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2021新春トップインタビュー

長野計器株式会社 佐藤正継社長に聞く

「中期経営計画で飛躍を」

聞き手は高松宏之編集部長

日本計量新報 2021年1月1日 (3317・18号)16〜17面掲載

中期経営計画で飛躍を

◎中期経営計画(中期3カ年計画)を作成

――長野計器は20205月に中期経営計画を策定されましたね。

20213月期〜20233月期までの計画

 2020年度の第99期をスタートさせるにあたり、長野計器はこの第99期を初年度とする中期経営計画(中期3カ年計画)を策定しました。

 これまでは新たな3年間の計数計画を1年毎に見直すローリング方式で行ってきましたが、今回は3年間の計数計画を固定し、経営ビジョンを掲げ、それに伴う成長戦略も中期を見据えた形で立案しました。

2025年には連結売上650億円目指す

 これまでの業績を振り返りながら、3年後の当社のあるべき姿として、20233月期には連結売上で560億円を目指しています。併せて営業利益率は7%以上、ROE10%確保を目標としています。

 長野計器単体で50億円、国内子会社で50億円、海外子会社で50億円、それぞれ売上増加を見込み、前期実績の約490億円余にこれらを加えて、2025年には連結売上で650億円を目指すこととしています。

4つの成長戦略で

 それを達成するための基本方針として、4つの成長戦略を掲げました。

 それは、@既存事業の競争力強化、Aグローバル戦略の強化、B新たな事業領域の拡大、C経営基盤の強化です。

@既存事業の競争力強化は、環境変化を見据え、核となる既存事業のバリューアップを図っていくということです。具体的には、(1)製品の事業採算性向上、(2)顧客視点の高付加価値サービスの提供、(3)市場ニーズを踏まえた成長分野への積極参入をしていきます。

Aグローバル戦略の強化では、海外拠点を活用し、ワールドワイドな地産地消の体制を確立します。具体的には、(1)ワールドワイドな地産地消の体制整備、(2)海外子会社によるグローバル展開を加速します。

B新たな事業領域の拡大では、圧力計・圧カセンサに続く第3の柱を築いていきます。具体的には、(1)高付加価値サービスの提供〜サービスプラットフォームの構築〜、(2)代替困難な計測システムの開発と提供〜極限環境計測センサ事業の創出〜などです。

C経営基盤の強化とは、経営の根幹を支える経営基盤を強固にすることです。(1ESG経営の取り組み推進、(2IT化による業務改善、(3)グループ組織運営の強化、(4)人事制度の刷新などに取り組んでいきます。

■すべてを変える

 すなわち、長野計器のすべてを変えていかなくてはならないということです。

 既存の事業はそれなりのベースとして安定していますが、これから、先ほど申し上げた売上や利益の目標を達成していくためには、もう一段階階段を上がらなければなりません。それには、長野計器自身が変わらなくてはいけないということです。

■徐々にコロナ渦の影響が

 今期の第99期は、前期の決算時に、増収・増益を見込むと発表しました。

 コロナ禍が影響を及ぼし始めてはいましたが、第1四半期は、受注残等もありましたし、半導体関連の状況も好調で、長野計器単体では、減収、増益でした。ただ、連結で見たときには、徐々にコロナ影響が出始め、設備投資抑制等により、売上減少が顕在化してきました。

■コロナ対策の取り組み

 そのような状況の中、長野計器はコロナ対策に取り組みました。

 本社においては、営業ビルと本社ビルの間を遮断し、相互の往来をなくしました。

 営業関係は、自宅での業務を積極的に取り入れたり、時差出勤を実施しました。

 社員は、毎日体温を測ることだとか、マスク・手洗いをするなどの対策を徹底しました。

 マスクが一時品不足の時には、会社からマスクを社員に配布しました。

 対策を施した結果、本社や営業所においては、現時点で、感染者は出ていません。ゼロです。

 ただ、工場におきましては、感染者が1名出ましたので、速やかに発表致しました。

 ただちに工場内の消毒や、濃厚接触者の検査などを実施し、感染の拡大を防ぐことができました。感染者も症状はほとんどなく回復致しました。感染者や周囲へのケアにも気を配りました。

 海外のグループ会社でも感染者が出ました。アメリカで45人、ブラジルで数人、ドイツで1人感染しましたが、いずれも症状は軽く、事業活動に影響はありませんでした。

■業績予想を下方修正

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大による当社グループの業績におよぼす影響を考慮して、202010月に第2四半期業績予想と通期業績予想の下方修正をしました。

 設備投資需要の景況悪化、第1四半期までは比較的堅調に推移した半導体業界向けの案件延期や凍結、更には米国における原油安による設備投資抑制の影響などにより、当初計画を下回ることとなりました。

