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日本計量新報 2011年4月17日 (2866号)1面掲載

震災一カ月 岩手県宮古市の魚市場再開

漁業が動くことが被災地復活の灯火に

(写真1)宮古港と漁船
魚市場に隣接した加工場付近で4月12日に震災後最初の競りが行われた(4月9日、本紙記者撮影)

漁協や水産加工業の仕事にハカリが要る
漁業復興事業と連動してハカリ需要発生

東日本大震災から1カ月経過した4月11日、岩手県宮古市の魚市場が再開した。初競りが行われたのは11日の午後。宮古湾周辺での漁獲量は少なかったが、タラなど季節の魚が水揚げされた。漁業の復興と連動して、漁港などで使用するハカリの需要も高まっている。震災によってハカリも大きな被害を受けた中、各地のハカリメーカーは増産体制を整えている。

宮古漁協、意地の初競り

宮古漁協が4月11日に決行した震災後最初の競りは、ほとんど「意地」だった。三陸沿岸の経済は漁業が基礎になって回っている。「魚市場再開が宮古市復興の<RUBY CHAR="灯火","ともしび">になる」という思いから、少ない水揚げであっても競りをあえて実施したのである(写真1)。宮古湾の魚市場関連の貯蔵施設、製氷施設、加工施設などは津波の被害を受けて機能を失ってはいるものの、形の残った鉄骨構造の建物で競りを行い、魚市場運営に必要な氷は、被害のなかった宮古市田老地区の貯蔵施設に残っていた氷を用いた。仲買人によって競り落とされた新鮮な魚は消費者向けに地元スーパーなどに配送された。

宮古市は海岸沿いの住居、漁業施設に大きな被害を受けたものの、JR宮古駅を境とする内陸側は津波による被害が少なかった。駅前や高台にあるスーパーマーケットは、震災後3週間目には営業を再開し、隣の山田町の住民を含めた買い物客が車で行列をつくっていた。

岩手県内の111漁港のうち105漁港が壊滅的な被害を受けた。その復旧には未だほとんど手が着いていない。隣の山田漁港の堤防の内側には津波で流された家の屋根がみえており、その横には転覆した漁船が赤い腹をみせ、堤防の上には漁船が乗り上げている。

魚市場前の船着き場や山田湾内に残る津波による漂流物の除去を急がなくてはならないが、これに関する政府からの指令は出ていない。地元漁協、地元公共団体は地震と津波によって大打撃を受けていて、こうした作業をするための資金も設備も確保できない。

漁港の復旧は最優先事項であるにもかかわらず、政府関係者からは真摯な言葉がない。

復興と需要は連動する

魚市場の業務についてまわるのがハカリである。宮古漁港にある施設は津波の被害によりハカリも使い物にならなくなってしまった。宮城県の女川港には機械式台ハカリの底部の竿の部分が転がっていた(写真2)。どの漁協のハカリも同様の被害を受けたであろうことは想像に難くない。

ただし、三陸沿岸部が津波被害を受けていても、内陸部の経済機能は震災以前のままであり、内陸部や東京、近畿地方のメーカーからハカリを調達できる。そのようにしてハカリが用意され、魚市場に競りの元気な声が響いた。魚市場は休んではいられない。宮古漁港に水揚げした漁船の乗組員は、「震災から1カ月も漁がなかったので海にはたくさん魚がいる」と話していた。

漁協や水産加工業は、仕事をするためにハカリが要る。漁業復興事業と連動して大きなハカリ需要が発生する。ハカリメーカーは、増産体制を組んで対応している。しかし、ハカリの電子部品の一部は東北地方でつくられている。部品の調達先の企業が震災被害を受けたために、自動車や電機産業同様、部品が調達できず、もどかしい思いをしているハカリ企業もある。

計量計測機器の需要は漁業関係に限ったことではない。例えば、住宅の建設には、電力量計、ガスメーター、水道メーターが今後必要になってくるだろう。

YouTubeで関連動画公開中!http://youtu.be/hicA-56hCy0 (「東日本大震災」)


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