計量新報記事計量計測データバンク今日の計量計測情報ニュース会社概要出版図書案内リンク

CHANGE & CHALLENGEで飛躍はかる

(株)チノー 苅谷嵩夫社長に聞く

聞き手は高松宏之編集部長

vol.2

日本計量新報 2013年2月10日 (2952号)2面掲載

基本に戻り、現場を重視する(2)

現場に入る

我々のセンサは現場で使うものですから現場のことを知らなくては、付加価値もつけられません。今はなかなか顧客現場に入るのは難しいのですが、私は営業の人たちには、技術者やメンテナンスやサービスの人たちと一緒になって「現場に入る努力をしろ」と言っています。そうでなければ潜在需要を掘り起こすことができません。そこから得たもので、我々のテクノロジーを使って提案をしていく必要があります。
 基本に戻る、顧客の足下を徹底的に深掘りする、現場に入る、ということは、目新しいことではありませんが、原則に戻って、これをもう一度徹底してやっていくということです。
 私も含めて、各段階、各部門でお客さまと接することで、お客さまが本当に望んでいることが形として見えてきます。
 我々の事業はセンシングがベースです。そしてそれは現場にあるわけですから、この現場を知らなければ、目的に応じた的確な提案はできません。これを習慣にして基本動作にしていく必要があります。

代理店ともしっかり連携

代理店ともしっかり連携してやっていきます。当社は売上の50%は代理店によるものですから。スクラムを組んでお客さまを徹底的に訪問していきます。

基盤整備を実施

ーー事業所の再編など、基盤整備を進められてきましたね。

システムとして提案する

計測には必ず目的があるわけですから、その目的にあわせて、的確なループシステムをつくって提案をする必要があります。
 ですから、個々に便利なツールを提供するだけでは不十分です。お客さまが本当にやりたいことをよく理解して、個別のツールではなく、ソリューションを実現できるシステムとして提案していかなくてはなりません。

藤岡事業所を一貫工場に

現在、当社の計装エンジニアは藤岡事業所に集結しており、ここで他の事業所で製作した機器を計装システムとしてまとめていくという仕事をしています。
 従来は、組合せ活用して設計のみをして製作は外注するということが多かったのですが、もっときめ細かく、トータルにまとめてつくることが必要になってきています。そこで、藤岡事業所を、板金、溶接、塗装、配電、組みつけまで1カ所でやる一貫工場にしました。外注する場合も構内外注にしています。そういうふうに変えてきました。
 効率だけからいえば外注の方がよい場合もありますが、外注ばかりしていると社内にノウハウが蓄積しません。一番大切な、何でこうなるのか、という部分がわからないということが起きてきます。ブラックボックスになってしまいます。このため徹底した内作にこだわりました。
 この再編がようやく効果を発揮するようになってきました。

グループの大再編を実施

当社は、この5年くらいで大きく改変をしました。グループ会社や当社の生産拠点をチノーグループとして全体最適の効率のよい体制とするための再編です。
 一つは久喜事業所を大改造して、70名程の計装技術者は藤岡事業所へ移し、放射温度計と温度センサの専門工場にして、温度センサは一貫製造ラインを構築して効率化と生産能力の増強を図りました。
 また、久喜サイトにサービス会社や赤外線光学レンズを製造する子会社を集結して一貫生産ができるようにしました。
 シナジー効果を高めるために、放射温度計、黒体炉や計測制御機器システムの東京精工(株)を2011(平成23)年10月1日付で合併しました。
 さらに、民生機器関連の生産拠点である(株)山形チノーを2012(平成24)年4月1日付で合併し、新事業投資や環境、安全・安心といった分野の市場開拓の中核的事業所に位置づけました。これはタイミングがよくて、集約したら増産に次ぐ増産で収益が大きく伸びました。既存の事業所に対しても大きな刺激になっています。

今年は創業から100周年の年

2013年は当社のルーツである企業の創業から100周年の年です。当社も初めから整然とした体制ができていたわけではありません。関東大震災で大きな被害を受けて、現在本社のあるこの地でまたゼロからスタートし、76年前に株式会社となりました。その後も戦争で再びゼロになり再出発しました。それを考えると、現在の不況を乗り切っていくこと等は苦労とはいえないですね。

会社発展の原動力は人

会社発展の原動力はなんといっても人です。何にもなくなっても、人がいて、気概と情熱があれば、またスタートを切れるということを我々の先人が体現してくれています。
 もちろん限度はありますが、社員のリストラをしてしまったら、企業の種籾がなくなってしまいます。苦労はかけ、我慢もしてもらいますが、先を見据えて歯を喰いしばって、可能な限り人は確保してやっています。

海外展開に力入れる(1)

ーー海外展開の展望をお話しください。

海外比率を30%にすることを目標に

これまで体制を整えてきましたので、今年は大きな動きが出てきます。当社グループの売上比率で海外は20%ほどです。これを2013年には25%に、その先は30%くらいに引き上げたいと思っています。

中国はさらに発展させる

中国関連では、尖閣諸島問題などで水をかけられましたが、当社は既に20年、中国企業と上海で合弁事業をやってきています(上海大華・千野儀表有限公司)。ここでは、中国における記録計、調節計、放射温度計および計装システムの生産・販売をしています。これはうまくいっています。
 そして、ものづくりでは10年ほど江蘇省昆山で「千野測控設備(昆山)有限公司」としてやっており、この会社は中国における計測制御機器・システムの製造販売をしています。これも軌道に乗っています。
 懸念もありますから慎重に取り組みますが、中国という巨大市場を放棄する訳にはいきませんから、さらに10年、合弁でやっていくことで双方が合意して、2012年11月に契約更改に調印しました。
 上海の合弁会社は今後、販売に力を入れていきます。昆山の方は計装システムの生産拠点として拡大していきます。

インドでの展開

ただ、企業としてリスク分散はやはり考慮しなくてはなりませんから、インドでの展開を進めています。CHINO Corporation India Pvt. Ltd.は3年前に独資にしてやっています。やっと軌道に乗ったところです。インド全戸で10カ所の営業拠点があります。
 独資にすると、国土企業から外国企業に変わるわけですから、法制上の優遇措置がなくなるなどの大変な面はあります。その代わり、自己責任で思い切ったこともできます。

<<前へ[1 2 3]次へ>>


記事目次/インタビューTOP
HOME
Copyright (C)2006 株式会社日本計量新報社. All rights reserved.