 このコロナ禍において、訪問による営業活動に制約が出たことも、業績悪化の要因の一つとしてあります。

■下期は上向き傾向に

 下期に関しては、少しづつ業績が上向きになってきました。

 1022日公表の業績予想値では、新型コロナウイルス感染症による影響が一定期間継続すると見込み、保守的な予想値としましたが、直近での受注状況を見る限り、底を脱した感があり、半導体関連設備向け案件も相応に見えてきておりますので、更なる新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済停滞の影響がない限り、業績の回復は期待できるものと考えています。

◎医療関連製品が伸びている

■微圧センサなどに需要

 先ほど、当社でのコロナ対策の話をさせていただきましたが、その新型コロナウイルス感染防止の関連で、微圧計測の医療分野向けの売り上げが、第2四半期には伸びています。

 新型コロナウイルスの流行が始まって以降、当社の微圧センサなど医療分野向け製品のニーズが高まりました。

■人工呼吸器の圧力計測

 人工呼吸器の圧力計測(微圧、差圧)に用いられる圧力計・圧カセンサとして「KL17」、「GL17」があります。

 「KL17」は、高感度・耐圧性能に優れたセンサ素子を用い、微小な差圧計測が可能です。小型・軽量であり、機器組込み用途に最適です。

 「GL17」は、小型(直径64mm)・軽量であり15kPa以下の低い圧力を測定するように設計された圧力計です。

■陰圧ルーム・隔離室などに

 当社には、病院などの陰圧ルーム、隔離室などに設置して用いられる微差圧計・微差圧センサがあります。ウイルスを拡散させないために重要です。

 「GC63」は電池式デジタル微差圧計で、陰圧ルーム、隔離室などの陰圧監視に使います。電池で駆動します。

 「DG85」は高耐圧微差圧計です。電源が不要で、シンプルで視認性に優れています。

 「ER63」はワイヤレス微差圧監視システムです。微差圧計測用として一括監視・管理が可能です。デジタル微差圧計に無線モジュールを搭載しており、電池駆動により配線が不要です。

■遠隔で一括監視・集中管理

 遠隔で一括監視・集中管理できるのが、ワイヤレス微差圧監視システムです。使用用途をいくつか紹介します。

 クリーンルームの内圧監視に使用できます。室内圧を一定に保持するため、室内外の差圧を検出し、給気量の制御がおこなえます。

 各種フィルターの目詰まり監視・管理に使用できます。換気口の流れを保持するため、フィルターの目詰まりを検出し、適切なフィルター交換に役立ちます。

 簡易テント・室内の陰圧監視に使用できます。室内外の差圧を測定することで、室内の負圧・陰圧状態であることが確認できます。

■感染対策に貢献

 長野計器は、このような感染対策ということでの「安全・安心」に貢献しております。

 従来の空調関連のお客様に加えて、医療関連でプレハブ病棟などの需要が見込め、新しいお客様が増えています。

 先ほど紹介した「ER63」ワイヤレス微差圧監視システムのように、ワイヤレスの計測器への需要も高まっています。

◎新製品・新技術の開発を進める

――貴社の新製品や技術開発についてご紹介ください。

 これまで取り上げた製品以外の新製品や新技術を紹介させていただきます。

 長野計器が事業のなかで重視している柱の一つが半導体関連です。

■製造ラインを増強

 半導体関連はまだまだ伸びていく分野ですので、新製品を発表していくと同時に、製造ラインも大幅に増強して、製品供給体制の強化が、今期の大きな動きです。

■水素関連製品に注力

 水素関連製品に注力していきます。

 長野計器は圧力計測がメインですから、水素市場は当然ターゲットです。菅首相が国際会議で、「2050年までに温暖化ガス排出をゼロにする」表明をされました。あらたなキーワードとして「カーボンニュートラル」脱炭素社会の実現に向け、各国が様々な取り組みを開始しております。

 自動車関連では、トヨタの量産燃料電池車「ミライ」が202012月にフルモデルチェンジされました。今後、トラックやバスなどの商用車、鉄道、船舶、など、需要の拡大が見込まれます。

 やはり、化石燃料からの転換は、全世界的な課題であり、当社も水素ビジネスを主体に脱炭素社会に貢献して参りたいと思います。

100EVにはならない

 自動車に関しては、EVのウエイトが高くなっていくでしょう。しかし、100EVにはならないでしょう。EVだけですべてまかなうのには無理があります。たとえば、トラックや特殊車両などはEVではなかなか難しいですね。

 社会インフラ全体のバランスを考えたとき、たとえば数%は水素インフラが必要になってきます。そうなれば、水素にかかわる製品は、日本国内のみならず全世界で必要とされることになります。長野計器も水素に対してきちんと対応していきます。

