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計量新報 2006年 3月19日発行 /2623号 5面


第1WG第5回会合開催
基準器検査とJCSSの整合が焦点
報告書案作成へ向け、深まる議論

 計量制度検討小委員会第1ワーキンググループ(WG)第5回会合が3月8日午前、経済産業省別館9階第944会議室で開かれた。

 前回会合の議事録を確認した。表記の正確を期すため、発言の数カ所を訂正した上で公表する。つづいて、2月21日開催の第3回計量制度検討小委員会で出た第1WGに関係する意見が紹介された(別項に資料を掲載)。取りまとめを行う際に、この意見を含めて計量行政審議会に報告する。

 関係者2者からヒアリングを行った。

 (社)日本ガス協会の岩田隆技術部長が意見・要望を述べた。同協会は都市ガス事業者212社で構成する団体で、大都市以外は小規模な事業者が多い。都市ガスは全国で2700万戸に供給されており、プロパンガスを使用する戸数とほぼ同数である。

安さだけがメリットか

 同協会が提示した意見・要望は次の通り。

 新たな規制対象として挙がっているCNGメーターについては、スタンド運営者には、都市ガス事業者のほかにもLPガスやガソリンスタンド事業者が係わることから、これら事業者と電気自動車ユーザー、関連団体なども含めた検討の場を設定してほしい。

 規制方法の具体的方針として打ち出した、検査等による事後規制の充実に対しては、現実的対応での運用を求め、行政による消費者への啓蒙を要請する。

 技術的基準に関しては、過去にOIMLへの整合に伴うガスメーターの号数変更で、多大の費用がかかったことから、整合自体が目的化することは、客先メリットを及ぼさないと考える。日本のガスメーターにおいて、異常の際に警報・遮断機能を持つマイコンメーターの普及率は2004年で99.2%にのぼる。ガスメーターが地震対策に特化した独自の機能を持っていることを踏まえ、国際整合の必要性は理解するものの、慎重に行うべきだ。

 検定有効期間の延長、廃止については、検定にかかるコストが安くなり、ユーザーメリットにつながるとして賛成する。ただ手放しで歓迎ではなく、その際は厳密に検討が必要である。再検定品・修理品にまで指定製造事業者制度を拡大することも賛成であり、型式号数の制限を撤廃するよう要望する。

 これに対し委員が意見を述べた。検定有効期間の検討は延長、廃止だけでなく、短縮もあり得る。ただコストが安ければいいのか、安心・安全のほうが消費者にとってはメリットなのではないか、という厳しい意見も出た。

基準器検査制度のゆくえ

 都道府県計量行政協議会が実施したアンケート結果を、東京都計量検定所村松徳治指導課長が紹介した。47都道府県の計量行政担当部署に対し、見直し作業の中で地方公共団体が係わる事柄について質問した。今回は第1WGに関連する項目を中心に紹介した。

 計量行政を自治事務化したことで、地域間格差が懸念されているが、計量行政の求められる方向性について、計量事務は法定受託事務にすべきだとする回答は21件を数え、いっそう自治事務化すべきと回答した9件を大きく上回った。

 計量標準供給方法についての設問では、JCSSに一本化すべきという意見が17%であるのに対し、JCSSと基準器検査を包含してランク付けたダブル・スタンダードを望む意見が77%を占めた。この設問では、基準器検査には不確かさがないため、JCSSを仮に1級として、その下部の2級、3級というように位置づけるというランクづけを提案している。

 委員の質問は、基準器検査とJCSSの位置づけに集中した。

 基準器検査はわかりやすく、一定の役割を負っている。跛行性を懸念されている自治事務だが、この点はきちんとやっている。不確かさがない基準器検査は、検定の民間開放や国際標準を見据えた計量行政を行う上で強く推せない点もあるが、検定公差に不確かさを含めることで、基準器検査でも評価が可能ではないか。反面、基準器制度をトレーサビリティにつなげるには慎重にするべきという意見もあった。

 JCSSの普及の度合い、コストの高さに疑念を抱く発言も出た。制度の一本化となれば、そのコストを誰が負担するのか。税金であれば国か地方税かという問題もある。条件整備が課題であると意見をまとめた。

