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グローバル展開で国際競争に勝つ

長野計器(株)依田 恵夫 社長インタビュー

聞き手は高松宏之編集部長

vol.1

日本計量新報 2014年1月1日 (2993号)第1部4-5面掲載

経済状況はまだ不安定

−−現在の経済状況をどう見ていますか。

米国の状況に左右される

計量計測機器業界では、全体的に見るとまだまだ厳しい状況がありますね。たしかに銀行や証券会社などは、円安や株高により景気がよくなっているでしょうが。
 私が懸念しているのが、世界の経済状況が米国のFRB議長の発言如何ですぐ変化してしまう不安定な状況です。せっかく日本もアベノミクスにより景気回復の兆しが見えてきていますから、それがこういうことで左右されるのは困りますね。

円安は収益向上に貢献

円安に関しては、大手自動車会社などには非常にプラスになっていると思います。当社は、国内から海外への輸出はあまり多くありませんが、それでも円安の効果は出ており、収益の向上に貢献しています。

しばらくはこのままの状態が続く

米国の景気回復が本物なのかということに対しては、まだまだ不安要素があると思っています。ですから、私はしばらくはこのままの状態が続くのではないかと思っています。これまでより劇的に売上高が増えるということはしばらくは望めないでしょう。消費税率のアップというような問題もありますから、全体的にはもう少しよくなってそのまま安定するということでしょうか。
 現在、国による資金援助や税制優遇策が実施されています。この施策は上手に活用していかなくてはなりません。

「環境」「保安」「安全」に役立つ製品を供給

−−そういうなかで、長野計器の方針の基本はなんでしょうか。

これまでとは違う商売が必要

こういうまだまだ厳しい状況にあるなかで、われわれもいろいろな方策を採っていかなくてはなりません。今までの商売の形とは違った形にしていかなければならないと思っています。

日本的心遣いを商品に活かす

「日本品質」とか「日本のサービス」いわゆる日本的な心遣いを商品に活かした商売をしていかなくてはなりません。海外からの商品が日本市場にかなり入ってきていますが、その多くはやはり売りっぱなしという状況ですね。そうではないきめ細かなサービス、心遣いができる日本製品をアピールしていくことが必要です。

「技術立社」掲げて

それとやはり技術に注目しなくてはなりません。私は日本の基礎技術はすばらしいものだと思っています。それをしっかり表面に出して、さらに磨きをかけて、伸ばしていかなければなりません。
 当社も「技術立社」ということを掲げて、技術開発に相当投資してきました。将来を見越してのものですが、これをしっかりと形にして、お客様に製品として提供していきます。
 国策としても、先端技術には惜しみなく資金も投入して、日本を研究開発の拠点にするという方針が打ち出されています。これは長野計器の方針とも一致するものです。

「環境」「保安」「安全」をキーワードに

長野計器は「環境」「保安」「安全」をキーワードに業務展開をしています。
 PM2・5による環境汚染の進行や、原子力発電所での安全、保安を脅かす事故などの発生をみると、これらのキーワードは現在社会においてますます重要な要素になってきていますので、われわれもこれに沿った事業を発展させていかなくてはなりません。
 「環境」ということでは、われわれは自動車用のセンサを供給しています。「保安」「安全」ということでは、当社の圧力センサは生産設備の保安・安全を確保するものとして重要です。
 今、燃料電池自動車が再び注目されています。東京モーターショーでも自動車各社が燃料電池自動車を展示しましたね。燃料電池の高圧水素エネルギーの関連では、当社のセンサや圧力計が使われています。これなどもキーワードが指し示す重要な事業です。
 ですから長野計器は、これらのキーワードを引き続き高く掲げて、これに見合う製品を開発してお客様に提供していきたいと考えています。

先人のさらに上をいく

−−昨年は、食品偽装なども大きな問題になりましたが。

倫理観をもった仕事の進め方が大事

偽装に類するものとしては、できないものをお客様に対してできると言ってみたりするということがあります。100個つくってそのなかの2個しかものになっていないのにできるといっている事例を見たことがあります。
 長野計器はコンプライアンスの問題は重視しています。コンプライアンス委員会を設置していますし、先日も、法務部が中心となって社内で研修を実施しました。これまでもそうですが、今後はよりいっそう、企業の社会的責任として、倫理観をもった仕事の進め方が求められていると思います。

優秀提案従業員を表彰

当社では、毎年5月と11月に、特許を取ったり、優秀な提案を多くした従業員の表彰をしています。
 最近提案が減ってきているような感じなので、少しはっぱをかけましたが、それは提案が多く出ると現場や従業員の励みになるからなんです。現場が活性化します。

−−改善などの提案は、やり尽くすと出なくなってくるのでは。

 

提案が出尽くすということはありません。私は「先人の技術をしっかり守って、さらにそれの上を行こう」ということを言っているんですが、1つの改善で一歩レベルが上がる、そうするとまた新しい課題が明らかになります。それを解決するとまた…というふうに、レベルが上がれば新しい土俵でまた改善課題が出てきます。必ず次があります。提案は永遠に続きますね。

新製品開発に力注ぐ

−−現在、どんなものを開発されていますか。

新センサの開発

当社はいま、新しいセンサを開発しています。現在のステンレス製のセンサの次の世代のセンサです。これはセラミックの基板を用いたセンサです。最新の印刷技術を使っています。(独)産業技術総合研究所(産総研)の御協力をいただきながら開発しており、2014年末には量産に入れると思います。目玉商品の1つです。

コスト低減

今までのステンレスセンサは、製造過程のなかでいかに効率よくつくるかということが問題でした。新しいセンサの場合は、コストを低減できる、また今までとは違ったやり方でつくるということで、設備費も節約できます。こういう新しい発想で取り組んでいるセンサです。

高精度や高圧センサの開発

コストだけではなく、これからは高精度なセンサ、高圧に強いセンサを開発していく必要があります。
 高精度ということでは、現在より1ケタ2ケタ上の精度のセンサを開発しています。高圧センサも開発しています。現在は200MPaに対応していますが、300MPaなどの高圧に対応するセンサを開発しています。これも2014年にある程度形になってくると思います。

FBGセンサ(ファイバーブラックグレーティングセンサ)

地殻変動測定などに活用できるものにFBG(ファイバーブラックグレーティング)センサがあります。これも2014年度には形になってきます。

伝統技術をきちんと受け継ぐ

こういった新しいセンサの開発に力を入れていきますが、一方で、長野計器は、日本の伝統技術をきちんと受け継いでいきたいと考えています。これは基礎技術ですから、新しい技術開発もこうした基礎技術がしっかりしていないと、結局はうまくいきません。

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