■安全確保にも圧力計測が重要

 水素は高圧で運用されますから、安全をきちんと確保するという面でも、圧力計測が重要になってきます。

 水素に関しては、水素脆性という、水素によって材質が脆くなってしまうという問題もあります。安全性の課題に対しては、国際標準化が大事ですので、国に積極的な役割を期待しています。

■地産地消を進める

 地産地消を推進しています。これは長野計器が従来から進めてきた重要課題ですが、ようやく世界各地で進展してきました。

 子会社であるAshcroftが北米ローコスト拠点で地産地消を進めていきます。650億円/年の売上を達成するためにも、米国での売上増加が不可欠です。その土台作りが進展しています。

 また、Ashcroftではこれまで、米国市場に対して半導体製品を積極的に販売していませんでした。今後、グローバル市場に適合した規格の製品を準備して販売を加速していきます。

■工場のIoT

 今後の事業展開においては生産現場のIoT化を進め、全社をあげて更なる生産効率を高めていきます。

■事業の「第3の柱」

 中期経営計画の基本方針でも述べましたが、計測制御は、世の中にとって絶対必要な分野であるので、これまで培ってきた基礎技術や研究を活かして、長野計器にとって、圧力計、圧力センサに続く、「第3の柱」を築きあげたいと考えています。

 直近、発売した新製品をいくつか紹介させていただきます。これらの新製品を広く国内外でアプローチしていきます。

■半導体産業用ZT11圧力センサ

 従来製品に比べ、性能を向上し温度特性や長期安定性に優れた圧力センサです。

 ゼロ点調整機構をケース側面に配置することで、作業の効率化に貢献します。

【特長】

▽温度特性が向上(±002F.S./℃)

▽ゼロ点調整機構をケース側面に設けて作業性向上

▽ゲージ圧(正圧・連成)レンジに加え、絶対圧レンジをラインアップ

▽安全増防爆構造“ec”を順次認証取得予定(IECExATEXTSNEPSIKCs

■半導体産業用ZT17高温用圧力センサ

 半導体製造装置において、センサ部と専用アンプを組合わせて使用することで、120℃の高温流体を直接計測可能な圧力センサです。

 封入液を使用しない構造のため、液漏れの心配が無く安全にご使用いただけます。

【特長】

120℃の測定体の圧力測定が可能

▽封入液を使用しない安心・安全構造

▽専用アンプとの組合せ使用

◎昨年減収分も取り返して前進する

――今年の抱負をお願いします。

 昨年は新型コロナウイルス感染の影響などで、減収減益を余儀なくされましたが、2021年は、昨年減収分も取り返して前進していきます。

■注力分野は半導体関連産業

 当社の注力する圧力計測事業として半導体関連産業が挙げられます。引き続き海外市場を含め、取り組みを強化していきます。

■車両関連でも売上拡大目指す

 車両関連は、物量的にも世界経済を引っ張っていますので、この関連でも売上を拡大していきたいと考えています。

■新しい事業の柱を確立

 継続した事業発展のために、新しい事業の柱もぜひ確立していきたいと考えています。

■水素関連事業は伸びる

 水素関連でも、トヨタがミライをモデルチェンジしたように進展への動きが出てきています。トラックやバスなどの大型の燃料電池自動車の開発促進なども視野に入れています。当然、当社の圧力センサも水素関連産業に使われていますので、今後も迅速に対応していきます。

 工場などでの活用も今後の課題です。高圧の水素の活用には長野計器の圧力計・圧力センサは欠かせません。

■お客様とのコミニュケーション

 現在は新型コロナウィルス感染防止でなかなか大変ですが、お客様とface to faceでコミニュケーションをとることは、重要です。

 つまり、お客様が要求することにいかに的確且つ迅速に対応できるのかという鍵を握っているとも言えるからです。

 たとえば、コールセンターへのお客さまからの問い合わせというのは長野計器にとってとても大事です。そこにはお客様の当社製品の使用状況や製品に対する改善要望などが含まれていますから、これらを対応していくことで、一層の信頼を得るチャンスとなります。

 今後は様々な方法を工夫して、お客様とのコミニュケーション作りにも力を入れていきます。

――ありがとうございました。

◎長野計器会社概要

【代表者】代表取締役社長 佐藤正継

【資本金】438000万円

【商号】長野計器株式会社(NAGANO KEIKI CO.,LTD.

【創業】1896年(明治29年)51

【設立】1948年(昭和23年)1221

【本社】〒1438544、東京都大田区東馬込一丁目304号、電話0337765311FAX0337765320

【年商】連結4906700万円(20203月期)

【従業員数】2342名(2020930日現在連結ベース)

【事業内容】圧力計事業、圧力センサ事業、計測制御機器事業、ダイカスト事業

【長野計器ホームページ】https://www.naganokeiki.co.jp

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