 次回は4月上旬に開催予定で、報告書案を審議する。


資料

第1WGに関する第3回計量制度検討小委員会での主な発言(1)

◇指定製造事業者制度を再検定品・修理品まで適用できるようにすることについて、資料中括弧内に特記されている電気計器は例示にすぎず、各種計量器に共通することである。規制緩和を進めていくことに異論はないが、この点については、慎重な議論が必要。計量法の根本的な精神が空洞化してはいけない。修理品の方が新品に比べて不合格率が大きく、対象となる事業者や各種の定義、修理・検査の方法等、慎重に議論していただきたい。

◇計量法の見直しに当たっては、民間負担の軽減や経済の活性化のために、規制の対象は最小限にすべき。規制する場合にあっても民間負担の軽減を常に念頭においた、合理的かつ効率的なものとすべき。安全・安心ということに対しては、当然、最大の配慮が払われるべきであるが、被害の発生の可能性が小さいものについては、検査・検定業務を事業者自身に委ねると政府の方針が出されている。また、現在、国や独立行政法人が独占的に行っている検査・検定業務があるが、これらは、ともすれば非効率となりがちであるため、民間に開放すべき。安全・安心と規制改革がうまく両立するような見直しにしていただきたい。

◇今までコストをかけて行政が行ってきたことについて、そのコストを削減するから、当該事項の監視役は消費者が担うという前提は疑問。適正計量がなされていないものについて、そのチェックを消費者全てができる訳ではないのに、それをチェックしなかった方が悪いというのはおかしい。体温計を例にとると、現状が正しい姿とは決して思わないが、検定所が実施している検定の段階で、製造業者が品質管理を適切に行っていないことが原因の粗悪品を、市場に出回る前に止めていることは事実。民にできることは民にという美しい理念に沿ってさえいれば全て正しいということではなく、その結果により安全・安心が損なわれるのであれば、その理念と少し違っていても安全・安心が確保されるまで行政が実施していくといった、柔軟な考え方をとるべき。体温計について、JISマークの活用という手段もあり得ると聞いているが、今まで何十年とJISマークの対象となっていなかった製品について、ある時からその対象になったとしても、マークが付いていないことをもって品質が劣っているかもしれないと判断することは難しい。指定製造事業者制度を再検定品・修理品まで適用できるようにすることに関して、電気計器について、その修理事業者は、ほぼ100%電力会社の子会社と聞いている。公平性の観点から問題があると考える。

◇プロ同士の取引・証明に関しては規制緩和してもよいが、一般消費者の日常生活に関与する部分については従来どおり、きちんと行政が実施していくべき。「姉歯」の事例では、競争の原理が働かないにも関わらず、検査・検定が民に移管されている。
◇指定製造事業者制度を再検定品・修理品まで適用できるようにすることに関して大いに賛成。平成5年に導入された指定製造事業者制度は、一定の品質管理能力を有する事業所に自主検定を認める制度であって、現在120を超える事業者が指定を受けている。それまで検定所が行っていた業務を代替しており、まさしく民間活力の活用の成功例といえる。本制度を更に維持・発展させることが計量行政に関わる規制改革・行政改革にとって重要と考える。

(次号以下へつづく)


(1面のつづき)

第3WG大詰め、報告書案を審議

不正防止に向け制度の整備を

 事業者のデータ改ざんが発生したMLAPについては、更新制導入の論議が浮上したが、1992(平成4)年の計量法改正で廃止した経緯がある。

 経済産業大臣による適合命令、取り消しという措置ができるようになったため、それまでの更新制は廃止された。以降も問題はなかったが、データ改ざんというあってはならないことが起きた以上、行政の徹底や罰則の強化を制度に加える。また、自治体からも適合命令を出せるよう、ガイドラインを整備したいという方針が事務局から示された。

 会合での意見に加え、今月20日まで委員から意見を募り、修正を加えた上で、報告書案をまとめる。次回WGは全体答申案の中での第3WGの内容について、他のWGの報告書案も概観した上で検討する。

(以上)

 
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