年9月には、計量法校正事業者登録制度(JCSS)に基づく登録を取得しました。分野は流量・流速で、校正手法の区分では、液体流量計(石油用流量計)と気体流量計(気体用流量計)です。

石油用流量計のJCSS校正ができる

このなかでとくに石油流量の分野は、技術的にも装置的にも難しい部分がありますので、これを取得しているのは当社を含めて3社のみです。

−−オーバルの理念はなんでしょうか。

オーバルを支え、育てる人々のために存在する

当社の創業当時からの存在意義は、「オーバルは、オーバルを支え、育てる人々のために存在する」ということです。
 オーバルを支え、育てる人々というのは、お客さまであり、株主さまであり、金融機関であり、提携会社、従業員などです。

社会への貢献

当社には「流れに価値を加えます」というコーポレートメッセージがあります。われわれは、水や空気、油、蒸気など、世の中のさまざまな流れを測ることによって、社会に貢献しています。

−−オーバルの事業を紹介してください。

「センサ事業」「システム事業」「サービス事業」の3本柱

オーバルの事業は大きく分けると、「センサ事業」「システム事業」「サービス事業」の3本柱で構成されます。
 センサ事業は、流量計をはじめとする計量計測機器および関連諸機器の製造販売です。当社はオーバル流量計からスタートして、現在は7種類の測定原理の流量計を生産しています。
 システム事業は、流量計を中心としたシステムです。たとえば焼き肉のたれなど、醤油、酒やみりんなどをブレンドして充填するなど流体計測制御に関連する製造、出荷。また、流量計を試験するための装置。検査、分析等のシステム装置の設計、開発、販売、施工などです。
 サービス事業は、納入した製品のフィールド対応として、試運転、調整、修理、メンテナンスに対応しています。技術革新で流量計から可動部が少なくなってきていますので、修理関係の仕事は減る傾向にあります。そこで当社はJCSS校正などの流量計を検査、校正するビジネスを強化していきたいと考えています。

オーバルの拠点

オーバルの国内拠点は、東京都新宿区にある本社と、神奈川県横浜市にある横浜事業所です。横浜事業所には流量計の生産設備、検査設備、購買、技術、研究開発などの部門があります。敷地面積は、3万3000平方メートルあります。
 営業拠点は、日本全国に14カ所、サービス拠点が4カ所あります。

グローバル展開はかる

オーバルはグローバル展開をはかっています。海外の関連会社は、東南アジアを中心に韓国、台湾、中国、シンガポール、タイ、マレーシア、オランダにあります。
 中国には生産工場もあります。今までは、製品のコストダウンに大きく貢献してきましたが、今後は中国市場への展開をもっと強化していきたいと考えています。

「超音波流量計」を4本目の柱に

−−主力製品にはどんなものがありますか。

7種類の流量計を製造・販売

センサ事業では流量計が中心になります。測定原理で分けると、「容積流量計」「渦流量計」「超音波流量計」「電磁流量計」「タービン流量計」「コリオリ流量計」「熱式質量流量計」の7種類の流量計を製造・販売しています。

「容積」「渦」「コリオリ」で90%占める

オーバルでは、「容積流量計」「渦流量計」「コリオリ流量計」の3種類で、当社の流量計の売上の約90%を占めています。

コリオリ式が伸びている

このなかでもコリオリ流量計の売上が伸びています。容積式からコリオリ式へ徐々に替わってきています。コリオリ式の特長は、可動部がない、高精度で質量計測ができるなどです。また、密度も測ることができます。これらの特長から、コリオリ流量計には大きな可能性があります。

「超音波流量計」を育てる

今後は、「超音波流量計」を4本目の柱に育てていきたいと考えています。世界的にみると超音波流量計は伸びています。日本国内はこれから伸びていくところです。
 流量計とともに使用する電子機器もあります。たとえば気体は、温度や圧力が変化すると膨張、収縮しますから、温度と圧力も測定して補正する必要があります。そういった電子機器をラインアップしています。

超音波式の売上を伸ばす

超音波式は現在のところ、わずか2・7%です。これを伸ばしていこうというのが当社の戦略です。

高精度のPsonic-L4Psonic-L4

新製品の液体用の超音波流量計がありますので紹介します。この流量計は東京計器(株)との共同開発です。東京計器さんは日本で初めて超音波流量計を開発した会社です。われわれの石油計測技術と東京計器さんの技術をコラボレーションして開発した、石油類の計量に適した、液体用マルチパス超音波流量計です。測定用センサが平行して4対ある4パスなので高精度です。精度プラスマイナス0・15%RDを実現しました。
 高精度の石油取引用の超音波流量計ですので、当社のJCSSの校正設備とも相乗効果があります。プロセスコントロール、大規模な流量計測・校正システムに適しています。
■省エネ効果が期待
 超音波流量計は、可動部がないのでメンテナンスフリーであるとか、圧力損失がほとんどないという特長がありますから、省エネ効果が期待できます。今後、容積流量計から超音波流量計へ徐々にシフトしていくと思います。「超音波流量計」を4本目の柱に育てていくことが一番の戦略です。

流量と熱量が測れる超音波熱量計超音波熱量計

もう一つ紹介します。超音波流量計と熱量演算器(EL4801)を組み合わせることで流量だけでなく熱量も計測できる、高速応答型の天然ガス用「超音波熱量計」です。
 天然ガスは産地によってガス熱量が異なるため、ガス熱量を調べた後、ガス熱量が基準値に収まるようにLPGを添加します。この時、ガス熱量の測定は主にサンプリング方式でおこなわれていますが、超音波熱量計では、オンラインでガス熱量を測定することができるため、ガス熱量の調節を時間遅れなく、かつ短時間におこなうことができます。
 超音波流量計は、超音波の発信と受信を繰返しおこない、流れに対して順方向の超音波と逆方向の超音波の伝搬時間の差で流量を測定します。この時、超音波の伝搬距離が一定なので、音速も知ることができます。一方、ガス熱量は音速と相関関係にあることがわかっています。これらの原理を利用して、流量とガス熱量を同時に測ることが可能となりました。
 超音波流量計は用途にあわせて、シングルパスのPsonic-1とマルチパスで高圧の天然ガスやエチレンガスなどの取引計量に適している高精度形のFLOWSIC600から選択できます。

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