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「燃やす文化」から「燃やさない文化」へ転換を
ーすべてを正常に戻そう−
宮下 茂

(社)日本計量機器工業連合会 会長

vol.2

日本計量新報 2010年1月1日 (2803号)4-5面掲載

政治は国民の不安を取り除くこと


宮下茂 予算削減については、私はまず、個々の予算項目での、あれは廃止、これは残すということではなくて、一律に予算を1割削減すべきだと思います。100億円の予算で橋を造るのなら90億円でつくるように知恵を出し、工夫をする。これは工夫をすれば実現可能です。
 そして、拙速ではなく時間をかけて無駄がどこにあるのか検証していくべきです。拙速なやり方は禍根を残すことが多いと思います。私は政治というのは、重箱の隅をほじくるようなことではなく、日本が進むべき方向を示していくことだと思います。われわれの事業も同じです。
 これらはけっして難しいことではありません。すぐ実行できることです。そしてこれにより国民が抱いている不安を取り除くことができます。
 この前の戦争勃発の大きな要因は、石油の輸入がストップしたことです。それで石油確保のために日本は南方へ進出し、アメリカと衝突したわけです。
 今現在、日本の食糧の自給率が40%少々で、世界情勢の変化によって食料の輸入がストップしたらどうなるのだというような議論がありますが、以前の戦時中とは状況が違います。今は、食料に関しては自給率を上げる手段があります。私たちは風潮に踊らされることなく、自分の目で事実をきちんととらえて判断することが大事です。

無駄なエネルギー使用をなくそう


また、今は何かというとスピードを追求する世の中ですね。鉄道においてはリニア新幹線の計画が進められています。時速500<CODE NUMTYPE=SG NUM=5A03>で走行する超電導リニアモーターカーによって、ルートによって多少違いますが東京〜大阪間を約1時間で結ぼうというものです。在来の新幹線では、一番早いのぞみで約2時間35分の所要時間です。
 この時間差をどうみますか。今、巨大な経費をかけて、所要時間を1時間半短縮する必要があるでしょうか。そこには莫大なエネルギーの損失があります。われわれはこういうインフラ整備に慣れてしまっていますから、そういう矛盾を感じていませんが。
 昔は、東京から博多まで8時間かかっていました。しかし、それが分かっていれば、行動を起こす時間をそれだけ前に、8時間かかるなら8時間前に設定すればよいのです。昔は遠距離の出張はすべて夜行列車を利用して行きました。それでよいではないですか。無駄なエネルギーを使うことはありません。現状を一旦否定し、もう一度これでよいのかということを考える必要があります。
 われわれの生活様式も変える必要があります。日本人は農耕民族です。ですからこの基本に戻って、日が昇ったら起きて働く、日が落ちたら休む。こういう生活に戻したらどうでしょう。

生活スタイルも変える


今の都会は24時間昼間という状況ですね。この無駄を考えるべきです。こういう生活のスタイルを変えるべきです。
 経済への影響もあります。午後10時以降の使用エネルギーが減るとどうなりますか。環境問題を考えても、二酸化炭素(CO2)を減らすには、そういうことも考える必要があります。そうでなければ、CO2を2020年までに1990年比で25%、2005年比で33・3%削減して地球温暖化を防ごうという方針は実現できません。
 今、コンビニは24時間営業している店がほとんどですね。欲しいときにいつでも欲しいものが買える状況です。これも先ほどスピードの話で述べたことと同じに考えたらどうでしょう。夜の8時でコンビニが閉まるとなれば、閉まる前に必要なものを買うようになります。
 現状はたとえば夜10時に「おなかが減ったな、じゃあコンビニで何か買ってこよう」という状況ですね。それが、夜8時で店が閉まることが分かっていれば、閉店前に「いつも午後10時くらいにおなかが減るな。それじゃ、何か買っておくか」と計画的に買い物をするようになります。
 緊急に必要になるものもあるでしょうが、しかし、それはほんのわずかなものです。それはそれなりの対策を個別に講じればよいのであって、そのためにいつも24時間開店して、煌々と灯りを点け、細かく商品管理をし、人を配置し、その都度おにぎり1個からでも商品を補充する。こういうことはエネルギーの大きな無駄です。そのために、たとえば「おにぎり」1個にものすごいコストがかかっているわけです。
 生活スタイルを見直し、こういった工夫をしてエネルギーの無駄をなくすことは必要なことです。

すべてを正常に戻そう


 少し数字をあげますと、たとえば日銀が2009年11月12日に発表した10月の国内企業物価指数(速報、2005年平均=100)は、前年同月比マイナス6・7%の102・2でした。10カ月連続の前年比マイナスでした。
 企業物価指数は、企業間で取引される財の物価の変動を示すものです。2009年10月は、調査対象の855品目のうち、前年同月よりも下落したのは487品目(57・0%)に上り、過去最多でした。
 60%弱の品目の指数が下がったわけです。これが企業の利益を非常に圧迫しています。おしなべて給与やボーナスも減るということになるのです。個人消費も伸びません。悪循環になります。正にデフレスパイラルです。
 ここに手を入れるべきです。すべてを正常に戻すべきです。正常の基準は何かということは難しいことですが、あまり難しく考えないで、先ほど例にあげたコンビニやスーパーの24時間営業などのように「あれ、これはおかしいな」ということを普通の状態に戻しましょうということです。これでエネルギーの無駄の解消など、世の中は随分変わると思います。
 先ほども申しましたように、われわれは今まで、忙しさにかまけて手抜きをしてきました。効率ばかり追いかけてきました。今はこれを一つ一つメンテナンスすべき時です。


住まいも立て替えからリニューアルへ


 今、住まいも立て替えからリニューアルへと大きく方向が変わってきていますね。これはある意味では正常に戻りつつある例ですね。
 以前ですと、築年数が経過した家屋は、壊して建て替えるのが当たり前でした。それがリニューアルへと変わってきています。
 これにより資源の無駄が減ります。最近はリニューアルが事業として成り立ってきています。
 ヨーロッパは石の文化ですので、リニューアルという考え方は早くから浸透しています。石は耐久財です。管理をしっかりすれば500年、1000年でも充分保ちます。外観は補修をして変えませんが、室内は時代とともにリニューアルして、近代的な過ごしやすいものになっています。
 日本は木造家屋でしたので、立て替えというのが当たり前でしたが、現在は技術も発達しており、リニューアルによって、耐用年数を延ばし、快適さも確保することができます。リニューアルなら立て替えに比べて、半分から3分の1の費用で済みます。資源を無駄にしないで済みます。立て替えは、産業廃棄物を増やすことにもなります。
 ちなみに、私は好奇心が人一倍旺盛です。エコポイント制度も早速活用してみましたし、二酸化炭素削減と省エネということで、コージェネレーション設備も導入しました。エコポイント制度は手続きが面倒ですね。改善の余地があります。


経済は徐々に回復基調にある

助成制度のひずみが出る


 経済状況はまだまだ先が見えない状況ですが、回復基調にあります。
 エコカー減税やエコポイント制度の歪みが今後出てくると思います。
 2010年の10月に車検が切れる車を持っている所有者が、エコカー減税があるので10カ月早いが2009年の12月に車を買うことで早期購入となり、本来の2010年10月の買い換えが、助成制度で前倒しになっているだけです。したがってその歪みが、出てくるのではと思いますが、緊急経済対策により、エコポイントやエコカー購入支援を継続し、当初取りやめになっていた公共事業も地域のインフラ整備などで復活したので、二番底はないと思います。
 メーカーは、昨年で在庫調整も生産調整もほぼ終わっていますから、元には戻りませんが、徐々に回復基調にあることは確かです。回復のスピードは、民主党政権の政策にもよるでしょうが、経済は必ず回復していきます。


受注は3月が最低


私どもの会社の事業展開を例にとってお話ししますと、この金融危機、リーマンショック以降、受注は2009年3月が最低で、60%ぐらいダウンしました。当社は製品の性格上、計画生産ではなく受注生産です。ですから、取引先の生産調整、在庫調整がストレートに受注に影響したのです。これはこたえました。

月毎に回復している

幸いなことに、それ以降は、受注は月を追うごとに回復してきています。2009年11月で、最悪の時点からは70%強回復することができました。それでも前年比では20%弱ダウンです。
 国は内需拡大などの政策を展開していますが、しかし、以前の水準には戻っていません。それは、外需つまり輸出の伸びが期待できないからです。各国とも内需拡大政策を強力に進めております。内需拡大ということは、実質的には外国から輸入せずに自分の国で全てを賄おうということですから。日本の輸出拡大はしばらく厳しい環境に置かれるものと思います。

 

政権には継続的な景気対策を強く期待

−−民主党政権には何を望みますか。  それは、景気が継続的に上昇気流に乗るような、政策を講じて欲しいということです。

厳しい状況下でも開催することが大事

−−計工連主催の計量計測機器展「インターメジャー」が今年は11月に開催されますね。  今年の経済状況をみますと、そのなかで大きな展示会を開催するということはなかなか大変です。いったんやめてしまうと、再開させることは大変難しくなる。苦しくても続けなければならないと考えます。  計工連の展示会も同じです。厳しい状況の中でも頑張って、続けて開催することが大事です。やめてしまうと、努力がそこで途切れてしまいます。  昨年開催の東京モーターショーも、海外メーカーの多くが出品を取りやめ、入場者が半減するなど、大変でした。しかし、そういう状況でも開催したことが重要なのであり、開催することに意義があります。


経営資源の集中

−−計工連会長として、改めてメッセージをお願いします。  今後、1年半ぐらいは厳しい状況が続くでしょう。今、経済状況が好転する兆候があれば、その動きがしてきます。しかし、まだ動きが見えません。当社の事業の主力製品の圧力計、圧力センサは、性格上極めて短納期の製品で、大半が受注生産なので、そのあたりの兆候には敏感です。  今まで述べてきたことに尽きるのですが、更なる経営資源の集中です。今までの事業を見直し、経営資源を集中し、事業を進めていくということが肝要だと考えます。  悲観的、否定的に考えていても物事は好転しません。努力と知恵、そして元気を出して前進しましょう。 −−ありがとうございました。


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